月はんぶん
学校から帰って家につくと、
ゆーくんママが、
私のママと、
うちの玄関で話していた。
私は別に隠れて立ち聞きしようと思ったわけじゃないけど、
うちの塀は私より背が高いので、
寄り添っていると姿がかくれて、
玄関から私が見えない。
それに、
大事な話のような気がして、
邪魔したくなかったから、
そのまま塀に寄り添って待っていた。
「でしょ?都子ちゃんお姉さんだから、裕太も話しやすいかなぁって」
「最近そうでもないけど、いつもくっついてたもんねぇ。みやに聞いてみるよ」
「ありがとう、また、ね、ありがとう」
ゆーくんママが、
こっちに歩いてくるので、
私はなんとなく、
今歩いてここに着いたように、
少し後ろに下がってまた前に歩く。
塀の終わりでゆーくんママが私に気づいて
「あっ、おかえりー」
と言って、
ただいま!と元気に答えた私にママが
「みやちゃーん」
と呼びかけた。
「ただいまぁ」
「なんかね、ゆーくんママがね、ゆーくんが最近夜外に出てるから心配なんだって。なんか知ってる?」
「知らなぁい。でもゆーくんいつも夜マンホールのとこで空見てるのは知ってるけど。」
「あぁやっぱり、空見てるのか。ゆーくんママが、ゆーくんが急にお月さま好きになったって言ってたよ」
「お月さま?ふーん」
「そう、だから、みやちゃんさ、ゆーくんになんでお月さま見るの?って聞いてみて。それママにも教えてね」
「なんで?なんでみやが聞くの?」
「ゆーくんと仲良しだからだよ」
「別に仲良しじゃないよ」
「あら、そう。じゃあいいよ」
「別に聞かないとは言ってないじゃん!」
「あら、そう。」
それで私はランドセルを置いてゆーくんの家に行った。