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vsフェミニストおばさん(後編)

保健室の扉が開く。2、3人の警官が入ってきた。


「どうしたのかね?」


一番先頭に立っている少し偉そうな警官が僕と保健室の先生にに投げかける。


「ぼ、ぼくは!」


口を開いて身の潔白を説明しようとする。しかし、僕の声より大きな声が僕の声を掻き消す。


「この男の人が!女の子をベタベタ触ってたんです!怪我をしてたから運んだって言うけど、その怪我本当はあなたが悪い事しようとしてさせた怪我じゃないのかしら?!」


「そ、そんな事ないです!ただ転けてたからここに運んできただけで!」


「なに言い逃れしようとしてるのよ!あなたがこの子をベタベタ触りながらこの小学校に無断で入ってきた事は監視カメラにしっかり撮られてますからね!!」


「おまわりさん、はやくこの汚らわしい男を強制わいせつと建造物侵入罪で逮捕してちょうだい!!」


「この先生が言ってる事は本当かね?」


見下すような目でこちらを見る警官3人。この部屋に敵が増えてしまった。


「僕は確かに女の子を持って運んできたけど、ベタベタ触っていないし、怪我もさせていない!」


「この男は嘘をついているのよ!はやく連れてって!」


何かに取り憑かれたように狂乱する保健室の先生の気迫に僕は最初押されていた。だけど今は次第に落ち着き始めている。


落ち着き始めると、反抗する気力も湧いてくる。


(なぜこんな事になったんだ。普通に考えておかしくないか。)


「喧しいよおばさん」


僕の口から出た言葉は思いの外荒かった。


「そんなに男が憎いのか?そんなに俺を悪者にしたいか?」


「たしかに校内の監視カメラに僕が女の子を運んできた姿は映っているだろうな。それで僕を強制わいせつをする性犯罪者と決めつけたいようだか甘いんじゃないか?」


周りはいきなり喋り出した僕に呆気を取られている。


「映っているわよ!あなたが彼女を触っている姿が!」


「彼女は道で転けていた。それを運んで来たんだ。なにも悪い事はしていないだろ?」


「道で転けたっていう証拠なんてないじゃない!!」


「証拠ならあるさ!彼女はコンビニの前で転けていたからな!あんたの大好きな監視カメラさんがしっかりと見ているはずだぜ!」


保健室の先生は思いのよらぬ反撃に少したじろぐ。


「こ、転けてたとしてもわざわざ運ばなくていいじゃない!!女の子の身体に触るなんて!強制わいせつよ!」


「さっきから法律ばっかり出してくるけど、おばさん法律に詳しいのか?」


「まぁ詳しけりゃ強制わいせつだなんて言わないよなぁ。教えてやるよ、緊急避難って知ってるか?」


「僕が彼女の身体に触れた事を100歩譲って悪いことだとしよう。しかし、それは彼女の身体を守るために止むを得ず触れたわけだ!」


「厳格な法益の権衡は必要とされないってあんたの大好きな法律書には書いてなかったかい?」


僕にはわかる。急な法律の話に保健室の先生は理解ができてないことを。


「だからなんなのよ!あなたは体を触った!これだけでじゅうぶんよ!はやく連れてっておまわりさん!」


息を切らしながら顔を真っ赤にして甲高い声で喚く保健室の先生。そこで警官が間を割るように口を開いた。


「たしかにこの男の子が言うように緊急避難が成立すると思われる。監視カメラを確認するまでもないし、そもそも今の感じを見ていればどちらが信用できるかは明らかです」


保健室の先生は歯軋りをしながら荒い息を立てている。


「この女の子の保護者に連絡をして迎えに来てもらいましょう。君はもう家に帰っていいよ。女の子を助けてくれてありがとう」


「なにを言ってるのあんた!はやく連れて行きなさい!」


「連れて行く必要はないと警官の私が判断した。以上だ」


「あんた訴えるわ......」


保健室の扉を閉めると彼女の声も聞こえなくなった。よかった助かった。この国ではあんなとんでもない主張が認められて逮捕されることだってある。自分の意見を言えてよかった。

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