表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
爆弾魔な傭兵、同時召喚された最強チート共を片っ端から消し飛ばす  作者: 結城 からく
第2章 巨竜人と無法の国

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

67/200

第67話 爆弾魔は巨竜人に挑む

 屋敷を後にした俺は、奪ったバイクで通りを爆走していた。

 一直線にドルグの城を目指していく。


「最高のドライブだなァ! アドレナリンで脳が沸騰しそうだぜ」


「ジャックさん、後ろから追手よ」


 そばを飛行するアリスから警告される。

 見れば敵の車両が接近しつつあった。

 運転席と荷台に一人ずつだ。

 荷台の男は俺を狙ってライフルを構えている。


「アリス、先行して障害物を破壊してくれ。追手は俺が片付ける」


「ええ、分かったわ」


 指示に頷いたアリスは、加速して爆撃を開始する。

 彼女の放った魔術が、通りに停められた車両や馬車を破壊していった。

 俺はバイクを左右にずらして、こじ開けられた隙間を走り抜ける。


 その間に敵車両が追いついてきた。

 俺のすぐ後ろまで迫ってくる。

 荷台の男が怒気を孕んだ声で叫んだ。


「ジャックアーロン! 止まれェッ!」


「大人しく従うと思うか?」


 軽口を返すと、即座に射撃された。

 俺は蛇行運転で躱す。

 僅かに減速したことで、車両が隣を並走してきた。


 俺は荷台の男に話しかける。


「なぁ、俺を殺したらいくら貰えるんだ?」


「貴様に教える筋合いなどない!」


「ケチなこと言うなよ。自分の首の値段が知りたいだけなんだ」


「黙れ!」


 荷台の男のライフルが俺の頭を狙う。

 それを見た俺は、バイクの座面に足をかけて跳躍した。

 弾丸が頬を掠めるのを知覚しつつ、向こうの車両にしがみつく。


 無人のバイクはバランスを崩して建物に衝突した。

 それを横目に、俺は腕を伸ばして荷台の男の首を掴む。


「危ねぇな。怪我したらどうするんだ」


「ぎゃ、あがっ……!?」


 荷台の男がライフルを取り落とす。

 彼は絞まる首をどうにかしようと暴れる。

 無論、膂力の差でそれは叶わない。


 俺は力を込めて首を握り潰した。


「――ごっばぉっ」


 男は吐血し、赤い泡を噴きながら悶絶する。

 俺は痙攣する男を投げ捨てた。

 地面をバウンドした男は、瞬く間に小さくなる。

 あれはもう助からない。


 俺は運転席を覗き込む。

 今度は青ざめた男と目が合った。


「き、貴様……っ」


「強制ヒッチハイクだ。ただしお前は降りろ」


 窓ガラスを拳で突き破り、男の髪を掴む。

 そのまま車外へ無理やり引きずり出した。


「あ、ああがああああっ」


 ガラスの刺さった男が、血塗れになって叫ぶ。

 うるさいのでそのまま放り投げた。

 男は露店に正面衝突し、鮮血をぶちまけて通りを濡らす。

 あれはグロい。

 即死なのが救いだろう。


 俺は無人の運転席に乗り込み、ハンドルを握って車両を制御する。

 そこからアクセルを一気に踏み込んだ。

 ゴーレムカーと比べると馬力が貧弱に感じる。

 まあ、あのモンスターマシンが基準なのは些か酷だろう。

 この車両も十分に高性能である。


 俺は運転に集中して城を目指した。

 通りの邪魔な物は、先行するアリスが魔術の爆撃で吹き飛ばしてくれる。

 俺は燃える残骸を走破するだけなので楽だ。

 どこまでも頼りになる相棒である。


「おっ、見えてきたな」


 やがて城の全体が望める位置まで接近できた。

 ここからはほぼ直進だ。

 万が一にも迷うなんてことはない。


 しかし、通りを塞ぐように人間の壁ができていた。

 ここからだと二百ヤードくらいは先か。

 組織の人間が集結している。

 彼らはライフルを持って列を為していた。


 俺は素直に感心する。


「結構な顔ぶれじゃないか。俺は人気者らしい。それっぽいサインを考えておけばよかったよ」


「どうやって突破するの? 橋も上げられているわ」


 アリスがすぐそばを飛びながら問いかけてくる。


 彼女の指摘通り、城の正門に繋がる橋が上がっていた。

 遠目にもはっきりと分かる。

 あれでは車両が通れない。

 堀の下に落下し、鮫もどきに食われることになる。

 俺の襲来を察知してあの状態にしたのだろう。


(そうなると侵入経路は一つだ)


