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すごそうな人と特訓します!

 マルクトさんとの特訓が始まった。クラス、武士の居合は速すぎてゴーレムなんてすぐ壊される。

 回避するかどうか、ゴーレムの回路が判断する前にやられちゃう。


「まだ調整が足りんな」

「そうですね。ええと、回路をこうして……」


 何度も回路をいじった。初動の速さ、判断の速さ、回避にとにかく気を使う。

 途中で回路の部品も買いにいった。今は安い金属を加工して済ませているけど、これもいいものにしたら違うのかな。

 必死にいじっていると、マルクトさんが覗き込んできた。


「……何が何やら、といったところか。こちらの知識には疎いが、おそらく今の技術ではまるで及ばん境地だろう」

「でも、私にはわかるんです。いろんな情報が集まるほど、答えが見えてくるんです」

「君のそれはいわば未来技術だろう。知られてしまえば大騒ぎになる。この街程度ならば人気者程度で済むがの。それでもゴーレムを作るのか?」

「私は魔導機師なので……」


 そう答えたけど自信がなかった。この先、どうすればいいんだろう。ゴーレムを作って、それから。 


「と、少し意地悪だったかな。すまんの」

「いえ、とても大切な事だと思います」

「私は当然、口外せんから安心しなさい」

「はい、ありがとうございます」

「さ、もう調整は終わったかね?」


 マルクトさんが刀を構える。見てるだけで逃げたくなる迫力だ。

 調整が終わったゴーレムをマルクトさんの前に立たせた。


「では……」


 また始まって、終わった。今度はゴーレムの足が斬られてる。

 立てなくなったゴーレムがガクンと傾いてから倒れた。


「あーあ……まだダメかぁ」

「いや、私は両足を狙ったのだ」

「え? それじゃ……」

「わずかだが、進歩している。その調子だ」

「や、やった!」

「ただし、加減はしているがな」


 今度は本当に意地悪く笑った。そうだよね、この人が本気になったらきっとバラバラにされてる。

 武士は不遇職だなんて言ってたけど、とてもそんな風に見えない。と考えて、気づいちゃった。

 不遇職でも、ものすごく頑張って強くなったんだと思う。今の私も、ものすごく頑張ってる。この人は私と同じなんだ。

 

「与えられたクラスを嘆くのは簡単だ。不遇職を与えられて人生を諦める者も多い。中には諦めさせられた者もいるがな」

「諦めさせられたって?」

「周囲から迫害された者達もいる。この世界はクラスによってすべてが決まるのだから、不遇職など……と多くの者達は考えているのだ。本質を見ようともせずにな」

「マルクトさんは……その」

「私は騎士の名家の生まれだが追い出された。武士など一族の恥さらしとな」


 私と同じだ。いや、違う。私と違ってこの人は本当のお父さんとお母さんから追い出されている。私なんかよりずっとひどい。


「でも、今はすごく強いです。どうやって強くなったんですか?」

「まぁ、それはいつかの機会に話そう。それより調整はどうかな?」

「終わりました」

「いいな。君は諦めない。それだけで素敵だ」


 マルクトさんとゴーレムがまた向き合う。今度も同じだった。マルクトさんがゴーレムをすり抜ける。

 甲高い音がして、ゴーレムのパーツが飛んでいった。


「……おや」

「い、今はどこを狙ったんですか?」

「頭だ」

「じゃあ、また進歩しました!」

「そうだな。正直、驚いている」


 剥がれたゴーレムのパーツを拾って修理(リペア)する。最初の時より動きが滑らかになっていた。

 マルクトさんみたいに言えば無駄がない動きという感じかな。


「速さだけがすべてではない。無駄を省く事も大切なのだ。君は賢いから、最初からそこに重点を置いていたのだろう?」

「はい。速さでは絶対に敵わないので可動の調整をしました」

「今の速度では次の調整で見切られてしまうな。ではもう少し加減を緩めよう」

「え、えぇー!」

「なに、こう見えて負けず嫌いでな」


 それからはもうマルクトさんに徹底してゴーレムを壊された。調整しても、まったく敵わない。

 棒立ちのままパーツが飛ぶ。これでまだ手加減しているっていうんだからすごすぎる。

 何回目かの居合の後、さすがに疲れて休んだ。


「いや、すまぬ。少しやりすぎた」

「いいんですよ、いいんです……」

「そうヘソを曲げるな。見たところ、現状で今の速度に対応するのは厳しいだろう。良質の部品や知識が必要になってくるのではないか?」

「そうですね。でも今日一日ですごく良くなったと思います」

「それはよかった。私も久しぶりに元気が出た」

「元気なかったんですか?」

「先日、仕事をクビになってな。まだまだ私も修業が足りなかったようだ」


 何のお仕事をしていたんだろう。居合で野菜を切ったり? それで怒られてクビになったのかな。


「今のゴーレムはどのような感じかな?」

「はい。結果的に速さも上がりました」

「ほう、それは嬉しい」


攻撃:118 → 145 アップ!

速さ:27  → 100 アップ!

武装『回転斬り』が『高速回転斬り』にバージョンアップ!


名前:ブロンズゴーレム1号

耐久:95/95

攻撃:145

装甲:90

速さ:100

耐性:炎(弱)

武装:ブロンズパンチ

   ベアクロー

   高速回転斬り

   突進


攻撃:10 → 40 アップ!

速さ:10 → 80 アップ!


名前:ブロンズゴーレム2号(運搬用)

耐久:25/25

攻撃:40

装甲:25

速さ:80

耐性:なし

武装:ブロンズパンチ


 ついでに2号もパワーアップさせた。こっちもそこそこ戦えるようになったはず。

 二体のゴーレムの調整が終わると、マルクトさんが見守るように微笑んでいた。

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