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爆弾魔な傭兵、同時召喚された最強チート共を片っ端から消し飛ばす  作者: 結城 からく
第2章 巨竜人と無法の国

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第40話 爆弾魔は拠点を手に入れる

 翌日、俺は便利屋のテーブルで朝食をとっていた。

 今日の献立は焼き魚だ。

 種類は知らない。

 たぶんこの世界特有の魚だろう。


 俺はフォークに刺した一切れを口に運んだ。

 そして驚く。


「――美味いな」


 口に入れた途端、白身がとろけた。

 濃厚な甘味が広がる。

 生臭さなどは微塵も感じられない。

 まるで霜降り肉のようだ。


 それでいてしつこさはない。

 淡泊とはまた違う。

 余計な癖がなく、洗練された味わいであった。


 振りかけられた塩もいい。

 ほどよく味を引き締めていた。

 噛むたびに旨みが溢れ出してくる。

 魚は大して好きではなかったが、これは考えを改めねばならない。


「どう? 美味しい?」


 エプロンを着けたアリスが確認してくる。

 この焼き魚は、早起きした彼女が調理したのだ。

 ポーカーフェイスを装っているが、心なしか誇らしげである。

 出来栄えに自信があるのだろう。


 俺は笑顔で頷いてみせる。


「ああ、最高だ」


「ちょっとちょっと! 落ち着いて食事している場合じゃないですよっ」


 焼き魚の味に感心していると、玄関扉を開けてレトナが転がり込んできた。

 せっかくの食事の時間だというのに、無粋な真似をしてくれる。


 ただ、話に付き合わなければ終わらない雰囲気もあった。

 レトナの慌てぶりを見るに、それなりのトラブルでも起きたのかもしれない。

 俺は少し非難を込めつつ話しかける。


「朝から騒々しいな。一体どうしたんだ?」


「どうしたもこうしたもないですってば! ハンヴィエルード・ファミリーの一件で街は持ち切りですよ」


「あー……なにファミリーだって? ややこしい名称だな」


「ハンヴィエルード・ファミリーです! ジャックさん達が崩壊させた組織ですよ! かなりの大事なんですから、憶えてください……」


 レトナが呆れ顔で嘆いた。

 俺は焼き魚を口に運びながらぼやく。


「そう言われてもなぁ。生憎と興味がないんだ」


「やっぱり狂ってますねぇ……命を狙われるとか、そういう心配はないです?」


「誰が来ようと殺すだけさ」


 俺は笑みを浮かべて即答する。

 単純明快な話だった。

 実力行使に及ぶ輩がいるのなら、それを上回る暴力で捻じ伏せるのみである。

 長年に渡って慣れ親しんできた解決法だ。

 世界が変わろうと役に立つ。


 レトナは椅子に座ると、アリスから水を受け取って飲み干した。

 そして大きくため息を吐く。


「そこまで自信満々に返されると何も言えませんねぇ……あ、そうそう。話は変わりますが、件の物件が購入できましたよ。組織の崩壊で所有権が曖昧になっていたので、ちゃっかり手に入れてきました」


「その話は気になるな」


「なんと、最初の金額から九割引きですよ! すごくないですか私!」


「否定できないな。よくやってくれた」


 俺では到底できなかったことだ。

 便利屋のコネと、レトナの交渉術のおかげだろう。

 性格に難がある女だが、能力に関しては紛うことなきプロである。

 仕事を任せる上では信頼できる。


「強引な手段を使いましたが、おそらく文句も出ないでしょう。物件の所有者がジャックさんなのは周知させましたからねぇ。皆さん怯えていると思いますよ」


「だろうな。そうなるために連中の本拠地をぶっ飛ばしたんだ」


 ビルの爆破は、俺からのメッセージであった。

 伝えるべき者には伝わったはずだ。

 俺の仕業という噂が流れているのなら上々である。


 レトナは頬杖を突いて面白そうに微笑む。


「いやはや、恐ろしいですねぇ。この都市を支配する組織を一夜にして壊滅させるとは。実力主義のエウレアにぴったりです。いずれあなたの名前を出すだけで特例的な扱いを受けられますよ」


