鉱山事故!
依頼人:『鍛冶師』ゴッドン
依頼内容:鉱山から鉱石が届かねぇ! グズグズしてやがるから取りに行ってくれ!
報酬:8000ゼル以上は払う!
報酬が低いからやめておけとギルドの人達に止められた。
でも鉱山に行けるチャンスだ。ゴーレムの強化には素材、特に鉱石が大切だからお勉強したい。
この街からだと二日かかる場所に鉱山があると教えてもらった。地図で場所を確認してから、さっそく出発した。
日数や食料、必要なアイテムを考えると確かに8000ゼルじゃ誰もやりたがらないと思う。
「ゴーレムはいいなぁ。私はすぐ疲れちゃう……」
私と違ってゴーレムはてくてくと歩いている。ゴーレムが私を運んでくれたらいいのに、と考えたところで思いついた。
運搬用のゴーレムに私も乗せてもらえばいい。だけどこの道端で改造するには素材がない。仕方ないから今回は頑張って歩こう。
「重いものを持つならもっと強い素材が必要……ブロンズじゃなくてアイアンとか」
ひとり言を言いながら、考えながら歩くとあっという間に夕方になる。
夜、寝袋に入ってからもずっとゴーレムの事を考えていた。
* * *
ようやく着いたテクレスタ鉱山。この国にはいくつか鉱山があるみたいだけど、ここはそんなに大きくない。
依頼書を持って入り口に近づくと、皆が騒いでいた。怪我をした人が運ばれていたり、地面に寝かされている。
「何かったんですか?」
「ん? なんだ、君は?」
「冒険者ギルドから依頼を受けてきました。この依頼書です」
「こんな時に冒険者かよ……ていうかずいぶん小さいな。今はそれどころじゃないんだ」
「何か事故ですか?」
「そうそう。鉱山が落盤しちまってな。一昨日から復旧作業をしてるんだが、中にまだ閉じ込められた奴がいるんだ」
崩れ落ちた岩が鉱山の入口を塞いでいる。皆、がんばって岩をどかしているけどなかなか進んでなかった。
「中には採掘師が何人かいるしよぉ。そろそろ助け出してやらないと、命がもたん……」
「ゴーレムにやらせてみます!」
「は? お、おい!」
ゴーレム二体を向かわせて、重い岩を次々と壊していく。これならすぐに助けられる!
「なんだ、あれは!?」
「魔物か?」
「とにかく止めろ!」
大人がたくさん集まってきてゴーレムを止めようとしてる。手伝ったのにどうして。
「あの! なんでダメなんですか?」
「下手に刺激したら、二次災害が起こるんだよ! だから慎重に岩を掘って、どかしているんだ!」
「す、すみません! すぐに回路をいじります?」
「なんだって?」
ゴーレムを連れてきてから、回路を見直した。他の人の作業を見ながら、行動パターンを組んでいく。
マルクトおじいちゃんの時の経験を活かして、より滑らかな動きに。より細かい動きに。
こうして回路を組んでもう一度、ゴーレムを行かせた。大人達と一緒に次々と岩をどかしていく。
「だからこれ何なんだ!?」
「ゴーレムです!」
「ゴーレム?」
ゴーレムのパワーのおかげで入口を塞いでいた岩がなくなっていく。ようやく人が一人分、通れるくらいの入り口が出来た。
「おおい! いるか?」
「助かった!」
入口の近くにいた人達が出てくる。怪我をしてる人は手当てを受けているけど、まだ全員が救出されてないみたい。
もっと奥に残された人がいると聞いて、ゴーレムを進ませる。
「おい、勝手に……」
「ゴーレムなら崩れても平気です!」
「それもそうか……。でも本当にゴーレムか? あんなに力強くて正確に動くやつなんて初めて見たぞ」
ゴーレムが中で作業している間、おじさん達の質問に答えた。
ゴーレムならこういう救出作業も出来る事、作り方次第ではネームドモンスターも倒せる事。聞くたびに感心して、なんだか盛り上がってきた。
「魔導機師なんて初めて聞いたぞ。そんなクラス、あったんだな。俺なんか剣士がよかったのに採掘師だからなぁ」
「ばあちゃんから聞かされたっけな。レアクラスの中には群を抜いた不遇職があるって……」
そんな話をしてる間に中から人がどんどん出てくる。その度に再会を喜んで抱き合った。
足を怪我して歩けない人はゴーレムが背負ってる。そして最後の一人が助け出された時に全員がまた大喜びした。
「全員、生還した! 信じられない!」
「奇跡だ!」
「その子のゴーレムのおかげだ!」
私とゴーレムが皆から撫でられている。フードがめくれて、髪がぐしゃぐしゃになった。
「鉱山の責任者として礼を言う。君が来てくれなかったら、この結果はなかっただろう」
「私も皆さんが無事で嬉しいです」
「君のクラスは不遇職などと言われているらしいが、少なくとも大勢の命を救った。クラスこそが絶対だと思っていたが、考えを改めよう」
お母さんがくれたもののおかげだ。なんでユニークスキルに目覚めたのかはわからないけど、やっと大きな役に立てた。
私、生まれてきてよかった。
「もうすっかり夕暮れだな。汚いところだが、今日は泊まっていきなさい。ところで何か礼をしたいのだが……」
「それなら鉱石についてお勉強がしたいです!」
「そんな事でいいのか?」
「お勉強すればもっといいゴーレムを作れるようになるんです。お願いします」
「断るわけがない。君のような子どもが鉱物学に興味を示してくれるなんて、俺としても嬉しいよ」
それからおじさんは丁寧に鉱物学について教えてくれた。夢中で資料を読んでいるうちに、どんどん鉱石の知識がついていく。
いよいよ眠くなって意識がなくなる前に、誰かが薄い毛布をかけてくれた。