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爆弾魔な傭兵、同時召喚された最強チート共を片っ端から消し飛ばす  作者: 結城 からく
第3章 裏切り者と致死の凶弾

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第77話 爆弾魔は非力な召喚者を追い詰める

 脳内に地図を描きながら、俺は迷路を進んでいく。

 かなり入り組んでいるが、これといった罠はない。

 ただ複雑なだけの通路が続くだけである。

 その辺りはフェアに造られているらしい。

 ミハナを探しつつ俺は考え事をする。


 賢者と暗殺王の態度が気にかかるのだ。

 ミハナを殺されたくないというのに、二人は決闘という形式に抵抗はなかった。


 その理由は一つ。

 決闘で勝利するのはミハナだと信じているのだ。

 故に俺に一時的に殺害権利を渡したのだろう。


 大した信頼だと思う。

 彼らは俺の素性や経歴を知った上で、ミハナなら逃げ切れると考えたのだから。

 ただの過信ならいいが、そうではないはずだ。


 ミハナがどのような能力を持っているかは気になる。

 賢者のもとで研修生をしているということは、魔術を使える可能性がある。

 暗殺王の配下なので、隠密能力を有するかもしれない。

 そして、召喚者として強力なスキルを持っている。


 いずれも懸念事項だ。

 他の召喚者は、固有のスキルを主軸に動くばかりだった。

 今回も同じだとは考えない方がよさそうだ。

 少なくとも俺より多芸なのは確かだと思われる。


 ただ、それほど心配はしていなかった。

 再会したミハナの様子を見るに、彼女はまだ一般人に毛が生えたような状態だ。

 まだ人殺しを経験していない目をしていた。

 俺に対する復讐心もなく、怯えてばかりだった。

 戦いにも慣れておらず、決闘そのものにも乗り気ではなかった。


 帝都爆破を生き残っていることから多少の行動力はあるのだろうが、それでも俺を殺し得る存在とは考え難い。

 きっとエウレアの代表達に甘やかされてきたのだろう。

 精神面という観点では、今までの召喚者の中で最も弱い。

 殺し合いになっても負ける気がしなかった。


(それにしても……広くないか?)


