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爆弾魔な傭兵、同時召喚された最強チート共を片っ端から消し飛ばす  作者: 結城 からく
第4章 二人の召喚者と迷宮の都市

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153/200

第153話 爆弾魔は旅の終わりを感じ取る

 その日の夜。

 俺とアリスは、草原をゴーレムカーで爆走していた。

 車内を流れるハードロックが鼓膜を叩く。

 この暴力的な音がいい。

 眠気も吹っ飛んでくれる。


 後方から追跡してくるのは、新勢力の兵士達だ。

 車両だったり馬のような魔物だったりと、様々な手段で彼らは走っている。

 散々に迷宮都市を荒らし回った俺達を殺すつもりらしい。


「見送りはここまででオーケーだッ! さっさと帰ってバーにでも行ってこい!」


 窓から顔を出した俺は、兵士達に叫びながら爆弾を投げた。

 地面をバウンドした爆弾は、兵士達の眼前で炸裂する。

 爆発音に混ざって悲鳴と断末魔が上がった。

 夜闇の中でも、肉片の飛ぶ様が見えた。


 俺は大笑いしながらアクセルを踏み込む。

 ゴーレムカーはさらに加速した。

 召喚者達との戦いで破損したものの、まだまだ快調である。


「ん?」


 前方でヘッドライトが光った。

 目を細めると、停車した車両に数人の兵士達が乗っている。

 待ち伏せだろうか。

 俺達の逃走ルートを読むとは、器用な連中である。

 感心していると、兵士達はこちらに銃を向けてきた。


「死ねェ、爆弾魔ッ!」


 一斉射撃がフロントガラスを叩く。

 こいつが一般車両なら蜂の巣になっていたところだった。

 無論、ゴーレムカーなら話は別である。

 傷一つ付いていなかった。

 トオルやアヤメの攻撃に比べれば、蝶の羽ばたきみたいなものだ。


「熱烈なラブコールは嬉しいが、デートの邪魔は感心しないぜ?」


 ゴーレムカーが相手の車両に追突し、衝撃で横転させる。

 兵士達が喚くのが聞こえた。

 その横を通り過ぎる際、俺は車両の底部にリボルバーの射撃を加える。

 次の瞬間、車両が爆発炎上した。

 悶え苦しむ兵士達が、火だるまになって地面を転がっている。


 リボルバーを回転させながら、俺は視線を前方に戻す。


「こっちは連戦で疲れてるってのに、空気が読めない連中だ」


「その割には楽しんでいるでしょう?」


「まあな」


 アリスからの的確な指摘に頷く。

 こういう展開は嫌いじゃない。

 神経を使う召喚者との戦いと違い、シンプルに暴れることができるからだ。

 やはり単純明快というのは良い。

 それだけで魅力的である。


 兵士達との戦いを満喫すること暫し。

 やがて彼らの姿が見えなくなった。

 どうやら追っ手の部隊が全滅してしまったらしい。

 何ともあっけない。

 あと三倍くらいの数が来てくれても良かったのだが、向こうもそれほど余裕はなかったようだ。


 俺はゴーレムカーの速度を落とし、ゆったりとしたスピードで夜空の下を走る。

 もう急ぐこともない。

 せっかく今宵は綺麗な星空と月を楽しめるのだ。

 街道ばかりを睨み、猛スピードで走るのは無粋というものである。

 俺は座席に背を預けると、ほっと息を吐いた。


「ようやく落ち着いたな」


「そうね。少し物足りなかった?」


「否定できないが、休暇だってほしいさ」


 ここ最近は、常に気を張るような日々を過ごしてきた。

 たまには息抜きできる時間を挟まねばなるまい。

 心身の健康を維持するのは大事だ。

 目的ばかりを求めて焦るのは良くない。


 現在はエウレアへの帰路に着いている。

 この地でこなすべき目的も終えた。

 あとは拠点まで真っ直ぐ戻るのみだ。


 エウレアに戻ったら、部下を使って最後の召喚者の捜索を行うつもりだった。

 必ずどこかにいるはずだ。

 現状、手がかりはないものの、なんとかして探すしかない。

 これまでの五人も再会できたのだから、六人目も同じ調子でいけるだろう。


 それに加え、召喚者は特異な能力を持っている。

 よほど意識しない限り、自ずと目立つのだ。

 どこの国にいるかも不明だが、こればかりは地道に捜索するしかあるまい。

 そして必ず殺す。

 俺は一度始末すると決めた獲物を逃さない主義だ。

 どんな相手だろうと、地の果てまで追い詰めてやる。


 並行して送還魔術の研究も進めたいと思う。

 召喚者を皆殺しにした暁には、俺は元の世界へ帰らねばならない。

 エウレアにおける権力に加えて、アリスの魔術知識もある。

 研究は滞りなく進行できるだろう。


 この世界も悪くないが、やはり元の世界での生活は捨てがたい。

 ラスト一人の召喚者を仕留めて、早く戻りたいものである。


 俺はポケットから煙草を取り出して口にくわえた。

 ライターを探っていると、赤い小さな火が差し出される。

 アリスが指先に魔術の火を灯していた。


「サンキュー」


「どういたしまして」


 着火した煙草を吹かす。

 紫煙が車外に流れ、風で吹き散らされた。


(異世界で過ごす夜は、あと何回あるのだろう……)


 運転する俺は、星空を見上げてふと疑問が湧く。

 帝都に召喚されてから駆け抜けてきたが、ついに終わりが見えてきた。

 長かったような、短かったような、何とも言えない感覚だ。

 元の世界へ帰るその時まで、この世界を堪能しようと思う。

今回で4章は終了です。

次回から最終章が始まります。

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