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爆弾魔な傭兵、同時召喚された最強チート共を片っ端から消し飛ばす  作者: 結城 からく
第4章 二人の召喚者と迷宮の都市

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第130話 爆弾魔はまたもや再会する

 相手の正体を認めた瞬間、俺は拳銃に意識を注いだ。

 照準を額に合わせながら告げる。


「悪いがここは、俺達のプライベートフロアなんだ。休憩なら他をあたってくれるかい」


「うふふふふふ……」


 女はこちらを見て不気味に笑う。

 爛々と輝く目は、完全に正気が吹っ飛んでいた。


 それを理解した俺は肩をすくめる。


「ありゃ駄目だ。頭がハッピーになってやがる」


「話し合いはできないようね。どうするの?」


 アリスの言葉に、俺は獰猛な笑みで応じる。


「決まっているさ。ここで始末する」


 言い終えると同時に、俺は拳銃を発砲した。


 女は避けない。

 弾を額に食らって仰け反った。

 そのまま倒れるかと思いきや、寸前で停止する。

 彼女はいきなり元の姿勢に戻ると、狂ったように笑い出した。


「あはぁっ!」


 額に穴の開いた女は駆け出す。

 その手には刃物が握られていた。

 湾曲した特徴的な形状の刃を見るに、あれはククリナイフだ。

 分厚い刃は、人体くらいなら容易に斬り飛ばせるだろう。


 俺は拳銃の二発目を撃つ。

 女はククリナイフで弾いて防御した。

 そこから速度を落とさずに接近してくる。


 俺はアリスを庇う位置に立った。

 肉弾戦の間合いに侵入してきた女は、首を狙ってククリナイフを振るってくる。

 俺は屈んで躱し、遠心力を乗せて蹴りを放った。


 蹴りは女の顎に炸裂した。

 命中箇所の血肉が爆散する。

 余りある威力が粉砕したのだ。

 女は血を吐きながら浮き上がると、そのまま湖へ落下する。


「さて、今のは効いたんじゃないか?」


 俺は脚を下ろして息を吐く。

 常人なら重傷だ。

 口部が丸ごと吹き飛んでいた。

 もう喋ることは叶わない構造になったはずである。


 まあ、今ので死なないことは知っていた。

 帝都跡での出来事が頭を過ぎる。

 俺は油断せずに湖を眺める。


 やがて湖から無数の泡が浮かんできた。

 それに合わせて、女が水を滴らせながら登場する。

 彼女の口元には笑みが張り付いていた。


「うふ」


 蹴りで原形を失ったはずの顎は、骨と肉が盛り上がって傷を塞ぎかけていた。

 さらに、じわじわと皮膚が広がってそれらを覆い隠す。

 全治数カ月でも足りない損傷だったはずなのに、跡形も消えてなくなってしまった。


「まったく、とんだゾンビ野郎だ。やはり不死身なのか」


「再生能力ね。それもとんでもない速度よ。攻撃を受けたそばから治癒されているわ」


 さっそくアリスが考察を挟む。


 再生能力とは、またファンタジーらしい能力だ。

 もっとも、それくらいなら俺にも可能である。

 ドラゴンを倒した際に得たスキルの効果によって、傷の治りは非常に速い。

 おまけに高レベル補正も受けているため、骨折くらいならその場で自動的に回復させられる。


 そう考えると、召喚者の固有スキルにしては弱そうだ。

 今までに出会った連中が強すぎるのもあるだろう。

 しかし、そうして結論付けるのも早い気がした。


 召喚者の女に関しては、帝都跡での戦闘がある。

 爆弾の直撃で木端微塵になっても無事なほどの再生能力とすると、それは十二分に脅威と言えよう。

 実質的に殺すのは不可能ということになる。


 今までの召喚者は、確かに反則気味の能力を持っていた。

 ただ、その能力の対処さえできてしまえば、殺せる人間ばかりだった。

 実際に三人もの召喚者を殺した俺が言うのだ。

 これは間違いない。


 目の前の女の場合は違う。

 どうやって殺すかではない。

 殺す方法がないのだ。


 無論、能力の詳細が分からないうちの断定はナンセンスである。

 何らかの制約や代償があるかもしれない。

 それを今から見極めなくてはいけなかった。


「オーケー、なかなかハードな仕事じゃないか」


「私も援護するわ。前衛は任せてもいいかしら?」


「もちろんさ。ぶっ飛ばしてやるよ」


 俺はアリスと言葉を交わす。

 コンビネーションに関しては、今更どうこう打ち合わせることもない。

 既にアドリブで動ける仲だった。


「あはっ!」


 女がククリナイフを投擲してきた。

 俺は飛んでくるそれをキャッチし、回転して投げ返す。


 対する女は無造作に手を伸ばす。

 俺の真似をするつもりなのだろうか。

 ククリナイフは、女の指をまとめて切り落とした。

 そのまま彼女の頸動脈を裂き、湖へダイブする。


「はっはははははあは、はははは……っ」


 女は首から鮮血を噴きながら笑う。

 切り落とされた指の断面が蠢いていた。

 何かの冗談のように骨が生える。

 そこに纏わり付くように肉が膨らみ、皮膚が広がって爪も伸びた。

 ものの数秒もかからずに指が再生する。


「ハッハ、ユニークな能力だ」


 呆れた再生スピードを前に、俺も笑うしかない。

 その光景には、本当に不死身なのではないかと思わせるだけの説得力があった。

 しかし、そういった些細なことはどうでもいい。

 一つ素晴らしい解決策を閃いたのだ。

 あの女を殺すための手段である。


 俺は拳銃を仕舞うと、両手の指をバキバキと鳴らした。

 視線と意識を召喚者の女に殺到させる。


「――再生できなくなるまで、スクラップにしてやるよ」

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