魔物の解体技術を教えていただきます!
リッドさんが解体に関する本を買ってくれた。これと実演で私に解体を教えてくれるみたいだ。
場所は森じゃなくて、近くの草原にした。ここにはガルフよりも強いバフォロがいるけど、今のゴーレムなら任せられる。それにリッドさんもいるから平気。
「さっそくバフォロだ。ここは俺が」
「ゴーレムで戦います! 試させて下さい!」
「お、おぉ。でも、危なくなったら遠慮なく助けるからな」
突進するバフォロをゴーレムがかわしつつ、回転斬り。森の粗暴者の時と同じ攻撃方法だ。
頭を斬られたバフォロは突進の勢いが止まらない。
バフォロ 耐久 0/43(推定)
「おおぉ! バフォロを瞬殺!?」
「えっへん」
森の粗暴者と戦った時よりも、体の奥まで斬れてる。リッドさんがバフォロの死体をまじまじと観察していた。
「このゴーレム、俺の次くらいに強いかもな……」
「リッドさんの次なら安心ですね!」
「よし、突っ込みはないな! 解体講座の始まりだ!」
まずは道具の説明、次に魔物によって取れる素材の違い。解体部位。覚える事は多い。
バフォロは肉が人気だから、まずはその部位を教えてもらった。
リッドさんが刃が入りやすい部分に刺し込むと、スッと肉が切り取れる。すごい!
素材名:バフォロの肉
ランク:E
状態:良い
素材名:バフォロの角
ランク:E
状態:良い
効果:攻撃+15 耐久+10 装甲+5 武装『突進』追加
「こいつは肉が多く取れるがその分、重い。皮もそれなりに需要があるから、悩みどころなんだよな」
「わ、私が解体した時と全然ちがう……」
「これぞ年季の違いってやつだな」
「バフォロの角、ゴーレムに使っていいですか?」
「ぜひ使ってくれ」
耐久: 60 → 70 アップ!
攻撃:103 → 118 アップ!
装甲: 55 → 65 アップ!
武装『突進』が追加!
私のマイスターハンドをリッドさんがすごく見ている。唸りながら、いろんな方向から見ている。ちょっと恥ずかしい。
「俺は魔導機師について詳しくないが、君には天職なんだな」
「てんしょく……。向いてるという事ですか?」
「そうだ。不遇職なんて言われているが、君を見てると考え方が変わるよ」
「不遇でも、お母さんは私にいろいろ残してくれました。知識、愛情……お母さんが大好きだから、負けたくないんです」
「……偉いな」
それから何匹かのバフォロの解体を私がやってみた。リッドさんほどうまくできないけど、少しずつうまくなってると思う。力がないから、苦労するところも多かった。
「そういう時は角度を変えてみたらどうだ?」
「あ、できた!」
「部位解体のコツは何となく掴んだか? 後は数をこなすのが一番だ」
「はい!」
バフォロよりも弱い魔物、鹿型のヤングラでも試してみた。こっちのほうがサクサクと斬れるから楽だ。
バフォロや森の粗暴者みたいな硬い魔物はこれから先、苦労しそう。
「解体をゴーレムに任せられたら楽だろうな」
「それです!」
「いや、ただの思いつきだけど出来るのか?」
「いや、やっぱり難しいかも……」
斬るだけなら何とかなりそうだけど、かなり複雑な回路になると思う。今の私じゃ難しい。
もっとたくさんの本を読んだり勉強しないと。そこでリッドさんに質問してみる事にした。
「魔導具製作を見学したり勉強できる場所ってありますか?」
「それならこの街よりも、工業都市プロドスだな。ただここからだと結構、遠いぞ」
「そうなんですか……」
旅に必要なものが揃ってないし、今は無理だ。それにゴーレムよりも強い魔物がいるかもしれない。
出来るだけこの街で強くして、勉強したい。本当はあまり長くいたくないんだけど。
「この街も悪くないんだがな……。町長が変わってからは雲行きが怪しくなったらしい」
「町長……エドワールさんですか?」
「そう、こいつの親父の代はよかったらしい。だがエドワールの代になってからは気に入らない人間を街から追い出すわ、税金を不当に使ってるなんて噂が立つわで散々だ。なんで絵画や奥さんのドレスが必要経費なんだか……」
「そうだったんですか……」
「しかも噂じゃ、十歳になる子どもを持つ親に目をつけて引き取ろうとしてるらしいな。拒んだ人間には裏で手を回して、そう仕向けるとか……」
「それ、本当ですか?」
「ん?」
声が震えた。そう仕向けるってどういう事だろう。お母さんがあの人に何かされた?
「おい、どうした?」
「い、いえ」
「具合いが悪くなったか?」
「大丈夫です。ぜひ続けたいです」
今度は腕が震えた。片手で抑えて、ようやく落ち着く。あくまで噂。だけど、だけど。
「頑張りますっ……!」
「おう……」
今はただ勉強する。勉強してゴーレムを強くして。プロドスへ行く。ただそれだけ。