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爆弾魔な傭兵、同時召喚された最強チート共を片っ端から消し飛ばす  作者: 結城 からく
第4章 二人の召喚者と迷宮の都市

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第135話 爆弾魔は迷宮を飛び出す

 迷宮内に設けた最初の拠点。

 そこで俺達は出発の準備を行っていた。

 ゴーレムカーに必要な荷物を載せていく。


 不要な物は拠点内に放置だ。

 おそらく回収しに来ることはないだろうが、文句を言う者もいまい。

 危険な迷宮の安全地帯に、居住可能な場所と物資を残していくのだ。

 むしろ感謝されるのではないかと思う。


 これからトオルの殺害計画を開始する。

 手筈は既に確認済みだ。

 アヤメは作戦を憶えているか不安だが、元より彼女に精密な動きは期待していない。

 役割も実にシンプル極まりない。

 不死身の力を存分に活かしてもらう予定であった。


「さて、行くか」


「楽しみね」


「まったくだよ」


 荷物を積み終えたゴーレムカーが出発する。

 運転席と助手席にはそれぞれ俺とアリスが座っている。

 いつも通りのポジションだ。


 アヤメは車体上部に張り付いていた。

 彼女曰く、そこが特等席らしい。

 スピードを肌で感じられるのが良いそうだ。


「あっはははははははっ!」


 今も歓声を上げているが、別に支障はないので放っておく。

 不死身だといちいち気を遣わなくて済むので楽だ。


 道中の魔物を射殺し、地図を確認しながら移動を続ける。

 下り階段もゴーレムカーに乗ったまま強引に進んでいった。

 サスペンションが機能しているので振動はマシだ。


 やがて目的の地点に着いたゴーレムカーが停車する。

 そこはただの行き止まりだ。

 何かしらのギミックがあるわけでもなく、本来なら引き返すしかない。


「方角は合っているか?」


「ええ、問題ないわ」


「オーライ、それじゃあ行こうか」


 俺は運転席に新設された赤いレバーを引く。

 すると、ゴーレムカーの前部が変形を始めた。

 ボンネットが展開して、巨大なドリルが顔を出す。

 表面には術式がびっしりと刻み込まれている。


「アヤメ、一旦戻れ」


「はーい」


 返事をしたアヤメが車内に戻ったのを見計らい、俺は車両を前進させた。

 同時にドリルが高速回転し、その先端を壁に突き込む。

 次の瞬間、ドリルは火花を散らしながら猛速で壁を削り始めた。

 瓦礫を押し退けて豪快に掘り進んでいく。


「ははは、絶好調だな!」


 俺は笑いながらハンドルを操る。

 この巨大ドリルは、此度の作戦のために製作されたものだ。

 迷宮の壁の破壊だけに特化している。


 現在のゴーレムカーは、今までと比べて馬力が上がっていた。

 以前までもドラゴンの心臓を使うことによって無尽蔵のエネルギー供給を実現したが、今回の魔改造でさらにハイグレードな車両となった。

 迷宮のボスクラスの魔物の心臓をいくつも搭載し、基礎スペックの向上に成功している。


 本来、迷宮の壁はほとんど破壊できない。

 表面はまだしも、それ以上は不可能らしい。

 ところがゴーレムカーのドリルは、その圧倒的なパワーで強引にぶち壊していく。

 アリスがそのように細工したのである。


 ゴーレムカーはトンネルを作りながら突き進む。

 方角についてはアリスに一任していた。

 たまに微調整の指示を受けながらも走行し続ける。


 そのまま移動すること暫し。

 轟音を立てて壁が崩れると、その先に薄暗い通路が見えた。

 ついに別の迷宮に繋がったのだ。

 見た目は俺達のいた迷宮と大差ないが間違いない。


 これこそが計画の肝である。

 地上に出ると新勢力に襲われると分かっているため、それぞれの迷宮を経由して進むことにしたのだ。

 巨大ドリルもそのためのアタッチメントであった。

 これならば大した邪魔を受けずに移動できる。


「よしよし、計画通りだな」


「そうね」


 今からこの迷宮を潜り、爆弾を仕込むのに適切な場所を探っていく。

 アリスが魔力を感知してくれるので、俺は基本的にゴーレムカーを走らせるだけだ。

 一方でアヤメは車外に出て車両の護衛してもらう。


「ちょっと待って」


 アリスが懐を探り、赤い液体の入った小瓶を取り出した。

 彼女はそれをアヤメに手渡す。


「一時的に膂力を底上げするポーションよ。車両の護衛、お願いね」


「わーい! ありがとう!」


 喜ぶアヤメは、その場で一気飲みした。

 あっという間に小瓶を空にする。

 少し顔を顰めているのは、ポーションの苦みのせいだろうか。


 続けてアリスは、彼女の額に手を当てた。

 仄かに光が灯って、消える。


「魔術付与も施しておいたわ。いくら不死身でも、怪我には気を付けるように」


「うん、わかった!」


 アヤメは元気に返事をすると、私物のナイフを携えて車外へ出た。

 彼女が目を光らせている間は、魔物だろうが人間だろうが速やかに解体される。

 俺達が止めようとしてもお構いなしだ。

 歓喜しながら突撃して殺戮を披露してくれる。

 どこまでもハッピーな殺人鬼であった。


「……ポーションと魔術付与は効いたかい?」


「どちらも効果が出ているわ。強化幅が大きい気がするけれど、たぶん彼女の体質ね」


「そうか。まったく、頼りになる護衛だぜ」


 こちらの考えなど知らずに、車外でアヤメはテンションを上げている。

 それを眺める俺は、喉を鳴らして笑った。

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