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爆弾魔な傭兵、同時召喚された最強チート共を片っ端から消し飛ばす  作者: 結城 からく
第4章 二人の召喚者と迷宮の都市

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第131話 爆弾魔は不意を突かれる

「きゃはっ」


 甲高い笑いを上げた女が、豪快な踵落としを決めてくる。

 俺はそれを前腕でガードした。

 同時に蹴り込まれた脚を掴むと、そこから持ち上げて地面に叩き付ける。


 地面に衝突した女は、血飛沫を弾けさせた。

 手足が痙攣し、割れた頭部からは脳漿が覗く。

 普通なら間違いなく即死だろう。


「あははっ」


 当然のように笑う女は、両腕を使って身体を反転させた。

 俺が足首を掴んでいるため、膝が砕けて捩れる。

 激痛が走っているはずなのに、女は笑顔を絶やさない。

 潰れた顔面を晒しながら、彼女は嬉々として掴みかかってきた。


「……チッ」


 俺はそこに容赦なくアッパーをお見舞いする。

 拳のクリーンヒットにより、女の頭部が爆散した。

 血みどろの物体が撥ねる。

 女は万歳をしたまま後ろへ倒れていった。


「うふふうふふふ…………」


 倒れる間にも、頭部の再生が始まっていた。

 まるで映像の巻き戻しだ。

 瞬く間に元通りの状態へと修復していく。

 女は深い笑みを湛えていた。


 俺はそこに蹴りを浴びせる。

 再生しかけた頭が砕けて飛散した。

 さらに倒れた胴体を連続で踏み潰す。


 女の全身が損壊する。

 しかし、俺は攻撃を止めない。

 現在進行形で再生が行われているからだ。

 油断すると、反撃のために動き出そうとする。


「ったく、とんでもない女だなッ」


 俺は踏み付けを繰り返しながら悪態を吐く。

 このままだと埒が明かなかった。

 いつまでも攻撃を続けるわけにはいかない。


「アリス!」


「任せて」


 アリスが後ろから顔を出した。

 入れ替わるようにして、俺は飛び退く。


「アハッ、あうああああ……っ」


 ズタボロの女は素早く起き上がり、両腕を突き出して迫り来る。

 その姿は誇張なくゾンビそのものであった。


「近付かないで」


 アリスの放った魔術の炎が、女に直撃した。

 瞬時に燃え上がる身体。

 女は狂笑を上げながら接近を強行する。

 全身が炭化する苦しみをよそに、アリスに跳びかかろうとしていた。


「おい、こっちだ」


 俺はその横面に全力で蹴りを入れる。

 女はロケットのような勢いで吹っ飛び、ノーバウンドで岩壁に激突した。

 衝撃で四肢が千切れて転がる。

 燃えたことで脆くなっていたのだろう。


「ヘイ、こいつでどうだ?」


 俺は遠巻きに女の残骸を眺める。


 バラバラになったうちの一つが、ひとりでに蠢いた。

 まるで新鮮な魚のようにビチビチと音を立てる。

 あれは右腕だろうか。

 断面から人体が生えて、あっという間に女の姿を形成していく。


「追撃するわ」


 すぐさまアリスが魔術を行使した。

 立ち上がる女に炎の矢が次々と命中する。

 突き立った矢から、さらに火が噴き上がった。


「あはっ……あはははははは……」


 女は平然と歩み寄ってくる。

 彼女は燃えながらも再生していた。

 しまいには表情まで分かるようになる。

 炎上による損傷を超える速度で治癒されているのだ。

 気のせいか、先ほどよりも上機嫌に見える。


「ははは、参ったな。完全にブッ飛んでやがる。見くびっていたわけじゃないが、反則すぎやしないかい?」


 迫る女を目の当たりにして、俺は思わず苦笑する。


 いくらダメージを蓄積しても、再生能力は衰えない。

 こうなると拘束するしかないだろう。

 破壊した肉体を素早く縛り付けるのだ。

 アリスの魔術によるサポートがあれば、それも可能と思われる。

 ストレートに殺せないのは残念ではあるが、今はそれしかできない。


「よし。とことんやってやろうぜ」


「手伝うわ」


 そうして走り出そうとしたその時、女が急に歩みを止めた。

 彼女はぶるぶると小刻みに震えている。


「うあ、ああああぁっ……、ああ……あッ」


 呻き声を発する女は、突如として背筋を伸ばした。

 そこから微動だにせずに呻き続ける。

 俺とアリスは警戒して接近を中断した。


「何かの攻撃の前触れか?」


「気を付けて。蓄積した傷を跳ね返す能力かも」


「その可能性はあるな」


 だとすれば相当に厄介だ。

 これまでに与えてきたダメージは膨大である。

 一気に解き放たれた場合、この階層が吹き飛ぶ危険も孕んでいた。

 俺は肉体の耐久性からして無事だろうが、アリスが負傷してしまうかもしれない。

 その際は何とかして庇わなければ。


「あ、ああああ……ああ、ぁ……っ」


 女の呻きは叫びへと変わる。

 それが最高潮に達した瞬間、彼女は腰を直角に曲げて頭を下げた。


「わたしと、付き合ってくださいッ!」


「…………は?」


 俺は予想外の言葉に思わず呆ける。

 聞き間違えだろうか。

 アリスも虚を突かれたような表情をしているということは、耳がおかしくなったわけではなさそうだ。

 ちらりと顔を上げた女は、俺からの返事を待っていた。


「…………」


 不意に頭痛を覚えた。

 芯に響くような深い頭痛だ。

 俺は深々とため息を吐く。


「――とりあえず服を着ろよ。こっちは裸の女と会話を楽しめる心境じゃないんだ」


 うんざりとした口調を隠さず、俺は召喚者の女に告げた。

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い、イカれてやがる・・・・・・・・
殺し愛、って、やつ?(白目)
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