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爆弾魔な傭兵、同時召喚された最強チート共を片っ端から消し飛ばす  作者: 結城 からく
第5章 魔王再臨と送還魔術

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第169話 爆弾魔は召喚者に翻弄される

 魔槍を振り抜いた俺は、すぐさま異変に気付く。

 そこにシュウスケはいなかった。

 忽然と姿を消したのである。


「どうされましたか」


 気遣うような声と共に、後ろから肩を叩かれる。

 俺は振り向きざまに肘打ちを放った。

 軌道上に立っていたシュウスケは、上体を逸らして回避する。


「死にやがれクソッタレ」


 罵声を発した俺は、魔槍を打ち込もうとする。

 ところがシュウスケはまたもや消えた。

 何の予備動作もない。

 その場から切り取られたようにいなくなっていた。


(野郎……)


 俺は視線を巡らせる。

 シュウスケは少し離れたところに立っていた。

 とても一瞬で移動できる距離ではない。

 今の俺が全力疾走しても不可能だろう。


「諦めてください。あなたでは私に勝てません」


「シャラップ。その口を二度と開かないようにしてやるよ」


 俺は魔槍を振りかぶって跳びかかる。

 今度はシュウスケの姿も消えない。

 それを確信した俺は、踏み込みに合わせて刺突を繰り出す。


 シュウスケは首を僅かに傾けた。

 鋭い穂先が彼の頬を掠める。

 刺突によって一筋の傷ができるも、魔槍を引き戻す頃には塞がり始めていた。


(再生能力を持っていやがるのか)


 新たな発見をしていると、シュウスケがこちらに手を向けてきた。

 手のひらに熱気が収束する。

 危険を察知した俺は飛び退いた。

 直後、シュウスケの手から白炎が噴き上がる。

 その場にいれば、正面から浴びることになっていた。


(再生の次は魔術かよ。どれだけ芸達者なんだか)


 半ば呆れていると、目の前にシュウスケが現れる。

 また謎の瞬間移動だ。

 彼は振り上げた手刀を叩き込んでくる。


「させるかよ」


 俺は魔槍で防御する。

 衝突の瞬間、鈍い金属音が響き渡った。

 それなりの衝撃だが耐えられる。

 大した威力ではない。

 物理攻撃は苦手なのだろうか。


 そう思って押し返そうとした時、シュウスケが眉を寄せる。

 彼は右に動いて不自然に回り込んでくる。

 何かを察したのだろうか。


 俺は意識を周囲に向ける。

 すると、アリスの乗るゴーレムカーが移動していることに気付いた。

 ボンネットに搭載された銃口がシュウスケを狙っている。

 しかし、射線を塞ぐように俺が立っていた。


「なるほどな。卑怯な野郎だ」


「いえ。それほどでもありません」


 シュウスケは、俺を盾にすることで銃撃を防止したのだ。

 近接戦闘を演じながらも、ゴーレムカーの動きをも把握していたのだろうか。

 つくづく癪に障る男である。


「これならどうだ?」


 そう言って俺は魔槍を振り回し、連続で攻撃を仕掛けていく。

 対するシュウスケは、両腕で巧みに受け流し始めた。

 そこには幾分かの余裕が見える。

 さらにスピードを上げても平然と対処してきた。


(おいおい、マジかよ)


 シュウスケの防御術に驚嘆しながらも、俺は魔槍を地面に突き刺した。

 それを軸に遠心力を乗せてハイキックを放つ。

 全力を込めた蹴りだ。

 下手な防御はぶち抜けるだけの威力を秘めている。


「すごいですね」


 称賛の言葉を呟いたシュウスケは、腕を掲げて蹴りをガードした。

 次の瞬間、俺は弾かれたように吹き飛ぶ。


「――ッ!?」


 予想外の結果に脳が混乱する。

 地面を転がりながらも、俺は本能的に姿勢を制御し、なんとか立ち上がることに成功した。

 片脚の訴える痛みに舌打ちする。


(俺が蹴ったのに、俺自身が吹っ飛ぶだと……?)


 シュウスケは依然として同じ位置に立っている。

 理不尽すぎる現象であった。


「ジャックさんっ」


 アリスの呼びかける声がした。

 振り向くと、サブマシンガンが宙を舞っている。

 彼女が俺の方へ投げたのだ。


(さすが相棒だっ!)


 俺は跳躍して、空中で前転しながら銃をキャッチした。

 そのままシュウスケに照準を合わせ、着地までフルオート射撃を行う。


 全弾がシュウスケに殺到した。

 しかし、命中の寸前に弾が消失する。

 期待していた光景は訪れず、シュウスケは不気味に立つままだった。


「お探し物はこちらですか?」


 そう言ってシュウスケは、握り込んだ手を開く。

 手のひらからこぼれ落ちたのは、数十発の弾丸だった。

 間違いなく俺が撃ったばかりの弾である。


 俺は弾丸を掴んで止められたのだと理解した。

 アクション映画やマンガ等で超人が披露するお決まりの芸だ。

 だが、シュウスケの場合は事情が少し異なる。

 弾を掴むまでの一連の動作が、一切視認できていなかった。


 速すぎて目で追えなかったという次元ではない。

 完全に動作がスキップしていたのである。

 棒立ちだったシュウスケは、弾丸を食らうしかなかったはずだった。


(参ったな。一体どうすりゃいいんだ……?)


 俺は内心で苦笑する。

 シュウスケの挙動には、あまりにも謎が多すぎた。

 先ほどから不可解な現象が多発している。

 それらを彼が起こしているのは確実だ。

 しかし、肝心のトリックが分からない。

 多彩すぎて能力を特定することができなかった。


「大丈夫ですか」


 そんな声と共にシュウスケが目の前に現れ、俺のことを掴み上げてきた。

 手を離させようと抵抗するが、びくともしない。

 腹を蹴り飛ばしても駄目だ。

 弾かれて俺の足が痛くなるだけであった。


「ふむ。勝負ありですね」


 シュウスケが淡々と述べる。

 その途端、浮遊感を経て視界が暗転した。

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