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爆弾魔な傭兵、同時召喚された最強チート共を片っ端から消し飛ばす  作者: 結城 からく
第5章 魔王再臨と送還魔術

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第174話 爆弾魔は相棒との合流を目指す

「ハァ、クソッタレ……」


 俺は重い身体を引きずるようにして海から陸へと上がる。

 近くにあった岩にもたれかかり、脱力してその場に座り込んだ。

 頭上から照り付ける日光が鬱陶しい。

 しかし、日陰に動くのも億劫だった。

 もう少し体力が回復してからにしたい。


 ずぶ濡れの服を絞りながら、俺は悪態を吐く。


「ったく、溺れ死ぬかと思ったぜ畜生……」


 旧魔族領から脱出して、一体何時間が経過したことだろう。

 海に落ちた俺は、縋る物もなく漂流し続けた。

 たまに泳いだりもしたが、方角なんて分からないのであまり意味が無かった。


 途中、少なくとも二度は朝日を目撃した。

 つまり丸一日以上は海の中にいた計算になる。

 そうしてようやく陸を発見して、何とか到着して今に至る。


 なかなかに過酷なクルーズであった。

 持ち物と言えば、シュウスケから奪い返したリボルバーとポーション爆弾くらいだ。

 食べ物も飲み物もない。

 よく死ななかったものだと自分を褒めたくなる。


『ジャックさん、大丈夫?』


 脳内でアリスの声がした。

 久々の念話である。

 海にいる最中は不安定でまともに話せなかったのだ。

 途切れがちだったアリスの説明によると、魔力濃度が高すぎて環境が悪かったらしい。

 陸に上がったことで復調したようだった。


 俺は岩に服を干しながら応じる。


「念話はまだ繋がってたんだな」


『海水に含まれる魔力をジャックさんが取り込んだおかげね。無事で安心したわ』


「昔から悪運だけは強くてね」


 過去には何度も死にかけたことがある。

 正直、数え切れないほどだ。

 それでも何とか生存してきた。

 トラブルに巻き込まれやすい体質だが、肝心な場面ではしくじらないのが俺である。

 今回もまんまとシュウスケを出し抜くことができた。


「ところでアリスは今どこにいるんだ?」


『ジャックさんのいる場所から少し離れたところよ。誰にも見つからないように待機しているわ』


 それが無難だろう。

 俺は全世界から狙われている。

 同行者のアリスも標的のようなものだ。

 どこにいても危険が付きまとう。

 それならば、少しでも人目に付かない場所を選ぶべきだろう。


「合流はできそうかい?」


『ええ、可能よ。ジャックさんが戻ってくる時間帯を予想して、事前に三つ首を派遣しておいたわ。少し待てば来るはずよ』


「オーケー、了解した」


 さすがアリスだ。

 相変わらず段取りがいい。


 数分ほど待っていると、前方から巨体が猛然と駆けてきた。

 それはやはり三つ首であった。

 三つ首は俺の前で急ブレーキで停止すると、頭を下げて背中を見せる。

 乗れということらしい。

 俺は思わず三つ首の額を撫でた。


「ははは、忠犬だな。今度、ご褒美にペット用のクッキーを焼いてやるよ」


 まだ濡れたままの服を着た俺は、三つ首の背中に飛び乗ってしがみ付く。

 同時に三つ首は走り出し、来た道を戻り始めた。

 ほどなくして近くの森へ飛び込むと、狭い木々の隙間を的確に駆け抜けていく。


「アリス、このまま三つ首に連れて行ってもらえばいいのか?」


『そうね。最短距離で目指してくれるはずよ』


「またシュウスケに感知されないか? せっかくの隠れ家も、居場所が暴かれたら台無しだが」


 俺の懸念はそこだった。

 シュウスケは瞬間移動を使うことができる。

 しかもこちらが感知できないタイプだ。

 何の前触れもなく近くに現れやがる。


 潜伏先に赴いても、奴は平然と追跡してくるのではないだろうか。

 もし再び捕まった場合、同じように脱獄できるとは思えない。

 少なくともアリスは抹殺されるだろう。

 迂闊に潜伏先へ移動するのはリスクが高すぎる。


『そのことなら安心して。ハリマ・シュウスケの感知方法は既に分かっているから。三つ首に対策を施しているわ。ジャックさんの現在地は分からないはずよ』


「確証はあるのかい」


『絶対ではないけれど、ほぼ安全ね』


 アリスは毅然とした口ぶりで答える。

 誤魔化し等はない。

 彼女はいつものように事実だけを述べていた。


「ふむ……」


 俺は三つ首の背中で揺れながら思案する。

 そして頷いた。


「オーライ、相棒の力を信じるよ」


『ありがとう』


「こちらこそ感謝しているさ」


 彼女には何度助けられたか分からない。

 今回もそうだ。

 アリスの助力がなければ、今も旧魔族領に囚われていたところだった。


 利害関係に基づく協力とは言え、俺もアリスも互いのために全力を尽くす。

 否、利害関係だからこそ動けるのだ。

 目的遂行のためには、互いの力が必要不可欠であった。

 故に俺達は信頼し合える。


 その最高の相棒が安全と言っているのだ。

 信じるしかないだろう。

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