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爆弾魔な傭兵、同時召喚された最強チート共を片っ端から消し飛ばす  作者: 結城 からく
第2章 巨竜人と無法の国

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第53話 爆弾魔は求めた人間を見つける

 二日後、俺はスカウト対象のマイケルがいる都市に到着した。

 都市の外観は、城塞都市とほとんど同じだった。

 街の雰囲気も似たようなものである。

 雑多で飾らない街並みで、俺みたいな人間は暮らしやすそうだった。


 ドルグの支配領域にある都市は、どこも変わり映えしない。

 これまでにも他の幹部や下部組織を暗殺するためにいくつかの都市を回ったが、やはり大した違いはなかった。

 それこそ例外は黒壁都市くらいだ。

 代表のドルグがいる本拠地であるが故、あそこだけは特に発展しているのだろう。


 ちなみにこの都市へは初めて訪れた。

 幸か不幸か、俺と敵対する人間がたまたまいなかったのだ。

 組織の重役が住んでいるということもない。

 他と比べると経済的にはやや劣るものの、抗争の少ない平穏な街である。


 この都市も正門付近の通りは渋滞しており、ゴーレムカーはまともに進むことができない。

 まあ、エウレア国内はどこもこんな調子だ。

 既に慣れ親しんだ光景である。

 苛立つこともない。


 とは言え、時間は有意義に使いたい。

 せっかくなので、待ち時間を利用して情報収集を進めることにした。

 目的はもちろんスカウト対象であるマイケルの捜索だ。

 だいたいの居場所が分かるだけでいい。


 ゴーレムカーにアリスを置いて、俺は道端の露店に立ち寄った。

 なんとなしに商品を眺めながら店主に話しかける。


「やあ、儲かってるかい?」


「兄さんがたくさん買ってくれれば順調だな。どうだ、値打ちのある品ばかりだ」


 鉢巻をした店主が快活に答えた。

 愛想よく笑っているが、厳つい顔立ちなので恐ろしく見える。

 風貌だけで判断すると山賊の頭だ。

 そのような男が露店で物を売る姿には、何とも言えないギャップがあった。


 俺は苦笑しながら、貨幣の入った革袋を手に取る。


「ははは、そいつは貢献しないとな」


 蜜漬けの果実に目を付ける。

 小粒のオレンジのような見た目で、それが瓶に入っている。

 その果実を絞ったらしきジュースも並べてあった。

 どれも値段が安いので、アリスの分もまとめて購入しておいた。

 ちょうど甘いものが欲しかったところだ。

 デザートにはちょうどいいだろう。


「まいどあり。兄さん、随分と太っ腹だな」


「こう見えて金持ちなんだ」


 買った商品を袋に詰める店主に、俺は笑顔でおどけてみせる。

 ドルグからかなりの額の給料を貰っているので、金持ちなのは事実だった。

 たまに罰金を払わされているものの、総計ではプラスとなっている。

 多少の出費は痛くも痒くもなかった。


 俺は店主に支払いを行いながら質問をする。


「ところで、マイケルって男を知っているか? 冒険者をやっているらしいんだが」


「もちろん知っているさ。この都市じゃ有名人だ。あいつがどうかしたか?」


「いや、風の噂で名前を聞いてね。ちょっと興味が湧いただけさ」


 俺がそう答えると、店主が何かを察したような顔でにやける。


「ははぁ、手合わせの類だろ? 最近じゃ珍しくもない。マイケルの武勇を聞き付けた連中が、腕試しに決闘を頼みに来るんだ。見物客に商品を売れるから、俺みたいな商売人としちゃありがたい話だがね」


「なるほどな……」


 店主の話を聞いた俺は、内心でガッツポーズを取る。

 決闘が盛んとは実に好都合だ。

 誰かがマイケルと戦う現場を目撃できれば、彼の能力の謎を解く鍵になるだろう。

 俺が解明できずとも、こちらにはアリスがいる。

 彼女の観察眼を以てすれば、強さの秘密も分かるはずだ。


「マイケルなら冒険者ギルドにいるだろう。この時間帯は、いつも依頼を探しているんだ」


「ギルドの場所を教えてくれないか」


「いいぜ。たくさん買ってくれたサービス料さ」


 店主から冒険者ギルドまでの道のりを記したメモを貰う。

 ここから近く、徒歩でも向かえる距離だ。

 通りに面しており、規模の大きな建物である。


 冒険者ギルドということは、組合で運営される組織なのだろう。

 この世界では一般的な職業らしい。

 あとでアリスに概要を聞いておこうと思う。


 胸ポケットにメモを仕舞いながら、俺は親切な店主に礼を言う。


「教えてくれてありがとう。助かるよ」


「いいってことさ。もし決闘をするのなら、この店の前にしてくれよな」


「分かっているよ。任せてくれ」


 店主の軽口に応じながら、渋滞の中のゴーレムカーへ戻る。

 会話の間に多少は進んでいたが、視界から消えるほどではなかった。

 運転席に乗り込むと、さっそくアリスが尋ねてくる。


「何か分かったの?」


「ああ、マイケルの野郎の居場所がだいたい分かった。張り込みしよう」


 俺はハンドルを握って微笑む。


 その後、通りから外れた適当な宿屋を確保した。

 チェックインして駐車スペースにゴーレムカーを預けておく。

 そこから露店で買った果実とジュースを片手に冒険者ギルドへと向かった。


 冒険者ギルドは、木造建築の立派な建物だった。

 遠目に見ていると、武装した人々が活発に出入りしている。

 そういえば、他の都市でもこういう連中や建物を見かけた気がする。

 俺を召喚した帝国にもあった。

 関心が向かなかっただけで、冒険者は世に溢れているようだ。


「ここからは待機ね」


「退屈かい?」


「いいえ。ジャックさんが一緒だもの。苦にならないわ」


 俺達は物陰からギルドを窺う。

 絶え間ない雑踏のおかげで目立つことがない。

 監視にはちょうどいい環境であった。


「でも、ギルドに入って探すか、室内で待った方が確実じゃないの?」


「マイケルと鉢合わせになるのが嫌なんだ。すぐに話は持ちかけない。まずは観察だ」


 俺は葉巻をくわえながら答える。

 ドルグからは仕事の期限を決められていない。

 焦ることはないのだ。

 気長にやればいい。

 スカウトを成功させるには、相手の求めるものを見極める必要がある。

 入念な調査を経て接触を図るべきだろう。


 そうして待つこと暫し。

 やがて冒険者ギルドから一人の青年が現れた。

 文書通りの身体的特徴だ。

 おそらくあいつがマイケルだろう。


 青年は三人の女を引き連れていた。

 革鎧を着けた赤髪の少女が、青年の腕に抱き付いている。

 長身のエルフの女は、凛とした表情で青年の隣を歩く。

 前髪で目元を隠した褐色肌の女は、三人の背後を無言でついていく。

 男女比率の偏った集団は、和気あいあいとした空気でギルドを立ち去った。


「あの人は、確か……」


 四人を見届けたアリスは、意外そうに呟く。


「間違いない。まさか、こんな形で再会できるとは思わなかった」


 俺は葉巻を捨て、靴底で火を踏み消した。

 その場から動かずに、ギルドから出た四人の背中を凝視する。

 自然と口角が吊り上がり、深い息が漏れる。

 目が見開くのを知覚した。

 拳銃のグリップを這う指を、理性の力で止める。


 まったくの偶然だ。

 巡り合わせというものは存在するらしい。

 これほど運命に感謝する日もないだろう。


 ――俺がスカウトをしに来た噂の男は、かつてドワーフの集落で会った召喚者だった。

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