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爆弾魔な傭兵、同時召喚された最強チート共を片っ端から消し飛ばす  作者: 結城 からく
第3章 裏切り者と致死の凶弾

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第84話 爆弾魔は夜闇の来訪者と対面する

 魔術学園の一悶着の後、俺達は樹木都市で三日間の観光をした。

 ここには様々な施設があるので飽きない。

 支配する賢者の影響なのか、あちこちに魔術が使われていた。

 物品の品揃えも魔術関連に特化している。


 掘り出し物がたくさん見つかったようで、アリスはご満悦であった。

 はっきりと表情で分かる程度には上機嫌だった。

 彼女曰く、城塞都市ではどうしても手に入りづらいものがあったらしい。

 賢者が独自の商売ルートを掴んでいるのだろう。

 これだけ喜んでくれるのなら、また買い物に来てもいいかもしれない。


 そして驚いたことに、樹木都市にはスラムは存在しなかった。

 浮浪者はステータスを精査され、才能ある者は身分関係なく登用されるのだ。

 そこから大成して優秀な魔術師に至った者もいるらしい。

 突出した才能が無い者にも、何らかの仕事を与えているのだという。


 魔術学園に通わせるパターンも多く、かかる費用はすべて賢者が出しているそうだ。

 あの施設には、そういった受け皿としての機能があったらしい。

 基本の授業料はほとんど無償とのことで、住民からの反応も良好だった。


 無論、これがただの慈善事業かといえば、決してそうではない。

 地道な根回しの結果、樹木都市には犯罪組織もないのである。

 すべて賢者の支配下にあり、不純なものは排されていた。


 賢者は潔癖のきらいがある。

 ただ、自らの治める都市と真摯に向き合っていた。

 彼の支配領域は、概ねここと同じような場所なのだろう。


 俺のような人間にとっては住みづらい。

 もう少し清濁を許容できる場所の方が居心地がよかった。

 まあ、大多数の人々にとっては暮らしやすいと思う。

 これだけ生活基盤が整い、統治する者が善人であることも珍しい。


 樹木都市については、あまり爆破したくないというのが本音だった。

 爆破するには惜しい場所である。

 派手に吹き飛ぶ様子を見たい気持ちもあるが、ここは損得勘定で動くべきだろう。

 賢者を殺害するにしても、あそこは残した方がいい。


 樹木都市の観光の後は、そのまま城塞都市に帰還した。

 そして、引き続き都市開発を進めていった。

 資材を集めての大規模な工事だ。


 まず樹木都市の構造を参考に、車道と歩道を区切って舗装した。

 これで交通状況は改善された。

 いつも渋滞して面倒に思っていたのだ。

 交通状況の改善については、都市に暮らす人々からも要望が多かった。

 その声に応えた形になる。


 ただし、今のままだと道路が狭い。

 なんとか往来分の二車線と、両端の歩道のみだった。

 いずれさらなる改良を施したい。


 それと地下鉄もほしい。

 帝都で列車と駅を見かけたので、技術的には可能なのだろう。

 都市内を循環させるだけでも便利だ。


 スラムの扱いについては保留している。

 樹木都市のように、何らかの形で活用したい。

 あそこには俺の支配下にいない犯罪者も多かった。

 何らかの形で解決する必要があるだろう。


 都市開発の余地はまだまだ残されている。

 地道に進めていかなければ。

 いずれ俺とアリスの目的も叶えられるはずだ。


 城塞都市の外での変化と言えば、黒壁都市の跡地が大きいだろう。

 専用の施設を建造して、鉱石の採掘を始めたのである。

 その一部を使い、都市核の廉価版の製造にも着手していた。

 まだ設計段階だが、雇い入れた魔術師達とアリスが協力して考えている。


 本物に比べれば出力は低くなるそうだが、製造自体の見通しはついたらしい。

 いくつか設置すれば、都市全体の魔力の供給とコントロールが可能になる。

 設置までに膨大な資金がかかるものの、その恩恵を考えると安い。

 強力な爆弾を作るための基礎部分としても応用できるため、何とか完成するように祈るばかりであった。


 一方で兵器開発も順調に進んでいた。

 研究職の魔術師から爆弾のアイデアを募集している。

 それを俺が実践するのだ。

 使える手札は多いに越したことはない。


 最近の成果だと、炎と雷を融合させた精霊爆弾を気に入っている。

 赤い稲妻を放射して周囲の物体を焼き飛ばす代物だ。

 単純に二属性の精霊石を併用する場合より強力で、融合させるのにアリスの手を借りることになるが、極めて実用性の高い爆弾である。

 精霊石の融合技術は確立できたため、今後はさらに種類が増えていくと思われる。


 他にも様々なラインナップを揃えている最中であった。

 性能的にイマイチなものも少なくないが、別にそれはそれで構わない。

 発展の過程に失敗はつきものだ。

 俺の場合、スキルの恩恵によって致命的な失敗が存在しない。

 被害を考えずに爆弾を製造できるのは大きい。


 今後の展開次第では、二人の代表と一人の召喚者を相手にすることになる。

 賢者は俺と戦いたくないようだが、彼女を引き渡すつもりもないらしい。

 なんとも欲張りな男である。

 ミハナ殺害を決行するのなら、おそらく衝突は免れない。

 場合によっては都市単位での戦争が待っている。

 今のうちに戦力を強化しておいた方がいい。


 とは言え、まずは契約書の拘束力をどうにかしなければならなかった。

 このままではミハナを殺すことができないのだ。

 暴力自体はいくらでも振るえるがトドメを刺せない。


 無策で仕掛ければ、俺は必ず敗北する。

 向こうから何のアクションもない期間がチャンスだ。

 アリスと相談して可能な限りの対策を打つつもりである。




 ◆




 そんな日々を過ごすこと一カ月。

 深夜、私室で寛いでいると、背後に妙な気配を覚えた。

 アリスではない。

 彼女はノックして部屋に入ってくる。

 他の部下も同様であった。


 ソファに寝転がる俺は、そっと振り返る。

 部屋の端にひっそりと靄が佇んでいた。

 目は見えないが視線を感じる。


 エウレア代表の一人、暗殺王だ。

 目を離せばいなくなりそうな気配だが、確かに存在していた。


 俺はソファから立ち上がると、困ったように肩をすくめる。


「おかしいな、来客の予定は無かったはずだが」


 そもそもどうやって侵入したのか。

 この私室までは、厳重な警備が敷かれている。

 微細な魔力も感知できるようになっていた。


 何の異常も発生させずに侵入するのはほぼ不可能だ。

 だが、現実として奴は前方にいた。

 隠密能力が高すぎる。

 暗殺王の名は伊達ではないようだ。


「何も用意していなくてすまないね。せっかくだし、一緒に食事でもするかい?」


 俺は喋りながら懐の武器を意識する。

 相手の目的が分からない。

 俺に何らかの要件があるのは確かだ。


 ミハナを守るために暗殺しに来たか。

 彼女は暗殺王の配下だ。

 納得のいく理由ではある。

 俺の懐柔を狙う賢者より、よほど合理的だった。


 暗殺王については情報が極端に少ない。

 調べても何も分からないのだ。

 戦闘スタイルを始め、あらゆることが謎に包まれている。

 今の時点では、あまり戦いたくないのだが、果たしてどう動くか。


 俺の懸念をよそに、暗殺王は微動だにしない。

 不気味なほど静かだ。

 三十秒ほどの沈黙の末、暗殺王は厳かに話し始める。


「……そう身構えるな。今宵は争う気はない。汝に依頼をしに来た」

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