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爆弾魔な傭兵、同時召喚された最強チート共を片っ端から消し飛ばす  作者: 結城 からく
第2章 巨竜人と無法の国

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第65話 爆弾魔は相棒の成果を褒め称える

 俺は血塗れの格好で私室を出た。

 じっとりと生温かい上、歩くたびに水音が鳴ってしまう。

 臭いもそれなりに酷い。

 シャワーで洗い流して着替えたい気分だった。


「うぅ……」


「逃が、さ、な……い」


「待、て……」


 室内から呻き声が聞こえてくる。

 いずれも使用人達のものだ。

 彼らは揃って床に這いつくばっていた。

 致命傷のせいで動けないのである。


「無理するなよ。ゆっくり眠りな」


 使用人達に告げた俺は、室内に爆弾を転がす。

 そのまま足で扉を閉めた。

 数秒後、室内が爆発した。

 扉と床の隙間から血飛沫が噴き出す。

 遅れて白煙が漏れ上がってきた。


 それを目にした俺は、アタッシュケースを提げて嘆く。


「この程度で殺れると思われるなんて、俺も舐められたものだな。そんなに弱く見えるかね」


「ジャックさんはとても強いわ。私がよく知っているから安心して」


 先に廊下で待っていたアリスが、励ましの言葉を口にする。

 彼女は寝間着の上にフード付きのローブという格好だ。

 俺のように血塗れということもなく、清潔な状態を保っている。

 さりげなく防御魔術で弾いていたのだ。

 何気に綺麗好きなのかもしれない。


(それにしても、予想通りの展開だな……)


 殺したばかりの使用人達を思い出して、俺は小さく肩をすくめる。


 深夜に襲撃を受けたわけだが、まず間違いなくドルグの差し金だろう。

 この屋敷も使用人達も彼が事前に用意したものである。

 命令一つで俺の抹殺をさせられるようにしていたに違いない。


 もはや言うまでもないが、これから城へ出向いて報復するつもりだ。

 和解や泣き寝入りなんてありえない。

 徹底的にぶっ飛ばしてやろう。

 黒壁都市に帰還する前から想定していたことである。


 既にドルグとの協力関係は崩壊した。

 一方的に打ち切られた以上、こちらが遠慮することもない。


(あの野郎がどんな言い訳をするのか楽しみだ)


