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爆弾魔な傭兵、同時召喚された最強チート共を片っ端から消し飛ばす  作者: 結城 からく
第5章 魔王再臨と送還魔術

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第198話 爆弾魔は提案する

 俺はアリスと共に世界核の設置されたフロアに移動した。

 すぐさま駆け寄ってきたのは三つ首だ。

 三つ首は今や普通の犬と同程度のサイズとなっており、額の角がなければ区別が付かないだろう。


 これは魔王との激戦で消耗した影響である。

 首も一つのままで、再生する兆しもない。

 アリスによると、魔王の攻撃で肉体が変質してしまったらしく、元の姿には戻れないという。

 細かいことはよく分からないが、突然変異的な現象なのだろう。

 魔術やら魔力が絡むと、何が起こってもおかしくない。


(それにしても、ラストバトルもしっかり生き残るとは、意外とタフだな……)


 尻尾を振って懐く三つ首を前に、俺はしみじみと考える。

 今度ばかりは死んでしまうかと思ったが、見事に予想を裏切ってみせた。

 魔王を相手にしても怯まず、懸命にアリスのサポートに徹していたらしい。

 なかなかの忠犬ぶりである。


 まあ、こいつの生存は悪いことではない。

 せっかくなので元の世界に連れて帰ることにした。

 このサイズなら邪魔にもならないし、ペットとして飼えばいい。

 角はアクセサリーだと言い張ろう。

 最近はペットのファッションも多様化していると聞くので、そこまで不自然ではないはずだ。


 ちなみに名前はエイブに決めた。

 食事は普通のペットフードをやればいいのだろうか。

 まあ、雑食なので問題はないと思われる。


 こいつがいれば、自宅を留守にしても安心だ。

 強盗くらいなら軽々と撃退してくれる。

 むしろ勢い余って食い殺さないか心配なくらいだった。

 帰還したら、ネットで躾け方について調べないといけない。


 床を転がるエイブに構いつつ、俺は部屋の中央を見やる。

 そこには回転する世界核があった。

 城全体を使った爆弾は、既に完成している。

 俺がシュウスケを見張っている間、アリスが残りを仕上げてくれたのだ。

 注視していると、ステータスが表示される。




名称:終末爆弾

ランク:EX+++

威力:ERROR

特性:【地脈干渉】【世界崩壊】【反創造】【無限爆発】【異界転送】【次元超越】




 端的に言って素晴らしい。

 最高ランクの爆弾となっていた。

 満足の出来である。


 威力は測定不能で、数値化できない規模らしい。

 想像するだけで心が躍る。

 爆破の全容を確かめられないのが残念だった。

 俺はこの爆破によって元の世界へ帰還するため、世界の滅ぶ様を最後まで見ることができない。


 シュウスケとの対決に際して世界核に保管した魂も回収済みだった。

 これを忘れると、世界滅亡に合わせて俺達も死んでしまう。

 さすがにそこまで間抜けなミスは犯さない。


 俺はゴーレムカーの後部座席にエイブを乗せた。

 そして空きスペースには、最果ての城に貯蔵された財宝を詰め込んでいく。

 せっかくだから記念に持ち帰ろうと思ったのだ。

 どうせ滅ぶのならば、ちょっと拝借しても文句は言われまい。

 頑張った自分へのご褒美も兼ねている。


 財宝は高値で売れそうなものばかりだった。

 召喚される直前、俺は百万ドルの仕事を成功させたが、報酬を受け取りに行く前にこの世界へ迷い込んだ。

 あれから約一年が経過している。

 俺は失踪扱いだろうし、ほぼ間違いなく報酬は受け取れない。


 だからこそ、財宝は余計に必要だった。

 一部は当面の生活資金にさせてもらう。

 元の世界に帰ったからと言って、すぐに豪遊できるわけではなかった。

 また傭兵の仕事を始めなければ。

 潔く再スタートして荒稼ぎしようと思う。


 次に俺は、運転席を確認した。

 イヤホンのようなコードが増設されている。

 送還時、こいつを耳にはめて元の世界をイメージする。

 それを利用して行き先となる座標を確定するのだ。


 とにかく俺のイメージが重要なので、しっかりと集中しなければならない。

 せっかくアリスがここまで用意してくれたのだ。

 台無しにするわけにはいかなかった。


 諸々の確認作業を終えた俺は、先ほどのフロアへと赴く。

 未だ眠るシュウスケを担いで来た道を戻った。

 彼は部屋の片隅に置いておく。


 世界が滅ぶ瞬間に観客がいないのもつまらない。

 せっかくなのだから、その時を間近で見てもらいたいと思う。

 シュウスケは別に見たくないかもしれないが、そこは勝者の特権で強制的に見学させる。

 皮肉の一言や二言は甘んじて受け入れよう。


 その時、俺はふと視線を感じた。

 背後に立つアリスからのものだった。


「最終調整も全て済んだわ。問題なく作動可能よ」


「オーケー、何から何まで助かる」


「気にしないで。私にとっても悲願だから」


 アリスは儚げに微笑む。

 俺はそれを見ながらゴーレムカーに乗り込んだ。

 コードを持ち上げて、その手を止める。


 アリスは、ゴーレムカーのそばに立ってこちらを見ていた。

 動こうとする様子はない。

 感情の読めない顔で佇んでいる。


 少し考えた末、俺は彼女に声をかけた。


「アリス」


「何かしら」


 アリスは平然と首を傾げる。

 俺は変に気負いもせず、世間話のように提案した。


「君がよかったら、一緒に異世界へ来ないか」

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