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爆弾魔な傭兵、同時召喚された最強チート共を片っ端から消し飛ばす  作者: 結城 からく
第5章 魔王再臨と送還魔術

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第165話 爆弾魔は召喚者の放送に苛立つ

 翌朝、俺達は廃村を出発した。

 アリスはいつも通りだ。

 表面上は特に変化がない様子である。


 彼女の中で、昨日の提案に対する答えは決まったのだろうか。

 かなり気になるところだが、ここで訊くのも野暮というものだ。

 然るべきタイミングで尋ねるつもりだった。

 まあ、世界を滅ぼす際に分かることである。

 どのような答えが聞けるのか、楽しみにしておこう。


 俺達はゴーレムカーと三つ首で移動する。

 都市部を避けて共和国内を進み、昼過ぎには越境する予定だ。

 そこからは人里離れた森を抜けて、大陸の端から海へダイブする。

 あとは海を越えれば旧魔族領に辿り着く。


 ゴーレムカーは水上走行や水中潜航が可能だった。

 この半年間でアリスが改造済みなのだ。

 何から何まで有能すぎる。

 馬車は捨てることになるが、三つ首も泳ぐことくらいはできそうなので同行させられる。


 俺は三つ首の曳く馬車で寝転がる。

 やや振動が大きいものの、慣れれば気にするほどでもない。

 これより遥かに劣悪な環境で休まねばならない時もあった。


 現在は常に暗殺を警戒する必要があるが、それも元の世界では珍しくなかったことだ。

 俺の首にはそれなりの額の金がかけられている。

 命を狙われたことなんて、一度や二度ではなかった。

 酷い時期は、郵便ポストに新聞が投函されるくらいの感覚で襲撃されていた。

 爆弾魔なんて呼び名を付けられるくらいなので、世界中に敵がいるのだ。


(元の世界に戻ったら、まずは面倒な連中の始末から始めるかね……)


 平穏な日々を送るには、障害を排除しなければならない。

 どんな時もまずは働く必要があるのだ。

 なかなかに世知辛いと思う。


 そんなことを考えていると、ゴーレムカーがクラクションを鳴らした。

 上体を起こして確認すれば、アリスがこちらを見ている。


「ジャックさん、召喚者が放送を始めたわ」


「おお、マジか」


 俺は馬車から飛び降りてゴーレムカーに着地し、するりと窓から車内へ入った。

 アリスが運転席の機器を指差す。


「都市部に展開された映像から、音声だけを拾っている状態よ」


「相変わらずハイテクだな」


 アリスの手にかかれば、もはや何でもアリである。

 ファンタジーの技術を超越している気がするが、細かいことは気にしてはいけない。

 実際に彼女が完成させている以上、そこを突っ込むのはナンセンスだ。

 相棒の反則ぶりに呆れていると、機器からノイズ混じりの音声が流れだした。


『皆様こんにちは。ハリマ・シュウスケです』 


 忘れもしない声だ。

 口調は嫌味なまでに平坦で、ビジネスの一環のように落ち着いている。

 きっと顔もドライなのだろう。


『各国の方々がジャック・アーロンの殺害に力を尽くしているようですが、あまり上手くいっていないようですね。正直、残念に思うばかりです』


「ハッハ、勝手に言ってろよクソッタレ」


 俺は棒読みで笑う。

 あんな生温い連中に殺されるわけがない。

 本当に俺を殺したいのなら、あの十倍の数は欲しいところだった。


 ただ、このような状況に陥れたシュウスケには、必ず報いを受けさせる。

 顔面をぶん殴るだけでは済まない。

 泣き顔で謝らせた末に爆弾で木端微塵にするのだ。

 そして豚の餌にしてやる。


『皆様が苦労されているようなので、私も皆様のお手伝いをすることにしました。こうして口頭で提案するばかりというのも、ちょっと偉そうですからね。言ってしまえば一種のパフォーマンスも兼ねております』


 シュウスケは抑揚のない口調でまたもや馬鹿げたことを言ってのける。

 それがひどくミスマッチだった。

 ただ一つ言えるのは、俺達にとって不都合なことが起きようとしていることだろう。

 案の定、シュウスケの声は碌でもないことを述べ始める。


『現在、ジャック・アーロンのもとへ私の配下を派遣しました。旧魔族領で飼い慣らした魔物達です。きっと活躍してくれるでしょう』


「おいおい、何言ってるんだこいつは」


「ジャックさん落ち着いて。まだ話の続きがあるわ」


 苛立つ俺をアリスが宥める。

 機器を蹴り壊したい衝動を抑え、俺は深呼吸で気を落ち着かせる。

 なるべく余計なことは考えないようにする。

 食い縛った歯が軋む音を聞きつつ、俺は音声に集中した。


『尚、私の魔物がジャック・アーロンを殺害した場合、各国に無差別攻撃を行いますのでご注意ください。既に私は魔王の封印を解除しつつあります。その程度のことはできるとお考えください』


 シュウスケは世間話のように世界を脅迫した。

 大それたことをしているはずなのに、まったくそんな感じがしない。

 ひとえに彼の人柄や喋り口調によるものだろう。


『ジャック・アーロンの居場所が分からない方々のために、彼の位置情報を映像にて常にお知らせします。こちらをご参照ください』


「……ひょっとして、映像では居場所が出ているのか?」


「たぶんそうみたい。向こうには優秀な術者がいるようね。それとも彼自身がそうなのかしら」


 アリスが驚いている。

 さすがに彼女も、まさか現在地が特定されているとは思っていなかったようだ。

 きっと魔術で複数の隠蔽工作を行っているのだろう。

 それを突破されているということなのだから、彼女の驚きにも頷ける。


 周囲を見た限り、敵らしき者はいない。

 果たしてどうやって監視をしているのか。

 まあ、各国の上空に映像を出力できるような人間だ。

 今更、何をやっても不思議ではなかった。

 召喚者は不可能なことを平気でやり通す連中である。


『では、今後のゲームがさらに白熱することを願います。それではさようなら』


 それきり機器からはノイズしか聞こえなくなる。

 終始つまらなさそうな調子で、シュウスケの放送は切れた。

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