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爆弾魔な傭兵、同時召喚された最強チート共を片っ端から消し飛ばす  作者: 結城 からく
第3章 裏切り者と致死の凶弾

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第97話 爆弾魔は召喚者を拉致する

 車内を強い揺れが襲う。

 軽い浮遊感を伴って、視界が斜めに傾いた。

 俺は反射的にブレーキを踏むも、ゴーレムカーは制御を失って建物に衝突した。

 何枚かの壁を破り、室内の家具を壊しながら止まる。

 ハンドルにぶつけた額を撫でつつ、俺はゆっくりと顔を上げた。


「大丈夫か?」


「……ええ、問題ないわ」


「わたくしも、平気でございます」


 アリスとネレアから反応が返ってくる。

 幸いにも二人は軽傷だった。

 打撲くらいはできているかもしれないが、その程度は魔術ですぐに治癒できる。

 ネレアに至っては分身なので、仮に死のうが問題ない。


「今度のアップデートはエアバッグをつけよう。必須事項だ」


 俺はショットガンを片手にゴーレムカーを降りる。

 舞い散る砂と埃に、黒煙がブレンドされていた。

 催涙効果を持たせなくてよかった。

 俺はそれらを手で払いながら軽く咳払いする。


「ん?」


 今になって気付いたが、頭と胸がきりきりと締め付けられるように痛い。

 この感覚には覚えがある。

 契約違反を警告するサインだ。

 さっきの正面衝突が原因なのだろう。

 ミハナを殺すつもりは無かったが、判定的にはイエローカードだったらしい。

 まったく困ったものである。


 散乱する瓦礫を跨ぎながら大通りへと出る。

 ミハナの車両は、向かい側の建物に突っ込んでいた。

 ほぼ全壊してスクラップ状態になっている。

 車両がゴーレムカーのような装甲を持たないため、ダメージが大きかったみたいだ。

 俺はショットガンを向けながら歩み寄る。


「……ふむ」


 ミハナは運転席でぐったりとしていた。

 頭から出血し、衝突で変形した車体に挟まれている。

 身体の何箇所かは骨が折れているだろう。


 俺は銃口でミハナの頬をつつく。

 反応は無い。

 気を失った演技ではないようだ。


 俺は車体を蹴って歪ませ、作った隙間からミハナを引きずり出した。

 そのまま彼女を肩に担ぎ上げてゴーレムカーへと戻る。

 ドアを開けて後部座席にミハナを放り込み、布を巻いて目隠しをする。

 ついでに手足の関節を外し、縄で縛っておいた。


 仕上げとして、荷物を漁って注射器を取り出す。

 それをミハナの背中に注射した。

 こいつはアリスの調合した麻酔だ。

 しばらくは眠ってくれるし、身体の自由が利かなくなる。

 目が覚めた途端、妙な真似をされるということもない。


 ミハナへの処置を済ませた俺は、運転席に乗り込んだ。

 バックして大通りに出て、人々が遠巻きに眺めるのを横目に走る。

 隣に座るアリスは、小さく拳を握った。


「ついにやったわね」


「ああ、最高だ」


 アリスとハイタッチを交わす。

 後部座席では、ネレアも嬉しそうにしていた。

 これは間違いなくコンビネーションの勝利である。

 全員が活躍したが故に掴み取れた結果だった。


「ところでジャック様。結局、この子は何の能力を持っていましたの?」


 空気が落ち着き始めたところで、ネレアが思い出したように質問してきた。

 そういえば彼女には説明していなかった。

 別にあえて隠すことでもない。

 ちょうどいい機会なので、ネレアにも伝えておこう。


 都市内を安全運転で進みつつ、俺は彼女の疑問に答える。


「これはあくまでも推測だが、未来予知――或いはそこから発展した能力だ」


「未来予知、ですか……」


「ああ、とんでもない力だろう?」


 俺は鼻を鳴らして笑う。

 ミハナの持つスキルが未来予知だと仮定すると、これまでの彼女の行動に説明が付く。


 まずは最初の決闘だろう。

 ミハナは俺がどういった攻撃を行い、自身が殺されるかを予知したのだ。

 その運命を回避するため、彼女は最適な行動を取った。

 ただ予知するだけでは意味がないので、各行動の成功率を弄るような力もあるに違いない。

 彼女の技術ではありえない動きを何度も目撃してきた。


 俺の【爆弾製作 EX++】も確率操作の一種である。

 本来なら失敗する爆弾でも確実に作ることができるスキルだ。

 他の召喚者が類似能力を持っていても不思議ではあるまい。

 これが超絶的な回避能力の正体であった。


 ミハナの能力の欠点が判明したのは、学園長室でのやり取りだ。

 具体的には、俺が平気で殴る蹴るの暴力を振るえた点である。

 彼女の性格からして、可能ならまず躱すはずだ。

 スキルが使用されているのなら、決闘の時のように攻撃を当てられない。


 あの時のミハナは慢心していた。

 契約に縛られた俺が攻撃できないと勘違いして、調子に乗っていたのだ。

 つまり能力を起動していなかった。

 このことから、ミハナのスキルは常時発動型でないことが確定した。


 スキルの効果をほぼ確信し、細かな制約に気付いたのは、彼女の狙撃を試みた時であった。

