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夢と現の臨界点

ジュンは不法侵入しているブバルディアに問いかける


「なぜ、あんたがここにいる?ここは、俺の家なのだが?

いや、それよりもあんたは夢の中だけの存在だと思っていたのだが」


「私、ジュンがYESっていうまで付き纏うから」


「話が通じないな?悪戯なら普通に通報するぞ?」


ジュンはブバルディアを睨む。


「待って、私にも事情があるのよ。さっき見た夢は信じてないの?」


「所詮夢だろ?」


ジュンが起き上がるとブバルディアから夢の中で渡されたデバイスが落ちる。


「む、これは・・・」


「ほら、私が夢の中で渡したデバイスでしょ?」


「いいや、俺が寝てるうちにあんたが直接置いたんだろ?」


「そのあんたっていうのやめてくれない?私にはブバルディアって名前があるのだから」


「ブバルディア・・・少し長いな」


「ブバリアでもいいわ、お父さんにもそう呼ばれているし」


「じゃあ、ブバリア、俺には俺の仕事がある。世界を救うのは別のやつに頼んでくれ」


ジュンはそこまで言ってようやくハッと気づく

ブバルディアはニヤリと笑う


「まさか、あんた!俺の夢の内容を!?」


「ブバリア!」


「すまん、ブバリアは夢を操って夢の中に介入できるのか?」


「ええ、私は人に予知夢を見せて覗き見ることができるわ、

そしてこの世界で唯一意思のあるロボットよ!」


ジュンの表情が一瞬強ばる


「・・・ロボット?何を馬鹿な、嘘を付くならもう少しマシな嘘をつけ」


「本当よ」


ブバルディアは腕をめくりジュンに差し出す


「触ってみて」


ジュンはブバルディアの腕を無遠慮に掴む


「きゃ、ちょっと優しく持ちなさいよ!痛覚はあるのよ!?」


「確かに機械の腕だが、ただの義手の可能性も・・・」


「もう疑り深いわね、スキャナーがあるでしょ!

それで私を見ればいいじゃない!」


ジュンはスキャナーでブバルディアを解析する。

そこに映し出されたのは全身機械の素体だった。


「う・・・なんか裸見られてるみたいで恥ずかしい・・・」


「驚いたな・・・本当にロボットだとは」


「どう?私の言うこと信じる気になった?」


「いや、全身サイボーグという線も・・・」


ブバルディアがジュンをポカポカ殴る


「からかってすまない・・・

脳も機械だったからブバリアはたしかにロボットだ。

しかし、夢の件はにわかには信じがたい・・・

確証が得るまで保留にさせてくれないか?」


「そんな流暢な時間あればいいけど」


「それよりもブバリアはどうやって俺の部屋に入ってきたんだ?

この部屋は厳重なセキュリティに守られているはずなんだが、

それこそオペレーターでも入れないほどのな」


「ブーってやってバババーってやったら入れたわよ」


「おい、理解できるように喋れ」


「私ロボットだから?デジタルデータで守られたセキュリティなんていくらでも偽造、改ざんできるし」


「なんだそのトンでも技術は?」


ジュンはスキャナーで改めてブバルディアの脳を見ようとするとエラーで測定不能と出た。

ジュンはため息をつく、考えるのをやめたくなった。


「いや、いい。ブバリアがこの際何者でも良い、

俺はこれから仕事に出なきゃならん。

仕事の邪魔になるので着いてくるな」


「あ、ひどい、仕事と私どっちが大事なの?」


ブバルディアは若妻が仕事熱心で家庭をおろそかにする夫を愚痴るような言い方をする。


「仕事だ」


ジュンはそうピシャリというと寝間着を脱ぎ、着替え始める。


「きゃああああ!女の子の真ん前でいきなり着替え始めるなんてあなたどうゆう神経してるの!」


そう言いながらもブバルディアは指の隙間からジュンの裸体をチラ見する。


「お前、ロボットだろ」


ジュンはあっという間に着替え終わると呆れ顔でいう。


「ロボットでも女の子なんですぅー!バーカバーカ!」


コイツといると何だか調子狂うな・・・


「それにしても、この部屋、随分アナログなのね。

というよりも博物館に置いてあるレベル?

この家電とか動くの?」


ブバルディアは周囲を見渡すと現代ではお目にかかれない、

アンティークや実物の絵画や2000年代の液晶テレビ、炊飯器などが置かれているのを見る。


「ただの俺の趣味だ。

今でもメンテナンスし続ければ使えるものばかりだ。

技術進歩は素晴らしいが昔から変わらず良いものだってある」


「ふーん、私にはさっぱり良さがわからないけど」


ジュンはその部屋に似つかわしくない、スマートプロジェクションブレスレットを起動させる。

そしてマザーコンピュータにアクセスすると

そこには正体不明のロボットMkJ01が表示されているのを確認する。

位置情報もシブヤ区と表示されていて、他の暴走ロボットのリストも予知夢のものと一緒だった。


「まさか、今日・・・なのか?」


「ほら、いわんこっちゃない」


「こうしてる場合じゃない!止めにいかなくては」


いつもは冷静なはずのジュンが動揺する。


「待って待って、私もいくわ」


「ブバリアは・・・」


「大丈夫よ、私ロボットだし、それに未来を変えたかったら

イレギュラーな行動を取らなきゃ?でしょ?