 戦意を滾らせていると、いきなりそばの壁が爆発して崩れ、外が丸見えになった。

 冷たい夜風が廊下を吹き抜けていく。


「なんだ、庭で野球でもしているのか?」


 俺は壁の穴から屋外を覗き見る。

 広々とした敷地の外を、無数の装甲車が取り囲んでいた。

 ドルグの城に停められていた戦闘車両だ。

 装甲車は柵を粉砕して庭に侵入する。

 車体に搭載された砲が火を噴いた。


「おっと」


 アリスを抱えて後方へ飛び退く。


 直後、砲撃が屋敷の壁をぶち抜き、室内を次々と破壊していった。

 高級そうな装飾を吹き飛ばし、整然とした内装を台無しにする。

 前方では床が丸ごと崩落していた。

 ちょうど瓦礫に埋もれた食堂が見える。


「大胆なリフォームだな。修繕費を請求させてほしいよ」


 辺りの惨状を見回した俺は、息を吐いて苦笑する。


 廊下には濛々と煙が充満していた。

 端々では火が燃え広がり始めている。

 放っておけば火事になるだろう。


 俺は壁の穴から装甲車の様子を窺う。

 よく見ると、武装した兵士達も敷地内に侵入しつつあった。

 統率の取れた動きだ。

 事前に入念な打ち合わせと訓練を行っているのだろう。


「ハッハ! 結構な戦力じゃないか! よほど俺の首が欲しいようだ」


 俺は腹を押さえて大笑いする。

 元の世界で何度も見てきた光景だった。

 懐かしさすら感じる。


 とは言え、ノスタルジーに浸る暇もない。

 不法侵入してきた連中をぶちのめす必要がある。


「あのデカブツが。ついに本性を表したな」


 俺は嬉々として武装を確認する。

 弾も爆弾も十分にある。

 襲撃に備えて、私室に武器を運んでおいたのだ。

 足りなくなったら敵から奪えばいい。

 この肉体だって立派な武器だ。

 いくらでも戦うことができる。


 最高のシチュエーションだ。

 ミノルとの戦いでは、時間停止の対策として罠の策略ばかりを連用するしかなかった。

 もちろん楽しかったが、爽快感が抜群だったとは言い難い。

 ここらで憂さ晴らしをさせてもらおう。


「どうするの? 今なら裏口から脱出できそうだけれど」


「決まっているだろう。連中を正面から叩き潰す」


 即答した俺は、壁の穴の前に立つ。

 ポケットから取り出した精霊石の爆弾――精霊爆弾を投擲した。

 鋭いカーブを描く精霊爆弾は、装甲車に命中して跳ね上がる。

 そして空中にて爆発を起こした。


 解放された人型の炎が喚き散らし、辺りを火の海に染めていく。

 爆発の直撃を受けた装甲車は、車体がひしゃげて再起不能になっていた。

 近くにいた兵士も巻き込まれており、断末魔を上げて苦しんでいる。


 射程外にいた装甲車と兵士の動きが露骨に鈍った。

 反撃に怯えているようだ。

 目の前で凄惨な死が披露されたのだから当然のリアクションである。


 一方、俺はアタッシュケースの取っ手を捻り、狙撃銃に変形させた。

 ミノルの狙撃に使った武器である。

 それを膝立ちで構えた。


「せっかくの来客なんだ。家主として歓迎するのがマナーってものさ」


 狙撃銃の引き金を引く。

 スコープ越しに、兵士の頭が破裂するのを目にした。


 微笑みながら再び引き金を引く。

 装甲車の陰に隠れようとした臆病者の首が千切れ飛ぶ。


 砲撃がすぐそばを通過するのを感じつつ、さらに引き金を引く。

 突進してくる装甲車のタイヤが破裂し、蛇行運転の末に倉庫に激突して爆発した。


 俺はこまめに移動しながら狙撃を繰り返す。

 ただし、向こうも容赦ない。

 多少怯むことはあれど、撤退する気配はなかった。

 ドルグから俺の抹殺を厳命されているのかもしれない。

 狙撃では埒が明かなかった。


「おいおい、近所が廃墟になっちまうぜ」


 狙いの外れた砲撃が別の建物へ飛び込むのを見て、俺は思わず苦笑する。

 街の被害なんてお構いなしの暴挙だ。

 とりあえずドルグの本気具合はよく伝わってくる。


「おっと、危ねぇな」


 駄目押しの砲撃の連打が、ついに屋根を崩落させてきた。

 俺はアリスを抱えて退避して、二階の奥の部屋に立てこもる。

 ここなら少しは時間稼ぎができる。

 砲撃も一発では届かないはずだ。


 ショットガンの弾を装填しつつ、俺は満天の星空を仰ぐ。


「まったく、せっかちな奴らだ。連中をまとめて墓送りにしてやりたいぜ」


「私にいい考えがあるわ」


 抱えたままのアリスが挙手をした。

 その指先に光が灯る。

 すると、腹の底に響くようなハードロックと共に、外からエンジン音が聞こえてきた。

 音はあっという間に屋敷内へ入ってくる。


「……まさか」


 俺はアリスを下ろして部屋を出る。

 階段を割りながら廊下に乗り上げてきたのはゴーレムカーだった。

 分裂変形したゴーレムカーは、部品ごとにアリスの身体に纏わり付いていく。

 そうしてものの数秒でパワードスーツの装着が完了してしまった。


 大柄で寸胴な骨格に、荷物の入った背中の箱。

 四本のアームも健在だ。

 動きも心なしかスムーズである。


 無骨なフォルムはそのままに、パワードスーツには大きな変化があった。

 胸部に赤い結晶のような物体がはめ込まれている。

 透明のプレートで保護されたそれは鈍い光を放っていた。


「どうかしら。保管していた竜の心臓を核にしてみたの。圧倒的な出力に加えて、魔力の補給が不要になったわ」


「最高にクールだ。君にぴったりのドレスだよ」


 誇らしげに語るアリスに、俺は称賛を送るしかなかった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] アリスちゃん……カッコ可愛い!!
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