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爆弾魔な傭兵、同時召喚された最強チート共を片っ端から消し飛ばす  作者: 結城 からく
第5章 魔王再臨と送還魔術

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第191話 爆弾魔は能力を分析する

 俺はバックステップで後ろへ飛び退く。

 シュウスケの姿が消えたかと思いきや、目の前に現れた。

 そして、宝剣が俺の肩に食い込んでいる。

 血を飛ばしながら、体内に侵入しようとしていた。


(時間を止めた間に斬りやがったな?)


 俺は宝剣の腹に掌底を打ち込み、刃を粉砕した。

 さらに片脚を軸に回し蹴りを放つ。


 シュウスケは寸前で魔術を使い、ガラス状の障壁を割り込ませてガードした。

 彼は衝撃で上空へ跳び上がる。

 そこから無数の突風を発射してきた。


「ハッハ、元気なそよ風だ!」


 地面を切り裂く風を、俺は直感で回避していく。

 それを終えると、サブマシンガンでシュウスケを狙い、引き金を引いて弾をばら撒いた。

 彼に命中した弾丸が反射して戻ってきたので、俺は宙返りで躱してみせる。


 俺達は同時に着地した。

 ある程度の距離から互いを見る。

 再生する肩を回しながら、俺は気楽な調子で分析を述べた。


「スキップされた動作から推測するに、時を止められるのは二秒か三秒といったところか。しかも使用後はインターバルを必要としている。連続発動の負担が大きすぎるんだろう?」


「……あなたの所有スキルにその系統の能力はありませんが、どうやって突き止めたのですか?」


「長年の経験って奴さ。俺は人殺しが仕事だからなァ。観察力の無い間抜けから死んでいく世界だった」


 俺は懐かしみながら答える。

 異世界の日々も愉快だが、当時も楽しかった。

 また味わってみたいものである。


「確か元軍人でしたね。私はその界隈に疎いのですが、さぞ有名だったのでしょう」


「ただし悪名だがね」


 シュウスケの指摘に、俺は意地の悪い笑みを浮かべる。


 あの頃から俺は、爆弾魔の愛称で知られていた。

 厄介者のような扱いだったが、仕事に困ることはなかった。

 なんだかんだで必要とされるのだ。

 それは俺の仕事の成功率も関係しているだろう。


 得意分野である破壊工作や暗殺において、俺はほぼ確実に成功させていた。

 どれほど困難な仕事だろうと最後までやり遂げる。

 問題と言えば、やりすぎで小言を受けるくらいだった。


 だから今回も成功させる。

 目の前の男を始末すれば、めでたくクリアだ。

 俺はかつての記憶から現実に戻ると、シュウスケに告げる。


「先に忠告しておこう。俺を殺したいのなら、出し惜しみはするな。リスクを背負ってかかってこい」


 現在のシュウスケは、戦い方に遠慮が垣間見えた。

 おそらく、スキルの反動を気にしているのだろう。

 魔王とのリンクを切った状態で、コピーしたスキルを乱用したくないに違いない。

 たぶん命にも関わるのだと思う。


 俺の宣言をよそに、シュウスケは涼しい表情で尋ねてくる。


「大した自信ですね。勝算があるのですか?」


「そりゃそうだ。無策でリベンジするほど、俺は馬鹿じゃない」


「では、その策を見せていただきましょう」


 シュウスケは一歩前に出ると、ゆっくりと瞬きをした。

 開いた両目は、爬虫類のように変化していた。

 紫色の虹彩に縦長の瞳孔。

 目が合った瞬間、俺は身体の異常に気付く。


(動けないだと……?)


 足元を見ると、じわじわと灰色に変貌し始めていた。

 質感からして石像のようだ。

 その部位が動かせなくなっている。


「ただの【石化の魔眼 B】だとあなたには通用しませんが、【下剋上 B】でレベル差による抵抗力を奪いました。これでもう動けません」


 シュウスケは解説しながら悠々と近付いてくる。

 これは召喚者のスキルではないが、かなり面倒な部類だ。


 石化現象は既に腰まで到達している。

 さらに這い上がって首元まで迫ってきた。

 このままだと、頭頂部まで達してしまうだろう。


 目の前で足を止めたシュウスケは、手刀を振り上げた。

 身動きの取れない俺を確実に砕き割るつもりらしい。

 その時、彼は何かを察したような顔をする。


「…………っ」


 シュウスケは身を屈めて退避した。

 彼のいた場所を弾丸が通過し、一瞬遅れて銃声が響き渡る。


 背後が見えないが、今のはアリスの仕業だ。

 最果ての城に待機する彼女には、狙撃銃を持たせていた。

 然るべきタイミングで撃つように指示していたのである。


 一方、俺の石化現象は幻だったかのように消失した。

 途端に自由に動けるようになる。


 俺は服をめくる。

 腹には刺青のように魔術刻印があった。

 それを俺はシュウスケに見せる。


「クールだろ? 相棒に付けてもらったんだ。こいつのおかげで状態異常は無効化される」


 シュウスケとの戦いに備えて、事前に付与してもらったのだ。

 アリスが遠隔で起動すると、あらゆる状態異常が治癒される。

 汎用性の高い優れものであった。


 すっかり快復した俺は、伸びをしながら笑う。


「それにしても、上手く狙撃を避けたじゃないか。たぶんミハナの能力で予知したんだろう? ただ、本家と比べるとかなり劣化しているな。常時発動ではない上に、予知のタイミングがギリギリだ。観測できる未来のパターンも少ないんじゃないか?」


 オリジナルである【未来観測 A+】は一分先までを予知していた。

 加えて行動によって分岐する展開も視認できていた。

 シュウスケの持つそれは、ランク低下を受けて効果が弱体化したのだろう。

 おそらく五秒先も観えていない。


 さらに俺の攻撃に対して、シュウスケは防御や回避を織り交ぜていた。

 彼には【完全反射 B】があるのだから、それで全て対処してもいいはずだ。

 それをしないということは、このスキルも連発できない事情があるのだろう。

 召喚者由来のスキルは、特に負担が大きいのかもしれない。


 こうして戦いを重ねることで、俺は徐々に【能力模倣 A+】の性能を把握してきた。

 どう立ち回るべきかも分かってきた。


 考察を重ねる俺をよそに、シュウスケは厳しい眼差しで俺を睨む。


「……さすがです。ほぼ無能力で他の召喚者を殺しただけはありますね」


「もっと褒めてくれてもいいんだぜ。その分だけあんたの墓を豪華にしてやろう」


「間に合っているので結構です」


 そう言ってシュウスケは両手を振る。

 するとそこには、二種の武器が握られていた。


 俺はそれらを目にして声を上げる。


「おお! 銃にカタナソードか! 現代のサムライスタイルってやつかね」


「……あなたはどこまでもふざけるのですね」


 シュウスケは俯く。

 表情が確かめにくいが、苛立っているのは確かだった。

 銃とカタナを握る手に力が込められている。


「それが取り柄なのさ。よくポジティブだと言われるよ」


「…………」


 シュウスケは深々とため息を吐く。

 彼は無言で疾走すると、獣のような鋭さで斬りかかってきた。

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