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爆弾魔な傭兵、同時召喚された最強チート共を片っ端から消し飛ばす  作者: 結城 からく
第5章 魔王再臨と送還魔術

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第196話 爆弾魔は最後の召喚者と語り合う

 床に座り込んだ俺は、酒瓶を片手に口笛を吹いていた。

 子供だった頃にヒットした曲だ。

 メロディーしか覚えておらず、歌詞はうろ覚えだった。


 やがて隣にいる野郎が起きる気配がした。

 俺は口笛を止めて声をかける。


「お目覚めかい。良い夢が見れたか?」


 そこにいるのは、四肢を失った骨だった。

 全身から黒炎を燻らせている。

 ロープで縛られた骨は、壁に寄りかかっている。


 この異形の正体はシュウスケだ。

 丹念に踏み砕いてやったわけだが、見事にここまで再生したのである。

 おそらくは【無限再生 B】の効果だろう。

 元の肉体には戻れないまでも、生存に必要な進化を遂げたらしい。

 アリスによると、非常に特殊なアンデッド化に該当するという。


「…………」


 シュウスケは首をゆっくりと回した。

 骨なので眼球は無いが、こちらを向いた際に視線を感じた。

 確かな理性が宿っている。

 シュウスケは掠れた声を発する。


「ここ、は……」


「最果ての城だ。これからお前の墓になる」


 俺は嘘偽りなく告げた。

 モンスターに変身した挙句、木端微塵になったというのに、シュウスケは正気を取り戻していた。

 かなり強靭な精神力である。


 シュウスケはほとんど反応を見せず、静かに頷いた。


「……そう、ですか」


「どうした。リアクションが薄いぜ」


「私が、悔しがると、思いましたか……?」


 シュウスケが俺に問う。

 その言葉には、俺への皮肉が込められていた。

 今更な質問を受けて呆れているようだ。


 確かに今のはナンセンスだった。

 シュウスケの反応が悪いのは最初からだ。

 俺は肩をすくめる。


「それを見たかったんだがね」


「……もしや、そのために、生かしているのですか」


 シュウスケは信じられないとでも言いたげに訊いてくる。

 骨なので表情が読めないが、たぶんそう思っている。

 今度は俺が頷く番だった。


「まあ、そうだな。理性を失ったまま死なれるより、こっちの方がいいだろう?」


「……悪趣味ですね、あなたは」


「よく言われるよ」


 俺は笑い、酒瓶を呷る。


 実際は、蘇ろうとするシュウスケを完全に葬る手段が見つからなかったのだ。

 どれだけ破壊しても時間経過で復活するため、ひとまずは拘束して監視することになった。

 まあ、世界そのものを滅ぼしてしまえば、一緒にシュウスケも死ぬ。

 気にしなくていい問題であった。


 俺は手を打って話題を変える。


「脱出を企んだりしないのか。近くには油断した俺しかいない。チャンスだぜ」


「……冗談は結構、です。脱出できないことくらい、分かっています、から……そもそも、あなたは、油断していない」


「ピンポン、大正解だ」


 悟ったように述べるシュウスケに、俺は嬉々として返す。


 シュウスケにはいくつもの封印術を施していた。

 この城にあった宝物のうち、使えそうなものを惜しみなく使用している。

 見た目では分からないが、相当に入念な拘束だ。

 弱った彼がどのようなスキルを使おうと無駄であった。


 さらに言うなら、現在のシュウスケは心身が崩れる寸前だ。

 コピーしたスキルを使えば、たちまち壊れてしまう。

 それは彼も分かっているため、迂闊な真似はしないはずだった。


 そもそもシュウスケからは、生きる意志が微塵も感じられない。

 既に彼は命を諦めているようだった。

 敗北を認めて、死を待つだけの存在となっている。

 現状がその猶予であると正確に理解していた。


「一つ、聞きたいことが、あります……」


「何だい?」


「どうして、召喚者を殺してきたの、ですか。おそらく、他の方々も訊いたでしょうが……教えていただけると、嬉しいです」


 彼が察した通り、何度も受けてきた質問であった。

 だからすぐに答えられる。


「侮辱だよ。召喚されたあの時、あんたらは俺を馬鹿にしていた。あれが原因だ」


「沸点が低い……と断じるのは野暮、ですね……きっと、あなたにとっては、大切なこと、でしょうから」


「分かってるじゃないか。そういうことだ」


 俺はシュウスケの肩を叩く。

 弾みで彼が倒れそうになったので、慌てて支えた。

 そして壁に寄りかからせる。


「……あなたは、これから世界を滅ぼすの、ですか?」


「ああ。そして元の世界に帰還する」


 俺が答えると、シュウスケは固まる。

 彼は少々の間を置いて喋り始めた。


「送還魔術を、完成させていましたか……意外ですね。ただの愉快犯で、世界を壊す気かと、思っていましたが……」


「趣味と実利の両立ってやつさ。愉快犯ってのもあながち間違いでもない」


「――最低のクソ野郎、ですね。心底から、軽蔑します」


 シュウスケがはっきりと俺を罵倒した。

 そこには怒りや苛立ち、呆れ等、様々な感情がありありと見える。


 ぶつけられた言葉に、俺は笑いながら拍手を送った。


「おっ、ようやく鉄仮面が剥がれたな。その方がお似合いだぜ」


「もう、取り繕う必要も、ありません、からね……」


 シュウスケは力無く呟いた。

 見た目は異形に変貌してしまったが、色々と吹っ切れて心境的には楽そうだ。

 今までのロボットのような言動とは違う。

 皮肉にも、今のシュウスケには人間らしさがあった。

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