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爆弾魔な傭兵、同時召喚された最強チート共を片っ端から消し飛ばす  作者: 結城 からく
第5章 魔王再臨と送還魔術

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第170話 爆弾魔は旧魔族領に囚われる

 混濁する意識。

 鈍い頭痛に顔を顰めながら、俺はゆっくりと目を開ける。


(ここは……)


 薄暗い空間だった。

 空気が湿っぽく、苔の臭いもする。

 光源は前方の蝋燭のみであった。

 どうやらここは地下らしい。


 正面に鉄格子があり、他はレンガ造りの壁で囲われていた。

 おそらくは牢屋だろう。

 この閉塞感がなんとも煩わしかった。


 身動きを取ろうとして、それが叶わないことに気付く。

 現在の俺は椅子に座らされた状態で、両手は後ろに回されていた。

 感触からして鎖が何重にも巻かれている。

 両足や胴体にも鎖が巻かれており、完全に椅子に固定されていた。


「お目覚めですか」


 鉄格子の向こうから声がした。

 そこに立つのはシュウスケだ。

 やはり何の気配もしなかった。

 お得意の瞬間移動を用いたに違いない。


 シュウスケは鉄格子の前で足を止めた。


「ご気分はいかがでしょう」


「おかげさまで最高さ。朝食のメニューが分かれば言うことないな」


 俺は軽口を叩く。

 口が自由に動かせてよかった。

 少なくともこの男に嫌味をぶつけることができる。

 対するシュウスケは真顔で首を横に振った。


「残念ですが朝食はありません。あなたほどの高レベルなら餓死する心配はありませんからご安心ください」


「そいつは朗報だな。素敵な情報をありがとう」


 俺は適当に返しながら、両手の鎖をどうにかしようと動かす。

 今の膂力なら千切れるかと思ったが、びくともしない。

 まるで壊れる気配がしなかった。

 軋む感覚も無く、鎖はただそこに存在している。

 ただの物質ではない気がした。


「それは外せませんよ。膂力で破壊できる性質ではありませんから」


 シュウスケが忠告の言葉を口にする。

 俺が何をしているのか見破ったのだろう。

 愛想笑いを洩らした俺は、軽く肩をすくめる。


「ははは、助言感謝するよ」


「お気になさらず。あなたのために最高品質の拘束具を用意しました」


「拘束具のプレゼントなんてディープな趣味だな。恋人に贈って喜ばれたことでもあるのかい?」


 俺は皮肉るも、シュウスケは反応しない。

 一触即発といった状況でもないのだから、少しくらい付き合ってくれていいというのに。

 それくらいの気遣いは見せてほしかった。

 目の前の召喚者にはユーモアが足りないらしい。

 今更だが俺とは噛み合わないタイプである。


 その時、俺はふとシュウスケの言葉を思い出した。


「そういえば俺を殺すと宣言していただろう。あれは嘘だったのか?」


「はい。あなたを挑発するための嘘でした」


 シュウスケはあっさりと認めた。

 彼にとってはどうでもいいことなのだろう。

 たとえ嘘を茶化したとしても、平然としているに違いない。


「ここは旧魔族領です。ジャック・アーロンさん。ここであなたを矯正して私の戦力になっていただきます」


「ハッハ、なかなか愉快なジョークだ! コメディアンでも目指しているのか?」


「冗談を言った覚えはありません。私は本気です」


 シュウスケは顔色一つ変えずに言う。

 俺は僅かながらも身を乗り出した。

 そしてはっきりと告げてやる。


「俺は協力しない。何を言われようとな」


「同行者が人質になっていたとしても、意見を曲げずにいられますか?」


「つまらないハッタリはよせよ。三流に見えるぜ」


 俺は即座に言い返した。

 シュウスケの顔に嘘のサインが見えたのだ。

 彼ほどの鉄仮面でも、注意していれば直感的に見抜くことができる。

 ここで騙されて動揺するほど俺は間抜けじゃない。


「おっしゃる通り、あなたの同行者には危害を加えていません。あなたをここへ連れてくるので精一杯でした」


 シュウスケは白状するどころか、聞いてもいない実情についても吐いた。

 正直すぎて怪しいが、嘘をついている感じでもない。

 彼としては、ただ事実を述べただけなのだろう。


「私は旧魔族領を支配して、この地に生息する魔物と、放棄された都市や技術を手に入れました。その中には人間を洗脳して奴隷とする方法も含まれています」


「そいつで俺を従わせようって寸法か」


「あくまでも最終手段です。できるだけ穏便な解決ができればと思います」


 シュウスケは事務的に答えた。

 この期に及んで穏便なんて言葉を使うとは、よほど舐められているらしい。

 とことん好きになれない男だ。

 こうして会話をしているだけで殺したくなる。


 ただ、今は忍耐の時間だ。

 ここで感情的になっても仕方ない。

 状況は俺にとって不利すぎる。

 なんとか脱出方法を探して見つけるまでは大人しくしておこう。

 クールでいることが何よりも重要であった。


「――言ってろよクソッタレ」


 奥歯を噛み締めた俺は、心の中で中指を立てた。

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