それにジュンに渡したデバイスの使い方教えたいし」


ジュンはブバリアの言うことも一理あると思い、

車に乗せ、シブヤ区のスクランブル交差点へ急行する。


ジュン達はスクランブル交差点に付くと人々はいつもと変わらず闊歩していた。


「まだ無事のようだ。管制システムに行くぞ」


ジュン達はスクランブル交差点近くの管制システムがあるビルに侵入する。


「大丈夫なの?モロ立入禁止って書いてあるけど」


「そりゃな・・・当然だろ」


光学迷彩で姿を隠したジュン達はビルの周囲を一望できる屋上にいた。

ビルに設置されたあらゆる監視カメラはハッキングされ、

ジュンのホログラムモニターに各カメラの映像が表示されている


「これ?バレないの?」


「あくまでミラーリング、コピーを表示しているようなものだから問題ない。

む?誰かくるぞ?」


非常階段から登ってくる一人のフードを被った不審者の姿があった。

その不審者は一瞬カメラに姿が映ると

そのカメラがあった箇所の映像から姿が消えた


「まさか、映像をすり替えたのか!?」


「どういう意味?」


「よくある手口だ、数分前の映像を繰り返し再生させることであたかも異常なしに見せる手法だ。

まずいな、やつがどこにいるのか見失ってしまう」


「私に任せて」


ブバルディアが目を閉じると監視カメラの映像が元に戻る


「疲れるのよね、これ。」


「何をやった?」


「ブーってやってバババーってやったのよ」


「その表現やめろ、もうちょっとわかるように説明してくれ」


「んーと、電波とか通信情報を書き換えるっていうのかな?

なんかそういう波長を出すの」


「嘘だろ・・・!?いや、それよりやつを見つけた」


映っていたの屋上の監視カメラの映像だった


「まさか!?」


ジュンが振り向くとフードを被った件の不審者がいた。

その顔はなんとジュンそっくりだったのだ。


「さっきから邪魔してたのはお前らだったのか」


こちらは光学迷彩で姿を隠しているのに

男には視えているようだった。


「ああ、姿隠していても俺には丸見えだからね?

反対側の屋上の出入り口近くにいるよね」


「くっ!」


ジュンは光学迷彩から姿を現す。


「まさか、俺のクローンなのか?」


「これは驚いたな!まさか、俺のオリジナルとはね?

俺の名はMkJ01、お前の戦闘データを元に造られた、

意思を持つ戦闘ロボットだよ」


意思を持つロボットだと!?

確かにロボットならば光学迷彩をサーモグラフィーなどのセンサーで簡単に見破ったのも納得がいく。

ジュンはまだ光学迷彩に隠れているブバルディアの方をチラリと見る。

ブバルディアは全力で首を横に振る。

ジュンはスキャナーでMkJ01を視認すると自身が述べたようにロボットであるが確認できる。


「お前の目的は、このビルの管制システムを破壊し、シブヤ区を混乱に貶めることだな!?」


「ああ、そうだと言ったら?俺は人間が憎くて憎くてしょうがないんだ。

痛い痛い痛い苦しい苦しいって泣き叫んでもよぉ!俺にありとあらゆる非人道的な実験して来やがってよぉ!でもそんなゴミムシ共もぶち殺してやったぜ!次はてめぇらの番だ、ククク、ヒャハハハハハハ!!」


こいつ、イカれてやがる。


「させないわ!」


ブバルディアが姿を現す。おい、話をややこしくするな。


「ジュン、私が渡したデバイスを使うのよ!」


「これでいいのか?」


ジュンは耳に装着したデバイスをブバルディアに見せる。


「ええ、あなたはただイメージすればいい、相手が次にどう動くかを」


「なぁにごちゃごちゃ喋ってんだ?来ねぇならこっちから行くぞ!」


MkJ01は凄まじい速度で蹴りを繰り出す、飛び出したその勢いで屋上の地面が抉れるほどだった。

ジュンはMkJ01が次にどのように動くか脳内でイメージする。


(左方向下段からの蹴りの確率10%、右方向中段からのボディブローの確率90%)