 前段階で宿に催涙ガスの爆弾を仕掛けた際、ミハナは宿へ入る直前に気が付いた。

 あの位置からだと、設置された爆弾はまず発見できない。

 それにも関わらず逃げ出したのは、催涙ガスで苦しむ自身の姿を予知したのだろう。


 麻酔弾の狙撃も、彼女は撃たれる未来を知って屋内に退避した。

 どちらも被害を受けるおよそ一分前に察知していた。

 状況的にミハナは警戒心を強めており、スキルを温存せずにフル活用していた。

 それで一分前に気付いたということは、予知できる未来はそこまでが限界ということである。

 例外はあるかもしれないが、標準的な仕様さえ分かればそれでいい。


 さらに決闘時、ミハナは瞬間的な回避を連続で行っていた。

 一分以内の事象なら自在に予知し、最適行動で回避ができるという解釈で間違いないだろう。

 改めて考えると恐ろしい能力である。


 それと狙撃の際には俺の位置には気付いていなかった点から、予知の範囲は狭いらしい。

 たぶん自分の身に何が起こるかだけを把握している。

 すなわち未来を認識できると言っても、完璧な全知全能ではない。


 だから今回も、ネレアの分身による監視を欺けなかったのだ。

 遠くからただ見ていただけで、ミハナ自身には干渉していないからだ。

 彼女はそれを感知できず、防ぐ術も持たない。


 加えて今回のカーチェイスでさらなる弱点を露呈した。

 未来予知は視覚に依存しているという点だ。

 より正確な表現をするなら、ミハナは未来の自分を客観視している。

 死角からの攻撃もピンポイントで回避できていることから明白だった。


 視覚依存については、ネレアの妖術に惑わされ、俺達のもとまで誘導されたのが最たる証拠である。

 術にかかったことに気付かなければ、予知で観る光景と実際の光景に齟齬が生じる。

 だから、あのような暴走運転をしてしまったのだろう。

 混乱して予知の精度が下がったものと思われる。


 その弱点を利用したのが、最後の発煙タイプの爆弾である。

 正常な予知ができなくなったところに、黒煙で視覚を完全に潰させてもらった。

 あの半壊した車両で突進したのだ。

 さぞかし車内に黒煙が入り込んだことだろう。

 結果的に正確な予知はさらに困難なものとなる。


 黒煙の充満する中では、何をすべきか分からない。

 ミハナの求める情報が観えないからだ。

 たとえゴーレムカーと衝突する未来を予知しても、その状態では対処のしようがない。

 黒煙から逃れた時には、建物に突っ込んで気絶するという寸法である。


 もしも予知が視覚とは関係のなかったとしても、その際は別の手段で追い込むつもりだった。

 大勢に影響はない。

 今回は最も確率の高かった予想がぴたりと当たってくれた形だ。


 総括すると、ミハナの能力とは「一分以内の未来を観て、最適行動によって回避する」というものだ。

 本人の口から聞いていないので仮説だが、おおよその内容は的中しているだろう。

 推論が正しかったからこそ、対策が成功して彼女を捕縛できた。


 それにしても、完全反射・時間停止に続いてぶっ飛んだ能力だと思う。

 異世界人が重宝されるのも頷ける話だ。

 もし俺が報復を起こさなかったら、勇者召喚を果たした帝国は相当な戦力を確保していたことになる。

 周辺諸国が知ったら、胸を撫で下ろすかもしれない。


 爆破で消し飛んだ帝都を思い出していると、ネレアが控えめに肩を叩いてきた。


「あの、ジャック様」


「何だ」


「この子がこのような代物を持っておりました」


 ネレアが見せてきたのは、小さな水晶だった。

 中にびっしりと術式が刻み込まれている。

 それがミハナの持ち物らしい。


 水晶を目ざとく観察したアリスが見解を述べる。


「遠話用の魔道具ね。対となる水晶としか遠話できないけれど、会話内容を傍受されにくいものよ。魔力を流せば起動できるわ」


「今すぐに起動させてくれ」


 俺は即座に指示をする。

 ミハナが通信機もどきを持っているとすれば、相手は限られる。

 それは俺が話したい人物だろう。


 水晶に手を置いたアリスが、そこへ魔力を流す。

 内部の術式が発光し、水晶全体が淡い光を帯びた。

 数秒ほど待つと、男の声が聞こえてくる。


『急に遠話が切れたが無事か。ジャック・アーロン達からは逃げ切れたのか?』


「…………」


『おい、どうした。返事をしてくれ』


「……ハハッ」


 沈黙し続けるつもりが、心配そうな声のせいで笑ってしまった。

 現状を知る身からすれば滑稽な台詞である。


『ま、まさかお前は……ッ!』


 水晶の声が動揺する。

 誰と話しているかようやく気付いたらしい。

 俺はとびきりの笑みを浮かべる。


「ハロー、親愛なる賢者さん。ちょいと話があるんだが、聞いてくれるかい――」

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― 新着の感想 ―
未来予知が1分だとしたら、帝都丸ごと吹っ飛ばす爆発 からは逃げられんだろ 時間停止持ちが抱えて逃げてくれたのかなぁ
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