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爆弾魔な傭兵、同時召喚された最強チート共を片っ端から消し飛ばす  作者: 結城 からく
第3章 裏切り者と致死の凶弾

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第71話 爆弾魔は権力戦争を征する

本日より三章開始です。

よろしくお願いします。

「――というわけで、勢力の安定は順調ですねぇ。ジャックさんに逆らう愚か者はほとんどいなくなりましたよ、ええ。いやはや、味方でよかったと安心していますよ」


 便利屋レトナは、低姿勢な態度で報告を終える。

 その顔にはいつも通りの愛想笑いがあり、彼女の胡散臭さを後押ししていた。


 彼女の隣には助手のハックがいる。

 ハックは屈強な肉体で仁王立ちしていた。

 寡黙な彼はいつも無言だ。

 声を聞いた記憶がない。


 椅子に座る俺は、書類から目を離して便利屋の二人を見やる。


「ご苦労。いつも助かるよ」


「いえいえ、とんでもありません! 他でもないジャックさんのためですからねぇ。私程度でよければ、誠意を以て働かせていただきますよ」


「ハハッ、軽い言葉だな。あんたが忠誠を誓うのは金だろう?」


「……はて。それはどうでしょうねぇ? 少なくとも、ジャックさんへの協力は惜しまないつもりですからご安心ください。ではでは」


 レトナは最後まで飄々とした調子で退室した。

 ハックも一礼して部屋を出る。


 一人になった俺は、書類を投げ捨てて欠伸を洩らした。

 窓の外に目を向ける。


 あちこちで工事が行われる街並みが広がっていた。

 絶景とは程遠いものの、これが俺の所有物と考えると悪くない気分である。


 ドルグの死から三カ月。

 俺とアリスは、城塞都市を拠点に日々を過ごしていた。

 吹聴したわけではないが、俺達がドルグを殺したことが周知され、自然と成り上がってしまったのだ。

 今では開き直って権力を存分に利用している。


 この建物も進呈されたものだ。

 ミノルとの戦いで爆破した拠点跡に新築したのである。

 五階建てのオフィスで、都市のシンボル的なものとして認知されている。


 この三カ月でトラブルがなかったかと言えば、それは嘘になる。

 長年に渡って頂点だったドルグが突然死んだのだ。

 当然、その席を狙う者が多発した。

 虎視眈々と機会を窺っていた連中も、ここぞとばかりに動き出した。

 結果、ドルグの支配域だった各都市にて、次々と戦争が勃発する羽目になった。


 俺とアリスは、その風潮に率先して便乗した。

 敵対勢力が見つかればこちらから出向き、問答無用で殲滅したのである。

 寝言を喚いて盛り上がる連中を始末するだけだ。

 何の気兼ねもなく吹き飛ばすことができる。


 バーガー片手にこなせるような仕事であった。

 新型の爆弾やゴーレム兵器を試すいい機会にもなった。

 成り上がりを企んだ連中には、感謝しているくらいである。

 そういった経緯を挟んで、俺達は近隣の都市のトップに君臨することになった。


 余談だが、便利屋の二人は俺が専属で雇っている。

 そのため現在の二人は厳密には便利屋ではない。

 俺のために動く諜報部員だ。

 便利屋時代から後ろめたい仕事にも手を出していたそうなので、その辺りの実力に関しては信頼している。


 当初は俺の配下となることを渋ったレトナだが、具体的な給料の額を伝えると目の色を変えて了承してくれた。

 まったく素直な女だ。

 性格的には受け付けないが、ビジネスにおいては嫌いではない。

 レトナは狡猾だ。

 強欲だが身の程を弁えている。


 現状、俺を裏切ることはほぼないだろう。

 俺にはドルグを殺したという実績がある。

 敵対すれば命がないということは、レトナなら言わずとも理解しているはずだ。