薄い軌跡で左方向下段からの蹴りのシルエットがシミュレートされ、

同時にそれよりも遥かに濃い軌跡で右方向中段からの腕の攻撃がシミュレートされる。


「右か!」


「なっ!」


ジュンはMkJ01のフェイントを読み切り、宙を舞い、踵落としを食らわすも

MkJ01は左腕でそれを防いでいた。


「やるじゃねぇか!」


MkJ01はジュンを警戒し、距離を取る。

と同時にジュンは脳内が焼ききれるような痛みを襲う。

先程の演算は脳に相当負荷がかかるようだ、多用はできない。


「おっと、いけねぇいけねぇお前らと遊んでる暇はないな、

お前らが何者かわかれば今は十分、

俺の目的は管制システムをぶっ壊しに来たんだった」


MkJ01は指を鳴らすと空から大量の軍用ドローンや屋上の入り口からパロット達が現れる


「せいぜいソイツらと遊んでなぁ!」


「待て!」


MkJ01が屋上の反対の出入り口から姿を消す。


「くそっ、まずいぞ・・・どうする!?」


前後の出入り口が塞がれ、空からは軍用ドローン、

まさに絶体絶命のピンチだった。

そのとき、ドローンは何者かの狙撃によって次々と撃ち落とされ、

ジュン達がいた背後の出口側のパロットはネットのようなワイヤーで数珠つなぎになって感電し、停止する。

ジュン達はネットから漏れたパロットをパラライズブレットで撃ちながら背後の出口に向かうと

飄々とした男が現れる。


「ヒュー、珍しく苦戦してるようだな、うかうかしてっと検挙数No.1の座は俺様が奪っちまうかもな、なーんちって」


「リュータ!」


「カノンもいるぜ」


リュータは隣のビルを指す。

アマギリュータとミスルギカノンはジュンのオペレーター仲間であり、同期である。


「おい、それよりも早く逃げるぜ」


リュータは前方からパロット達が迫ってくるのを見ながら、

ジュン達に早く屋上から逃げるよう誘導する。

ジュン達は逃げながら会話する。


「しかし、お前らしくねぇと思ったが、一般人連れてたのか」


「それよりもどうしてここが危ないって分かったんだ?」


「俺たちが気づけたのも先程このビルから不正な通信電波が流れていたのを確認してな、

急遽俺たちが様子を見に来たってわけさ」


ジュンはブバルディアを見るも沈黙していた。

どうやら意図していたというわけでもなさそうだ。


「後、このビルの管制システムが破壊されたら、シブヤ区中のロボットが制御を失って暴走するんだよな?」


「大丈夫だ問題ない!実はすでに予備の管制システムがコントロールしている。

よって、このビルが破壊されても無害だ。」


ビルの非常階段を駆け下りるも大量のパロット達が迫ってくる。


「で、どうすんだこの数、なんとかなるのか?」


ジュンはパラライズバレットで牽制するも一向に数が減らない


「そもそも何でコイツら管制システムの命令無視してるわけ?」


「俺も知らん、いや・・・」


ジュンはMkJ01がロボットを暴走させているのは想像がついたが

今リュータに言うのは得策ではないと思い、閉口した。


「・・・どうした?とりあえずもう少し降りれば俺が仕掛けた、

特製のパラライズワイヤーネットがある、それで一網打尽にできるぜ」


ジュン達はビルの中層階を駆け下りると

パラライズワイヤーネットを起動する。

網状のワイヤーに次々とパロット達が引っかかり、

数珠つなぎに感電していく。


「これで全部か?」


「みたいだな」


安心したも束の間、

下の階で爆発が起こり、ビル自体が倒壊していく。


「逃げるぞ」


倒れゆくビルは隣のビルへと衝突しそうになる。

ジュンとリョータはワイヤーを隣のビルへと飛ばし、

ジュンはブバルディアを抱えながら隣のビルへと飛び移る。

ジュン達が先程いた管制システムのビルの上半分は落下し、

凄まじい音を立てて粉々になる。

その様子をジュン達は隣のビルから眺めていた。


「なんとかなったな・・・」


数刻後、ジュン達はビルを降りていた。

辺りは騒然としていた。

管制システムが破壊されたことによる未曾有のロボットの暴走を防げたとはいえ、

これはジュン達の敗北に違いなかった。

そこへ長髪の女性がジュン達の元へ現れる


「お疲れ様、ジュン」


「さっきの狙撃は助かった。ありがとうカノン」


「そういえば、お前が連れてるそこの嬢ちゃんはなんで管制システムのビルの屋上なんかに居たんだ?

一般人は立入禁止だよな」


鋭く的確な疑問がリュータから発せられる


「彼女は俺の所で今厄介になってて、

俺の仕事をみたいというのを止めるも着いてきたんだ」


半分は間違っていないが無理な言い訳にもほどがあるのをジュンも自覚していた。


「その娘、お前の何なの?」


「遠い親戚だ」


「ふーん、でもどのみちあんなとこにいる事自体駄目なんで統制機構本部で聴取必要じゃね」


リュータは冷ややかな目でジュンを見る


「私いくわ、でもジュンの車がいいの?駄目かしら」


「まぁいいけど、お前ちゃんと来いよ?どのみち俺たちも今回の件、色々報告しないといけないからさ」


リュータとカノンは車に乗ると統制機構本部へと向かっていく


「俺たちもいくか」


ジュンとブバルディアは車に乗り発進するも

自動運転モードの車は次第に統制機構本部と違う行き先になっていた。

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