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爆弾魔な傭兵、同時召喚された最強チート共を片っ端から消し飛ばす  作者: 結城 からく
第2章 巨竜人と無法の国

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第34話 爆弾魔は炎上車両で暴走する

 俺達の前に立ちはだかるのは、正門に集結した警備兵達だった。

 彼らはゴーレムカーを狙って銃撃と魔術を浴びせてくる。

 全力で侵入を阻止しようとしていた。


「おいおい、歓迎してくれるじゃないか」


 俺は左右にハンドルを切って攻撃を回避する。

 弾丸や火球が車体を掠めるも、大した衝撃はない。

 速度を落とさずにそのまま突進していく。


「止まれェ! それ以上近付くと――」


「どうなるんだい?」


 叫ぶ警備兵達をボンネットで撥ねながら、俺達は敷地内へ飛び込んだ。

 広大な芝生を無遠慮に走り抜ける。


 ほどなくしてけたたましい鐘の音が響き渡った。

 本拠地で赤いランプが回転している。

 侵入者を報せるものだろう。

 それにしても耳障りすぎる。


「音楽がほしいな。付けられるか?」


「えぇ、できるわ」


 アリスが操作すると、車体後部からハードロックが流れ始めた。

 心地よいリズムが鐘の音を掻き消す。

 やはりこちらの方がいい。

 気分が乗ってくる。

 アドレナリンが分泌される感覚もあった。


 あちこちから放たれる弾丸の嵐を気にせず、俺達は本拠地へと直進する。

 ドラゴン素材を使ったゴーレムカーは、凄まじい耐久力を誇る。

 生半可な弾丸や魔術では損傷しない。


「ヘイ、眉間がお留守だぜ?」


 俺は窓から腕だけを出してライフルを発砲する。

 二十ヤード先にいた男の頭部が弾けた。

 進路上に車両を置こうとする輩は爆弾で吹き飛ばす。

 赤々と燃え上がるその様は、なかなかに綺麗なものであった。


 唐突な襲撃を受けた組織の連中は、万全の態勢ではないようだ。

 迎え撃ってくる人数も少なく、連携もできていない。

 高機動による正面突破は予想外だったらしい。


 今のところは順調だ。

 俺達の目的は組織のトップの殺害である。

 ビルまで迅速に乗り込み、相手が混乱する間に事を済ませたい。


 そんなことを考えていると、側面から一台の大型車両が迫ってきた。

 見た目は完全にトラックである。

 駐車場にあったそれを誰かが発進させたのだろう。


「ジャックさん」


「分かっているさ」


 短い会話の直後、トラックが追突してきた。

 激しい衝撃が車内を襲う。

 密着したトラックは、そのまま強引に押し続けてくる。

 おかげでゴーレムカーは直進できず、コントロールも利かない状態だった。


 無理な駆動で火花を散らしているのが車内からでも見える。

 各所に施された魔術の光が、不自然に明滅していた。

 このまま石壁まで追いやって挟み潰すつもりなのだろう。


 よほどあのビルに近付かれたくないらしい。

 組織のトップを守ろうと必死なのだ。

 その忠誠心と度胸に感心する。


「このままでは動けないわ。どうするの?」


「大丈夫さ。とりあえず上を開けてくれ」


 横転しないようにハンドルを調節しつつ、俺はアリスに指示を送る。

 すぐにゴーレムカーのルーフが展開された。

 露わになる夜空。

 俺はそこからよじ登って車外へと出る。


「大したガッツじゃないか。俺は嫌いじゃない」


 そう告げながら、俺は密着するトラックに飛び移った。

 サイドミラーに足をかけてしがみ付く。


「なっ……!?」


 驚愕する運転手がライフルを手に取る。

 それが構えられる前に、俺はフロントガラスを蹴り破った。

 車内の運転手を引きずり出し、放り投げて落とす。

 入れ替わるようにトラックの運転席を占拠した。


「乗り心地は悪くないな」