 俺は車両のドアを蹴り外した。

 吹き込む風を感じながらアリスに提案する。


「連中に付き合ってやる義理もない。ショートカットをしよう。ほら、あの辺りなんてがら空きだ」


「なるほど、理解したわ」


 俺がとある箇所を指差すと、アリスはすぐに頷いた。

 いつものことだが察しが良い。

 これだから信頼できる。


 俺は助手席に手持ちの爆弾をいくつか置いた。

 それらを放置して車外へ身を乗り出す。


 そのタイミングで、通りを塞ぐ連中が一斉射撃を始めた。

 車体に次々と弾丸が当たる。

 貫通して車内に飛び込んでくるものもあった。


「行くぞっ」


「来て」


 俺は座席を蹴ってジャンプした。

 差し伸べられたパワードスーツのアームを掴むと、強い力で引き上げられる。

 そのままアリスにぶら下がる形で上昇し始めた。

 俺達はあっという間に通りを塞ぐ面々を飛び越える。


「くそっ、奴らを狙えェッ! 狙うのだァァッ!」


 通りの連中が、慌てて狙いをこちらに向けてくる。

 すると、パワードスーツの防御魔術が展開して弾丸のシャワーを防ぐ。

 安定の万能ぶりである。


 俺は眼下の面々を眺めながら笑う。


「ハハッ、よそ見する暇はあるのかい?」


 数秒遅れて、乗り捨てた車両が連中を撥ね飛ばした。

 或いは勢いに任せて轢き殺す。

 あれだけ加速していたのだ。

 勝手に止まるはずもない。


 ついでに俺は手元のスイッチを押した。

 置いてきた爆弾が作動し、車両が大爆発と共に炎上する。

 俺達を撃ち落とそうと必死だった連中は、衝撃で吹っ飛んで無力化された。

 人間バリケードを突破した車両は、そのまま城の堀へ落下する。


 妨害を乗り越えた俺とアリスは、悠々と城に接近していった。

 俺は頃合いを見てアームから手を離した。

 屋根の上を転がって衝撃を緩和する。


 アリスは片膝を立ててド派手に着地した。

 俺のような配慮は一切せず、衝撃で屋根が陥没し、深い亀裂が何重にも走る。

 着地箇所が崩落する間際だ。


 その勇ましい姿に俺は拍手を送る。


「まるでスーパーヒーローだな」


「……褒め言葉なのかしら?」


「もちろん。皆の憧れってやつさ」


「それならいいけれど……」


 どこか困惑するアリスをよそに、俺は脳内に城の見取り図を構築した。

 何度も訪れて記憶しているので容易だ。

 ドルグの私室の位置をイメージしながら、俺は屋根の一角に爆弾を設置した。

 少し離れてから爆破すると、ぽっかりと穴が開いた。

 俺達はそこから城内へ侵入する。


「よし、ぴったりだな。計算通りってやつだ」


 落下すると、そこがドルグの部屋の入口であった。

 ここまで来たら躊躇うこともない。

 城内の人間が殺到する前に、さっさと目的をこなしてしまおう。

 俺は両手で扉を押し開ける。


 広大な部屋の奥には、玉座から立ち上がったドルグがいた。

 何気に珍しい。

 彼はいつも玉座に腰かけてばかりいるのだ。


 俺はいつもの調子で彼に話しかける。


「突然だが組織を抜けたいんだ。何か手続きは必要かい?」


「……お前さんに用意してほしいのは、二人分の墓標だけだ」


 ドルグは、ただ静かにそう述べた。

 不思議なほど穏やかだ。

 親しみさえ感じられる声音である。


 ただし、爬虫類のような双眸は、極大の殺意を宿していた。

 視線だけで相手を燃やせそうなほどだ。

 ドルグは怒り狂っている。

 それを理性で食い止めているのだ。


 俺は素知らぬ顔で話を続ける。


「奇遇だな。俺もあんたに同じプレゼントをしたかった。この城を墓にするなんてどうだ? あんたの巨体にぴったりだ」


「相変わらず達者な口だ……すぐに、黙らせてやろう」


 ドルグがそばの柱を掴む。

 いや、それは柱に見えるだけで、実際は巨大な斧だった。

 それをドルグは軽々と担ぎ、一歩ずつ近付いてくる。


 圧倒的な威圧感だ。

 すべての生物を本能的に恐怖させるような力がある。


 俺は抑え切れない震えを自覚しながら、ゆっくりとドルグを見上げた。

 そして、熱い息と共に呟く。


「――こいつは、最高だな。爆発のさせ甲斐がありそうだ」


 湧き上がる笑みを隠さず、俺はドルグに襲いかかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