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あるところに、お水の女神たちがいた。海の女神、雨の女神、湖の女神。コロナ禍で心を病み、毎晩リモート飲みをしていた彼女たち。寒川神社の加護を得るため、ご祈祷を受けに、久々に人間の姿になって、外出した…
雨の女神は、毎日、ホラン千秋の天気予報を見ているため、コンサバよりの擬態になった。海の女神は、ほぼ水着の民しか見ないため、CanCamを買ってファッションの勉強をして、やはり、コンサバよりの擬態になった。
問題は、湖の女神で、どこからどうみても、オタクだった。ピンクのパーカー。フロントプリントに『彼氏』が印刷されていた。
海「ねえ!なんで彼氏着てきた?!(笑)」
湖「彼氏も祓ってもらう。」
雨「仕方ねえ!(笑)」
三人は、受付を済まし、番号札を渡された。地下の待合室で呼ばれるのを待ったが、平日で、とても空いていた。すぐ呼ばれ、ご祈祷が始まった。祈願者は十人ほどしかおらず、神主さんは二名で対応していた。
「エー。東京都ォォォ中野区ゥゥゥ中野一の二のォォォ…」
女神ら(…え?え?やばくない?)
「高田佳代子ォォォ。えー…厄除けェェェ祈願のォォォことォォォ〜。」
女神ら(え?やばくない?住所も名前も言われるじゃん!やばいよ!やばいよ!!女神ってバレるよ!!)
「エー。神奈川県寒川町ィィィ〜…」
女神ら(え、え?どうしよ?!バレるよ!バレるよ!!)
「菱川栄太ァァァ。北里大学薬学部合格祈願のことォォォ〜。」
女神ら(プライバシー、まじでダダ漏れ!!!)
「エー。園田華子ォォォ。北海道大学医学部ゥゥゥ、東京大学理科三類ィィィ、筑波大学医学群ンンン〜…滑り止めも全てェェェ…合格祈願のォォォ〜ことォォォ〜。」
女神ら(は?!めっちゃ受けるじゃん!頭良いし!!)
「エー…。エー…と。」
神主が、動揺している。
女神ら(やばいよ!うちらだよ、きっと!!)
「アー。海におわします…女神よりィィィ〜…や、厄除け祈願のことォォォ〜?」
女神ら(ムリムリムリ!笑)
みんな、笑いを堪えている。
「アー…。雨を司る女神よりィィィ〜…厄除け祈願のことォォォ〜??」
女神ら(ヤダヤダヤダ!笑)
やばい、本当にやばい。みんな笑いを本気で堪えている。
「エー…。湖にあられる女神よりィィィ…結婚祈願、良縁成就のことォォォ〜。(笑)」
雨(まじか!)
海(嘘でしょ!)
湖(ごめん。w)
ご祈祷会場は、笑いに包まれた。
ご祈祷の後は、お抹茶を飲み、和菓子を食べ、庭園を散歩し、女神たちは帰路に着いた。寒川神社でもらった様々なグッズを飾っておけば、まあ、ご利益はあるだろう。
帰りに、女神たちは、すき家に入り、牛丼を食べた。
海「まさかあそこで結婚祈願とか。面白すぎだわ。」
雨「神主さん、最後、ちょっと笑ってたよね。」
湖「だって、ダーリンいたら、守ってくれそうじゃん。」
海「いやー、もう、笑い止められなかった。」
雨「あー。私も、(心の)健康祈願も入れればよかったー。」
湖「定期的に来よ。(笑)」
海「結界張ってもらう予定だったのにね。(笑)」
雨「まあ、もらったお札とか、飾ればなんとかなる。(笑)」
その後は、せっかくなので、小田急相模原まで足を伸ばし、メロンパン専門店でたくさんメロンパンやクロワッサンを買った。そして、それぞれ、電車で帰った。
寒川神社でプライバシーを晒された女神たちは、SNSで瞬く間に有名になり、その後、寒川神社には、問い合わせやご祈祷のご依頼が葛藤したということだ。
めでたし。めでたし。