 ハンドルを大きく切って、追突中のゴーレムカーから逸れるように走らせる。

 ゴーレムカーはスピンしながらも持ち直した。

 その際、向こうに乗るアリスと目が合う。


「俺の後についてきてくれっ」


 アリスが頷いたのを確認して、俺はトラックを方向転換させる。

 再び本拠地への接近を始めた。


「絶対に止めるんだッ! これ以上、先に進めさせるなァッ!」


「魔術師はタイヤを狙え! 動きを妨害しろ!」


「無理だっ! 速度のせいで狙えない!」


 組織の人間が集中砲火を浴びせてくる。

 雪崩のような攻撃が運転席にも飛び込んできた。

 俺は頭を下げながらハンドルを操る。


 サイドミラーを覗くと、積み荷部分から火が上がっていた。

 破裂音も連続して聞こえてくる。

 火薬か何かを載せていたのだろうか。

 それが攻撃を受けて引火してしまったようだ。


「――ちょうどいい。第二のプレゼントにするか」


 俺は微笑み、アクセルを踏み込んで加速させる。

 エンジンが妙な音だが、あと一分くらいは持つだろう。

 そこまで耐えてくれればいい。

 四方八方から猛攻を浴びながらも、トラックは強引に突き進んでいく。


「お? あれは……」


 本拠地のビルの前に、ガラスのような壁が何重にも生み出されていた。

 俺の進路を阻む形である。

 杖を持った人間が集まって何かをしているようだった。


 アリスの解説を聞くまでもない。

 魔術による防壁だろう。

 ドラゴン戦で発揮されたゴーレムの盾と似ている。

 俺達を食い止めるため、大急ぎで用意したのだと思われる。


 もっとも、それを目にしてビビる俺ではない。

 踏み付けたアクセルから足を離さず、どんどん加速させていった。

 すると魔術師達は我先にと退避する。

 猛スピードのトラックに減速する気配はなく、むしろ轢殺するつもりだと理解したようだ。

 さすがに命は惜しかったらしい。


「さて、俺も逃げないとな、っと」


 防壁が目前まで迫ったタイミングで、俺はドアを開けて飛び降りた。

 受け身を意識しながら地面を転がる。

 身体が止まると、すぐに顔を上げて成果を確かめた。


 炎上する無人のトラックは、真正面から防壁に激突した。

 前部をひしゃげさせながらも防壁を粉砕する。

 バランスを崩したトラックは横転し、ビルにめり込んだ末に爆発を起こした。

 轟々と炎が噴き上がり、黒煙がビルを撫で上げていく。


 直撃を受けたビルの入口付近は崩壊していた。

 壁や扉が全壊して、ぽっかりと大きな穴が開いてしまっている。

 周辺は阿鼻叫喚の有様で、悲鳴と怪我人で満たされていた。

 こちらを攻撃する余裕などまるでなかった。


「素晴らしいな。高級シャンパンでも開けたい気分だ」


 今回の出来栄えに満足していると、後方からアリスの乗るゴーレムカーがやって来た。

 徐々に減速しようとするので、笑いながら首を横に振る。

 ついでに手招きのジェスチャーも加えた。


 せっかく相手が混乱しているのだ。

 悠長に行動せず、このまま突撃してやった方がいい。

 今は何よりもスピードが優先される。

 数的不利を覆すのなら、徹底して攻勢に打って出るのが一番だろう。


 こちらの意図を汲み取ったゴーレムカーは加速を再開した。

 俺は車体が横を通り過ぎる寸前でドアを掴み、ひらりとルーフに飛び乗る。

 その姿勢から車内のアリスに喋りかけた。


「突入だ。遠慮なくかっ飛ばしてやろう」


「任せて」


 エンジンの重低音が雄々しく唸り上げる。

 そこに突き抜けるようなハードロックが混ざり合う。

 端的に言って最高だった。

 トラックも悪くなかったが、やはりこの車両が一番である。


 そうして組織の面々を轢いたゴーレムカーは、血のタイヤ跡を残してビルへ飛び込んだ。

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