 俺は足を止めて辺りを見回す。

 ミハナとまったく遭遇することができない。

 迷路自体が、明らかに元の部屋の広さを超えているようだ。

 歩幅で測っているので間違いない。


 空間でも歪めているのだろうか。

 あの賢者ならやりかねない。

 魔術の万能性を俺はよく知っている。

 卓越した力さえあれば可能だろう。


 既に開始から二分ほどが経過している。

 砂時計はもう少しで半分を切るところだった。

 少し急いだ方がいい。


 そこで俺はふと閃く。

 何も律儀に迷路を彷徨う義理なんてないのだ。

 好き勝手にショートカットすればいい。


 決心した俺は壁に蹴りを入れた。

 壁の表面に亀裂が走り、音を立てて崩れる。

 意外と脆い。

 これなら何百枚だろうが平気でぶち破れそうだ。


 俺は意気揚々と壁の向こうへ出る。

 迷路を壊してはいけないというルールは無かった。

 この調子でノンストップで探そうと思う。

 気配を探れば、確実にミハナを見つけられるだろう。


 壁の破壊を導入したことで、探索ペースは飛躍的に向上した。

 長年の戦闘経験で培った勘に従って移動していく。


「オラァッ!」


 タックルで何枚目かも分からない壁を突き破った。

 肩に落ちた瓦礫を払い、向こう側の通路へ踏み出す。


「ひいっ!?」


 横合いから細い悲鳴が上がった。

 見ればミハナが佇んでいる。

 青い顔の彼女は、ゆっくりと後ずさろうとしていた。


 少し前から気配を感じていたのだ。

 その感覚は間違っていなかった。

 俺は微笑みながら歩み寄る。


「ビンゴだ。意外と逃げられたじゃないか」


「こ、来ないで……」


 ミハナはよろよろと後退する。

 そこに敵意は感じられない。


 俺は拳銃を片手に肩をすくめた。


「ははは、随分と嫌われたものだ。だが、残念ながらお前を殺すのは決定事項だ。自らの過ちを神に懺悔するといい。その時間くらいはくれてやるよ」


 そう言いながら俺は発砲する。


「わ、わわっ」


 ほぼ同時に、ミハナが不意に首を傾けた。

 弾丸は彼女の耳元を通過し、後ろの壁にめり込む。

 その結果に俺は片眉を上げる。


「おっと、ラッキーだな。寿命が二秒だけ延長した」


「ひ、ひいぃ……!」


 再び発砲すると、ミハナは頭を抱えてしゃがんだ。

 弾丸はすれすれのところで躱される。


「…………」


 俺は無言で拳銃を撃とうとする。


「あ、ぶな、い……っ」


 同じタイミングでミハナが壁にもたれかかった。

 最小の動きで射線から外れている。


 俺は避けにくい胴体を狙って撃った。

 ミハナは防御魔術を展開させた。

 弾丸はガラス質の盾を貫通するも、ほんの僅かに軌道がずれる。

 そのずれのせいで、弾丸はミハナの脇を抜けていく。

 あと一インチでも横なら命中していた。


 俺はさらに拳銃を連射する。

 ミハナは情けない動きながらも、紙一重で弾丸を避けていった。

 何かの冗談のように当たらない。

 確信した攻撃を何度もやり過ごされている。


(――動きを完全に読まれているな)


 俺は拳銃を下ろす。

 明らかにおかしい。

 一部の動きは、弾丸の軌道まで計算していなければ不可能なものだった。

 ただの偶然ではない。

 ミハナは何らかの根拠を以て回避している。


 しかし、彼女の動きは素人のそれだ。

 多少は鍛えているようだが、所詮は新兵未満である。

 誤差の範囲と言えよう。

 どれだけ過大評価したとしても、俺の射撃には影響しないレベルだ。


 それにも関わらず、ミハナは弾丸を避け続けている。

 不可解な現象であった。


 とは言え、それを考察する暇はない。

 結局は殺せればそれでいいのだ。

 何らかのトリックを使っているとしても限度がある。


 そう考えた俺が再び照準を合わせようとすると、その前に床が隆起した。

 俺とミハナまでの道を阻むように壁が生成される。

 それが風船のように膨らみ、破裂した。

 土煙が舞い上がって視界を塞ぐ。


「魔術か。小癪な真似をしてくれるじゃないか」


 鼻で笑った俺は、土煙の向こうを狙って拳銃を連射する。

 いずれも当たった手応えが無い。

 俺は土煙の中を突き進む。


 そこには誰もいなかった。

 壁に穴が開いており、何かの液体で溶かしたような痕跡がある。

 これも魔術だろう。


 穴の向こうから足音がした。

 何度か転びながらも遠ざかっている。

 僅かな時間稼ぎを利用して逃走したらしい。

 窮地においても上手く立ち回っている。

 とても素人とは思えない。


「まったく、困ったレディーだ」


 俺は嘆息しながら拳銃をリロードする。


 どういうわけか、ミハナは超絶的な回避能力を持っているようだ。

 おそらくあれが召喚者としてのスキルに違いない。

 素人同然の動きですべての射撃を避けてみせたのだから、普通の事態ではなかった。


 ここまでのやり取りから考えるに、遠距離攻撃は相性がよくない。

 肉弾戦に持ち込むのが最適だ。

 回避を行えない間合いで拳を叩き込む。

 俺のレベル補正があれば、頭部をプリンのように潰せるだろう。


 たった一発でいいのだ。

 向こうの能力の正体が分からないが、それを上回る暴力を披露してやろう。

 射撃を外しまくったフラストレーションを燃料に、俺はミハナの後を追いかけた。

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