「そいつは好都合だな。この街で快適に暮らせそうだ」


 この城塞都市には長居する予定だった。

 住み心地がよくなる分には大歓迎である。


 食後、支払いを済ませた俺達は、さっそく買い取った物件へ向かうことにした。

 便利屋のレトナとハックも連れていく。


「ん?」


 いつも通りゴーレムカーに乗っての移動だが、周りからの視線が昨日までと異なる。

 街の人々の中に、畏怖や怯えを見せる者が混ざっていた。

 そそくさとゴーレムカーから逃げようとする者も少なくない。


 確かに俺の噂は広まっているようだ。

 あまり露骨に避けられると嫌な気分になるが、妙なトラブルに巻き込まれるよりは楽だろう。


 そんな変化に気付きつつ、俺達は件の物件に到着した。

 柵に囲われた二階建ての家屋が佇んでいる。

 一見すると敷地が広いだけだが、実際は地下空間があるらしい。

 元は犯罪組織が利用する建物だったそうなので、設備に関しては期待できそうだ。


 確認作業を終えたレトナが、俺達の前で姿勢を正す。


「それでは私達はこれにて失礼します。また何かありましたら、いつでもお越しください」


「世話になったな。そっちも困った時は言ってくれ。金額次第で何でも爆破してやるよ」


「あ、はは……ありがとう、ございます……いやぁ、ジャックさんのお力が借りられるなんて、嬉しい限りですねぇ」


「私もいるわ」


 アリスが挙手をしてアピールした。

 それを聞いたレトナは、腰を低くして対応する。


「もちろんアリスさんも頼りにしていますよ……あと、お願いですから便利屋だけは爆破しないでくださいね?」


「あんたが味方を演じ続ける限りはな」


 俺は忠告を交えて告げる。

 それに何度も頷いたレトナは、本気で焦りながら退散した。

 助手のハックは、俺達を一瞥してから無言で立ち去る。


 何かとユニークなコンビだったが、また再会の機会は巡ってくるだろう。

 この拠点と便利屋の位置も近く、互いに損得を弁えている身だ。

 エウレアにおける数少ない知人でもある。

 良好な関係が続くことを願っておこう。


「さて、我らが拠点をチェックしようか」


 俺は渡されていた鍵で正門を開錠して敷地内へ踏み込む。

 やはり見た目は何の変哲もない木造の家だ。

 犯罪組織の使っていた建造物とはとても思えない。

 俺はそのまま家の中に入り、室内の状態を確かめる。


 家の中には、最低限の家具が置かれていた。

 埃や蜘蛛の巣もなく小奇麗にされている。

 レトナによって事前に掃除されているようだ。

 生活用品をいくらか買い込めば、そのまま暮らせるだろう。


 ただ、本題はここではない。

 これくらいのグレードなら、他にも物件がいくらでも見つかる。

 俺は居間を歩き回り、足音と床板を踏んだ感触を確かめていく。

 そのうち違和感を覚える箇所を発見した。


「ここだな」


 古びた床板を外すと、そこには円形状の鉄扉があった。

 見た目はマンホールの蓋のようである。

 俺は追加で床板をめくってから扉を開けた。

 中には梯子が設置されており、直下の暗闇の中へと続いていた。


「秘密基地か。悪くない」


 こういったギミックには心が躍ってしまう。

 俺は一気に梯子を滑り降りる。

 数秒ほど降りると床に着地できた。

 コンクリートのような材質だ。

 俺はそばの壁を手探りしてスイッチを押す。


 何度かの瞬きを経て、天井の照明が点灯する。

 そこには広大な空間があった。

 サッカーの試合ができるほどのスペースで、高さも二十ヤードは下らない。

 地上の家屋からは想像もつかない規模である。


 これだけ広ければ、色々な使い方ができるだろう。

 製作物の実験や物資の保管も十分に可能である。

 レトナの説明によると、壁は防音性に優れて頑丈らしい。

 拠点として申し分ない性能だ。


「いい場所ね。魔術工房にも適しているわ」


 梯子で降りてきたアリスも、満足そうに感想を述べる。

 彼女もここを気に入ったようだ。


 こうして俺達は、エウレアにおける拠点を手に入れたのであった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] > 古びた床板を外すと、そこには円形状の鉄扉があった。 > 見た目はマンホールの蓋のようである。 > 俺は追加で床板をめくってから扉を開けた。 この「追加で床板をめくってから」のディテー…
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