 今後も有用な駒として働いてもらおうと思う。


「さて、こっちの進捗はどうかな」


 俺はテーブルに積み上げた書類を手に取る。

 そこには送還魔術の研究内容について記載されていた。

 冒険者ギルドの魔術師を雇い、何とか魔術を作れないかと試行錯誤させているのだ。

 基本的にはアリスが主任となって研究を進めており、専用の建物で様々な実験を実施している。


 元の世界への帰還は、俺の主目的である。

 異世界も満喫しているが、やはり向こうでの生活も捨てがたい。

 ドルグの部下だった頃はなんだかんだで進められなかったが、今は豊富な資金と人脈、資材がすべて揃っている。

 帰還手段を探さない手はない。


 書類によれば、送還魔術はまだ実現できそうにないらしい。

 やはり世界を渡るのは並大抵のことではない。

 初心者レベルだが俺も魔術を勉強したので、その難しさは分かる。

 焦って解決する課題でもない。

 資金提供だけを続けて、成果は気長に待とうと思う。


 ちなみに並行して世界滅亡の方法も極秘で考案中だった。

 俺のスキルを主軸に、アリスが計画を練っている。

 ただ、こちらも難航している様子だった。


 当たり前だが、世界を滅ぼすのは難しい。

 アリスの目的は、究極の錬金術師になることだ。

 人類死滅という偉業を成し遂げ、後の世に彼女を超える術者が生まれないようにしたいのだという。


 つまり、あらゆる生物と文明を根こそぎ破壊する必要があった。

 相当にハードルの高い殺戮なのは言うまでもない。

 送還魔術と同様、しばらくは実現しないだろう。

 絶対に無理だと言い切れないのは、アリスが本気で取り組んでいるからだ。

 彼女なら手が届きかねない。

 俺が帰還する前に実行しないようにだけ見張っておかなければ。


 危険な相棒の顔を脳裏に浮かべつつ、俺は別の書類に手を伸ばす。

 そこに記されているのは、スカウト候補のラインナップだ。

 降伏して傘下に入った組織には、変わった能力を持つ人間を見つけたら報告するように命じている。

 表向きは味方として引き込むのが目的だが、実際は違う。


 端的に述べると、生き残りの召喚者を探しているのだ。

 召喚者は例外なく強力なスキルを持っている。

 能力を駆使して過ごしているのなら、嫌でも目立つだろう。

 そこから傘下の組織の目に留らないかと期待している。


 今はドルグの支配領域だった都市群しか捜索できていないが、いずれ国外にも網を広げたいと思っている。

 これまでに二人の召喚者を殺すことができた。

 残りだって見逃すつもりはない。

 徹底的にやり通すつもりだ。


 鼻歌交じりに書類をめくっていると、部屋の扉がノックされた。

 扉の向こうから聞き慣れた声がかけられる。


「入っていいかしら」


「もちろん構わないさ」


 部屋の扉が開いた。

 我が相棒であるアリスが姿を見せる。

 彼女は俺の向かい側に座ると、淡々と話を切り出した。


「良い報告と、少し悪い報告があるわ。どちらから聞きたいかしら」


「良い報告から聞こう」


 本当は後者が気になるが、急いで聞く類ではないだろう。

 もし緊急の報告なら、アリスが真っ先に言うはずだ。


 少し姿勢を正したアリスは、良い報告とやらを述べる。


「ドルグの城があった街――ジャックさんの言い方だと黒壁都市の地下に、巨大な鉱山が見つかったそうよ。稀少な魔鉱石や精霊石が採れるみたい。都市核の暴走で地脈の環境が変異したようね」


「そいつは素晴らしい。日頃の行いがいいおかげだな。それで、少し悪い報告は何だ?」


 俺が尋ねると、アリスは一通の手紙を取り出した。

 赤黒い蝋で封をしてある。

 彼女はいつものトーンで告げた。


「エウレア代表の三人から招待よ。ジャックさんと会いたいみたいね」

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