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爆弾魔な傭兵、同時召喚された最強チート共を片っ端から消し飛ばす  作者: 結城 からく
第2章 巨竜人と無法の国

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第50話 爆弾魔は組織内で疎まれる

「儂も強く非難したいわけではない。だが、お前さんは自分の影響力を分かっていない。多少なりとも組織の幹部である自覚は持ってほしい」


「持っているさ。だから努力している」


「……うむ、分かった。とにかく、これからは気をつけてくれ」


 難しい顔をしたドルグは軽く手を振った。

 退室を促すサインだ。

 もはや見慣れた動きであった。


 俺は口笛を吹きながら部屋を出た。

 扉を閉める際、遠めにドルグを見やる。


 ドルグは頭を抱えてため息を吐いていた。

 苛立ちと疲れが浮かんでいる。

 俺は扉を背に小声でぼやく。


「まったく、窮屈だ」


 ドルグの下で仕事を始めてから早一カ月。

 俺は頻繁にトラブルを起こしていた。

 もちろん故意ではない。

 トラブルの種が向こうから寄ってくるのだ。


 始まりはドルグの下部組織を無断で爆破した件だろう。

 数日に渡って陰湿な嫌がらせを受けたので、十倍返しで報復させてもらった。

 雷の精霊石を爆弾に使ったが、あれはとても綺麗だった。

 数百の稲妻が荒れ狂うように放射される光景は、滅多に見れない絶景と言えよう。


 その次に問題になったのは、生意気な護衛対象を半殺しにした時だったか。

 エウレア国内でも重鎮の人物らしいが、ことあるごとに俺を足蹴にしたり、口汚く罵ってきやがった。

 こちらを奴隷か何かだと勘違いしていたのだろう。

 仕方がないので手足を折って木箱に詰め、そのまま指定の場所へ送り届けてやった。

 あれから音沙汰がないので、勘違いに気付いたのだと思う。


 他にも俺の失脚を狙う幹部を次々と暗殺した。

 下積みなしで幹部になったことを妬まれているようで、様々な妨害工作を受けたのだ。

 なんとも器の小さい連中である。

 他人を蹴落とすのではなく、自分の力で成り上がる気概はないのだろうか。

 何にしろ鬱陶しいので、片っ端から爆殺していった。


 俺としては、どれも正当性のある行為だ。

 力がすべてのエウレアなら通用するかと思ったのだが、ドルグからは幾度となく注意を受けてきた。

 加減をしろと遠回しに忠告されている。


 俺がこれだけ暴れるのを承知でスカウトしたと考えていたが、どうやら違ったらしい。

 地位と権力を与えれば大人しくなるとでも思ったのだろうか。

 なんとも困ったものである。


 俺は生粋の爆弾魔だ。

 殺しは得意だが、それ以外は苦手分野だった。

 組織としての行動を期待されても、それには応えられない。

 協調性があるのなら、フリーの傭兵なんてやっていないだろう。


 幹部が減るのを防ぎたいのなら、まずは嫌がらせや裏工作をやめさせてほしい。

 俺を叱るより、それを優先すべきだと思う。

 こちらはただ正当防衛をしているだけなのだから。


 この黒壁都市はドルグが支配する地だ。

 一大勢力と謳っていはいるものの、蓋を開ければ組織内部での小競り合いが絶えない。

 誰もが成り上がりたいと考え、少しでもトップに近付こうとする。

 ドルグが睨みを利かせている分、他の都市に比べればまだ平穏だが、本質的には同じようなものだった。

 組織に属する以上は、権力闘争に巻き込まれるのは避けられないのかもしれない。


(やはり俺は、組織行動に不向きだな)


