18話緊急抜刀許可
まるで誰かに首を絞められているような感覚……サイコキネシスだ。
「私はね、これでもあんたを気に入っているの。だから殺さない」
バンピールによるサイコキネシスの力が解けて、直江は慌てて息を吸い込む。
「それでも次そんな甘いこと言ったら殺すわよ。吸血鬼になりたいんだったら仕事をしなさい。わかった?」
バンピールの言葉は本気だ。
もし従わなければ吸血鬼になるという願いなど叶わなくなるだろう。
なんて返答すればいいんだ……そう思っていると、ポケットにいれていた携帯が振動していることに気がついた。
見ると吾郎からの着信である。
出ていいのか確認をとるためにバンピールの目を見ると、問題ないというように餃子を口に入れている。
「もしもし。なんだよ吾郎……」
『直江!よかった!やっと繋がった!赤血刀は本局に連絡して駅のロッカーに届けてもらってる!一番端のボックスに入ってるから鍵の番号は2062……』
「お、おい。待てよ。何があったんだ」
『隣町の見習いが全滅した!あそこは元プロもいねえから今大変なことになってる。祭に行ってもらってるけど一人じゃ危ねえ。お前も援護してやれ!』
隣町の見習いが全滅……。
まさかと思って直江がバンピールを見る。
「うちのシュワちゃんをただのカテゴリー3と思って甘く見てたら痛い目見るわよ。あのプロの子に忠告してあげたら?」
「大事になってるぞ……」
「大丈夫よ。私はちゃんと本局の対応を頭にいれてる。どの基準で応援を呼ぶのか、その地区の警戒レベルがどの程度で上がるのかも全てね」
全てバンピールの仕組んだことなのか。
携帯の向こうでは吾郎が「おい聞いてんのかよ!」と叫んでいる。
「吾郎はどうするんだ」
「俺は行けねえ!急に俺の周りから死霊がわらわら沸いてきやがってよ。今逃げながら学校に置いてある赤血刀取りにいってるところだ!」
「だ、大丈夫なのかよ」
「ザコだから気にすんな!それより四ノ宮にも連絡がつかねえ。お前だけでも早く行って……くっそ。こっちもいやがったか!」
おらあ!という掛け声と共に通話が切れる。
急いで直江は飲み屋を飛び出した。
「返事は結果で答えてもらうわよ」
バンピールも最後の餃子を食べ終わると立ち上がる。
会計の時に店員の前で指を鳴らし「あんたが全部払いなさい」と言って店を出た。