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哀憎使いの英雄譚  作者: しゅりりんね
デュエル
24/28

だっさい名前

 ラブコメ勃発の小一時間前のこと。


「今日集まって貰った君達が呪怪と対峙するメンバーだ。という訳で、取り敢えず順番に自己紹介して呉れ」


 想呪対抗学の教室の奥にある資料室に集められたのは、たった四人の生徒だった。

 アリナは度々マシューと話す機会があったが、殆どの生徒が辞退したとこぼしていたのを知っている。

 それにしても少なすぎるとは思ったが。


 左端の席に座っていた少年がむくりと立ち上がり、口を開いた。


「んーと。おれはビリー・ケインで……他に何言えばいいんだ、これ」


 ボサボサの赤みがかった金髪に手をやって頭をかくビリーの目は、眠たいのかぼんやりしている。

 本来ならもう少し美しく見えるのであろう緑色の瞳が、放置された大量のニキビや毛玉だらけのセーターのせいで霞んで見えた。


「そうだな。志望理由が有れば聞きたい」

「理由かー。あんま深く考えてないけど。なんか人助けになったらいーな的な? なんかヒーローみたいで……カッコいぃ気がして」


 そう言ってニンマリと口を緩めたビリーは、どうやら重大な疾患(厨二病)を抱えているらしい。

 十五歳らしい安直な理由だが、その場にいた全員の共感性羞恥心とマシューの古傷をえぐっただけだった。


 数秒の沈黙がマシューの居心地の悪さを加速させる。


「……そうか。じゃ次」

「あっ、はいっ! サラ・サリヴァンですっ」


 サラの後頭部でお団子ヘアーにした暗めの栗毛には、丁寧に手入れされた証の艶がある。

 明るい鳶色の澄んだ瞳は彼女の小柄さも相まって上目遣いに慣れきっているようだ。


「志望理由は……ええっと……っぐすん、うぅ……」

「うおお⁉︎ どうした急に泣き出して」


 小さな背中をさらに縮めてすすり泣き始めたサラは、ポケットから何やら取り出しマシューに差し出した。


「これ……昔飼ってたウサギのルナティックの写真……脱走した時、森に居た呪怪に突っ込んでって……死んじゃったから」

「其れは其れはご愁傷様で……ってえ? ルナティック?」


 一応ご説明すると、ルナティック(lunatic)とは「狂人」「精神異常者」等という意味の名詞である。


 酷い時のシャーロットほどではないが、どれだけ慰めても泣き止みそうにないので続きはお預けにした。


「アリナ・ノアです。三年前に呪怪で両親を亡くしたので、ここに来ました」

「うん、其れは承知している」


 他の二人に比べて重すぎる志望理由だが、マシューはあっさりと流した。


「では最後」

「はーい。俺はエヴァン・モンゴメリーね」


 この時代にはかなり珍しい、純粋なイギリス英語の発音が耳に心地よい。

 気怠げな声だが、姿勢の良さや品のある服装からそれ相応の身分を感じられる。

 おそらく財閥か政治家あたりの息子なのだろう。


「志望理由は……比較的楽に単位取りやすそうだったから、かな? ま、何卒よろしく」


 現在の旧ヨーロッパの大学は義務教育とはいえ、選択学部で単位が足りないと簡単に留年してしまう。

 学部によってはそこそこの文量のレポート等を月一近いペースで提出しなければならず、そういった学部では留年する生徒が結構多い。

 そこに目をつけたマシューは、二、三年前に想呪対抗学の単位習得条件を楽に設定して、生徒数の確保を狙っていた。


 それでも不人気に変わりはないのだが、エヴァンのように策にはまった生徒がいるあたり、多少の効果はあったのだろう。


「では、此れにて「呪怪刺客団」結成、と言う事で」

「え、それってあたし達の名前ですか? だっさい名前……」

「だよなあ……折角なら -殺戮者連合(キラー・ユニオン)-とかの方g」

「論外」

「二つともやだね。マシューもビリーも、ペットでも飼ってみたらどうだい? 君らがつけた名前に振り向くまで何年かかるだろうね」

「んだお前! ヒョロガリの癖に生意気な口ききやがって!」

「なーんだ、言葉が通じるとは。よく肥えてるから同族とは気づかなかったよ」

「おれは家畜じゃねェェェェェ!!!!!!!!!」

「はは、よく鳴く奴は生きが良くて美味いらしいな」

「君達、喧嘩は兎も角過度な皮肉はよして呉れ……今後コンプライアンス的にまずい」


 生徒同士はほぼ初対面だったが、(サラを除いて)変に緊張したりせず砕けた会話を交わしている。


 砕けたと言うよりは、お互いの砕き合いといった調子だが。

 まあ悪くはないだろう。


「あの、教授。念のため訊きたいんですけど……ホントにこの四人だけなんですか? 呪怪と戦う(殺す)希望者……」


 いつの間にか泣き止んだサラが、遠慮がちに呟いた。

 萌え袖からのぞいた、細い真白の指が微に震えている。


「否、実はもう一人居るんだがな。……何と言うか……先約が有るらしいんでな。今日は来れんらしい」


 珍しく言葉を選ぶような仕草を見せたマシュー。

 アリナは彼の深い緑色の瞳に何か秘め事がある気がして、他の三人の反応を見た。

 だが、訝しげな表情をしていたのはアリナだけであった。


「へえ……じゃあその子、女の子ですか? 男ですか?」

「? 普通に……おt」

「女の子ですか? 女の子ですよね? まさか生えたりしてませんよね?」


 突然前のめりになったサラの目は血走っていた。

 どうしても女子仲間がもう一人欲しいらしいが。

 彼女の少々下品な言い回しに、思春期真っ只中のビリーが反応した。


「何だよ、お前……生えてちゃ悪いのかよォ。漢のロマン(性剣)を侮辱すんな」

「へぇ、ロマン? その程度(未使用)のブツが?」

「おいテメェもっかい言ってみろやクソ!!!!」

「君達汚いぞ止めろ……普通に男だから。別に、女子ならアリナが居るだろう」

「……あ。忘れてました⭐︎」

「……ろま……?」


 本来なら「忘れんなよコンチキショー!」等と文句を垂れるところだったが。

 純粋無垢なアリナには圧倒的に足りない教養(下◯タ)の壁が勃ちはだかり、文脈を理解できなかった。


 状況を察し、気を遣ったエヴァンが茶を濁した。

 やはり茶に関しては上手いのだろうか。


「あは、君が知るには泥沼みたいな世界だよ。楽しむのは彼らだけでいい、ほっときな」

「……うん? 分かった……」

「ふふ。まあ、とりあえず現段階での男女比は三対二ってとこで」

「そうだな。……では、来週以降は毎週金曜の午後集合で、あとは各自鍛えるなり何なりして呉れれば良いので。

今日の所は解散でよろしい」

「「「「はーい」」」」


 こんな調子で、顔合わせは終了した。


 久し振りの大人数(笑)の会話を楽しみつつもかなり疲弊したアリナに、某メンヘラ(シャーロット)の発作とラブコメが襲いかかったのは言うまでもない。






























「で、結局さっきの何だったんですか? ロマンとか生えるとか」

「(此れは正直に説明したら事案(セクハラ)に成る可能性が非常に高いが、勘違いさせても後々恥ずかしい思いをするのはアリナ自身である事を踏まえた上で)椎茸とか松茸とかじゃないか?」

「ほえぇ……。覚えとこ」

「はは……(罪悪感)」

会話内容拙すぎて修正。

誰か洗練された皮肉を教えてくださいm(__)m

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