 軍人時代も一部の者から何かと煙たがられていた。

 同僚を叩きのめして処分を受けたことも一度や二度ではない。


 傭兵の方がよほど気楽だ。

 短期契約が可能で、仕事内容も選り好みできる。

 報酬も割に合っていた。

 向こうも俺の人間性を知った上で仕事を依頼してくるため、大きなトラブルはなかった。


 今回はメリットに釣られてしまったが、いずれドルグの組織を抜けよう。

 長居すると、いずれ厄介事が起きる予感がする。

 今でさえこのような状況なのだ。

 折を見て離脱するのが、お互いにとって健全だろう。


 密かに決心しながら城内を歩いていると、前方から同じ組織の人間がやってくる。

 ライフルを携えた獣人の部隊だ。

 観察していると目が合った。


「あいつは確か……」


「また問題を……」


「組織の恥だな……」


 彼らはこちらに聞こえるボリュームで囁き合う。

 どうにも不愉快な連中だ。

 そして俺の神経を逆撫でするのが上手い。


 俺は大股で近付き、彼らの前に立ちはだかる。


「よう。俺の話をしているんだろう? 混ぜてくれよ。褒められるのが好きなんだ」


「……チッ」


 舌打ちをした獣人共は、俺を無視してすれ違っていく。

 俺は懐の爆弾を取り出しかけて、寸前で堪えた。

 奥歯を強く噛みながら歩き出す。


 ここであいつらを殺すのは簡単だ。

 ただ、後始末が面倒だ。

 それに城内で惨殺死体を作ると、またもやドルグから小言を受けてしまう。

 説教を受けた数分後に問題を起こすのは避けたい。

 そろそろ何らかの罰を課されるかもしれない。

 いくらドルグが寛容といっても限度があるだろう。


 組織内でも俺の存在は知れ渡っているようだ。

 すれ違う際に嫌味を言われる程度には認知されている。

 できるだけ仲良くしたいのだが、人間関係というものは難しい。

 ああいう輩には絡まないのが賢明なのだろう。


「……まあ、顔は覚えたけどな」


 俺は獣人共の背中を眺める。

 機会が巡ってきた時は、とびきり残酷な手段で殺してやろう。

 我ながら執念深い性格をしているのだ。

 馬鹿にしてきた者は絶対に許さない。


 心の奥底で煮え滾る感情を抑えながら、俺はドルグの城を後にする。




 ◆




 城から屋敷への帰り道、俺は妙な気配を感じて足を止めた。

 複数の殺気に囲まれているようだ。

 ここが薄暗い路地裏であることを加味すると、ほぼ間違いなく穏やかな事態ではない。

 俺は手を広げて辺りを見回す。


「出てこいよ。面と向かって話せないチキン野郎しかいないのか?」


 微かな風切り音。

 俺は死角から飛んできた物体を掴む。

 それはナイフだった。

 刃に紫色の粘液が塗り込められている。

 お手本かと思うほどに分かりやすい毒だ。


 ナイフを弄んでいると、前方に二つの人影が下りてきた。

 黒い外套に仮面という出で立ちだ。

 仮面はのっぺりとした形状で、それぞれ異なる模様が描かれている。

 端的に言って不気味なものであった。


 僅かに振り向けば、背後にも二人の仮面が立っている。

 計四人……いや、建物の陰に隠れている奴がいるので五人だ。


 俺はナイフを捨てて笑う。


「いいマスクだな。B級ホラー映画の殺人鬼みたいだ」


 返答はない。

 仮面共は沈黙を保っている。

 まるで静止画のように微動だにしない。

 つまらない連中だ。

 俺は肩をすくめながら問いかける。


「ちゃんと棺桶と墓は買ってきたか? 葬式の日程も決めた方がいい。俺も参列してやるよ」


「ジャック・アーロン。組織の面汚しが。貴様と話すことなどない。ただ、死ね」


 仮面の一人が嫌悪感も露わに言う。

 俺の挑発に耐え切れなくなったらしい。

 外套から覗く毒濡れのナイフが、陽光を反射して輝く。


 次の瞬間、四人の仮面が一斉に跳びかかってきた。

 微かに聞こえるのは詠唱か。

 同時攻撃で確実に仕留めるつもりのようだ。


「やれやれ。救いようがないな」


 小さく嘆息しつつ、俺は拳銃のグリップに手を添えた。

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