冒険者ギルドのお仕事!
「廃材置き場の整理、終わりました!」
「おぉ! スッキリしたなぁ!」
冒険者ギルドに出されていた廃材置き場の整理依頼を終わらせた。
街の警備隊の偉い人にすごい喜んでもらえている。でも、私はあまり喜べない。だって、ここを散らかしたのは私なんだもん。
「いやぁ、前に誰かが荒らしたみたいでな。廃材も何もかもしっちゃかめっちゃかでビックリしたもんだ」
「そ、それは大変でしたね」
「そのゴーレムは持ち運びも出来るんだな。まるで人間みたいな動きだ」
「えへへ……ありがとうございます」
マルクトさんとの特訓のおかげで、いい回路を作れるようになったおかげだ。
関節も動きのパターンも、前とは全然違う。おかげでこういうお仕事も出来るようになった。
「ところで、これってどうやって動いてるんだ? 例えば片付けろと命令すれば動くのか?」
「そうなんです。自動で私について歩いて、後は私の音声を認識して動きます」
「ひぇぇ! なんだそりゃ! そんな技術どこで!?」
「あ! 用事を思い出したのでこれで!」
すごい迫ってきたから慌てて逃げた。マルクトさんやギルドの受け付けおじさんの言う通り、あまり喋らない事にしてる。
ゴーレムと一緒に冒険者ギルドに走ってきた後は報酬を受け取った。これが野草集め以上にすごい。
生活費等を抜いた所持金:9499ゼル → 17499ゼル
「お疲れさん! さすがゴーレムってところだな! 大人数人で一日かけて終わらせる仕事なんだがなぁ!」
「おかげ様です!」
「いや、さすがクーリエちゃんか! すまんすまん! ところで今日はもう休むのか?」
「夜になるまで時間があるのでもう一つくらい仕事したいです」
「それなら、このモーラ婦人の買い物はどうだ? 高齢で足腰が弱ってるから最近は買い物を依頼してくるんだ」
「いいですね! それやります!」
モーラ婦人。おばあさんの一人暮らしみたい。ペットもいるからエサを含めると、買い物が大変だとか。
私なんかが少しでも助けになるなら喜んで引き受けた。
「こんにちは!」
「おや、ずいぶんとかわいらしい冒険者だね?」
「買い物を引き受けます!」
「えぇ……。私は普段、あまり外に出ないから買い溜めするんだよ。お嬢ちゃんじゃ厳しいだろうねぇ」
疑われるけど根気よく頑張るアピールする。仕方ないという風に、おばあさんは買い物リストを渡してくれた。
見ると確かに私だけじゃ何往復するのかわからない。
「出来なかったら無理しなくていいんだよ」
「いってきまーす!」
食材、日用品、ペットのエサ。青果店、精肉店といろんな店に行かなきゃいけない。
ただ順番に行くよりはいいルートがあるはず。今までの情報を集めて最短ルートを導き出した。
走り出せば後は早い。最短ルートのおかげで半分近く、時間を縮められる。
運搬用のゴーレムに積めば重さなんて平気だ。潰れそうなものを後に入れて、きちんと整理しながら買い物をする。
「それが噂のゴーレムか! どうやって動いて」
「すみません! 急いでるので!」
行く先で珍しがられるから大変だ。全部の買い物を済ませてから、おばあさんの家に戻ると予想通りの時間だった。
普通に行くよりも半分以下の時間になってる。街の抜け道や近道を把握しておいてよかった。
あまりに早かったせいか、おばあさんが目を丸くして驚いている。
「も、もう終わったのかい? どれどれ……はぁぁ、こりゃたまげたねぇ」
「ペットのエサもあります!」
猫が足元に頬を擦りつけてくる。家の中を見ると、おばあさんと猫が住むにしても狭い。
「冒険者の方々には本当に助けられているよ。町長は私らみたいな年寄りなんか眼中にないから……」
「エド……町長にお願いしてもダメなんですか?」
「年寄りを集めて何度も陳情しているんだけどね。文字通り、門前払いさ。そんな余裕があるかってね。あんなに広い庭とお屋敷で暮らして、奥さんと息子もいい服を着ているよ」
「そうですか……」
私のお母さんの事もあるし、あの人達を許せないという気持ちが強くなってきた。
この街はお金持ちが多いけど、このおばあさんみたいにそうじゃない人もいる。だから少しでも私なんかが助けになるなら、頑張らないと。
「ま、あの人はレアクラスの商人だからね。なるべくしてなった地位というべきかねぇ」
「商人ってレアクラスなんですか?」
「意外に思うかい? どんな商売にも適正があるってのはすごい事さ。何をやっても成功するし、金や損得勘定なんて考えるまでもなくわかってしまう。
実際、貴族の中には商人からの叩き上げも少なくないんだよ」
「じゃあ、騙したりも……?」
「あぁ、気をつけるんだよ。特にヘラヘラしてやたら好意的に接してくるのはね」
商人、ダンサー、ソードマスター。どれも必要としてる人が多いクラスだ。
私はレア不遇職の魔導機師。ユニークスキルの情報解析がなかったら、ゴーレムを作れなかった。
レアクラスの人達には負けたくない。絶対に。
「今日は助かったよ。そうだ、今夜は夕食でもどうかね?」
「い、いえ。悪いですし……」
「子どもは遠慮しなくていいんだよ。報酬だって少なかったろう? せめてこれくらいはね……」
その夜、おばあさんが作ってくれたシチューはおいしかった。お母さんが元気だった頃に作ってくれたのを思い出して少し涙が出そうになる。
生活費等を抜いた所持金:17499ゼル → 18999ゼル