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爆弾魔な傭兵、同時召喚された最強チート共を片っ端から消し飛ばす  作者: 結城 からく
第4章 二人の召喚者と迷宮の都市

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第129話 爆弾魔は不意の来訪者に身構える

「ふぅ、できた」


 俺は集中を解いて、完成したばかりのものを机の上に置く。

 それは甲殻に包まれた爆弾だった。

 野球ボールより一回り大きい。

 強い衝撃を与えると炸裂する仕組みとなっている。

 体感だと標準的な手榴弾くらいの威力はあった。


 この爆弾の素材はすべて迷宮で仕留めた魔物で、非常にコストパフォーマンスが良い。

 迷宮内ならほぼ無限に作れてしまうということだ。

 プロトタイプとしては上出来だろう。

 派生させれば様々な応用ができる。


 俺は椅子の背もたれに寄りかかった。

 手を組んで伸びをしながら考え事に耽る。


 迷宮の安全地帯に仮拠点を建築してから数週間が経過した。

 時間を知る手段がないため正確な日数は不明だが、たぶんそれくらいは経っているだろう。


 改築を経たこの建物は、それなりに住める場所になった。

 まず室内に木製の家具が増え、区切りとなる壁も作っていくつかの部屋に分けた。

 アリス作の魔道具も設置されたことで、かなり文明的な生活ができるようになっている。

 既に二人で暮らすには不自由のないレベルとなっていた。


 正直、この辺りはアリスの力が大きい。

 俺は力仕事くらいしかしてなかった。

 もし一人でこの状況に立たされていたら、もっと原始的な暮らしになっていたと思う。


 今のところは新勢力による襲撃も無かった。

 連中は俺がこの迷宮にいることは知っている。

 それにも関わらずやって来ないということは、追跡するにはリスクが高いと判断したのだろう。

 目論見通りの展開である。

 この調子で大人しくして待ってくれることを祈っておこう。


 爆弾の細部を確かめていると、部屋の扉がノックされた。

 入ってきたのはもちろんアリスだ。

 彼女は机に並ぶ爆弾を見る。


「もうできたの?」


「ああ。このクオリティーなら実戦でも使えそうだ」


 ただ、召喚者の少年を相手にするには無力だ。

 あくまでも他の兵士や魔物を倒すのに便利といった程であった。

 少年を殺傷可能な武器は限られている。

 それでもいずれ揃えなくてはならなかった。


 俺は爆弾を弄びながらアリスに質問する。


「ところで、例のアレはできたかい?」


「ええ、問題なくできたわ。はいどうぞ」


 そう言ってアリスが手渡してきたものは、五発の弾丸だった。

 表面が仄かに赤く、見た目に反して軽い。

 これは魔物の素材だけで製造された銃弾だ。

 残弾数が気になった俺が、彼女に作製を頼んだのである。

 弾が無ければ銃なんてガラクタになってしまう。


 俺は拳銃から弾倉を抜き、受け取った弾丸を装填してみた。

 サイズはぴったりだ。

 そのまま弾倉を拳銃に戻す。


「さっそく試射するかね」


 俺は椅子から立ち上がって拠点の外へ出た。

 アリスと共に隣接する湖の空間へ移動する。


 静かな湖の近くで、俺は拳銃を構えた。

 銃口は湖面を狙う。

 目を凝らすと揺らぎが見えた。

 魚が泳いでいるのだ。


「…………」


 俺は引き金に指をかけて沈黙する。

 そして、タイミングを見計らって発砲した。


 いつもより幾分か強めの衝撃が腕に伝わってくる。

 放たれた弾丸は、水音を立てて魚に命中した。

 腹に穴の開いた魚が水面に浮かび上がる。


「悪くないな。いい弾だ」


 俺は結果に満足する。

 発砲時の反動がやや強めだが、俺が使う分には狙いもずれない。

 威力も申し分なかった。


 さすがはアリスだ。

 これだけのものを作れるなんて、非常に頼りになる。


「時間がある時でいいから、数を揃えてもらえるかい」


「もちろんいいわ。任せて」


「助かるよ」


 そんな会話をしていると、部屋の出入り口から人の気配がした。

 そこは別の階層に繋がっている場所だ。

 まだ距離はあるものの、確実に誰かが近付きつつある。


「ジャックさん」


「ああ」


 警戒するアリスに頷いてみせる。

 彼女も気付いたらしい。

 おそらくは感知系の魔術を使ったのだろう。


 俺は渡されていた弾丸を残らず装填した。

 いつでも撃てるように拳銃を構える。


(冒険者か? こんな場所まで来る奴は今までいなかったが……)


 この迷宮を利用する冒険者は、だいたいが地下六階くらいまでしか訪れない。

 それ以上はかなりの少数派だ。

 魔物に殺されるリスクを考えて、浅い層のみの探索に絞っているのである。

 だからこそ、俺達は平穏に暮らすことができていた。


 やがて足音が聞こえてくる。

 謎の来訪者は、一定のテンポで進んでいる。

 慌てている様子はなく、まるで迷宮を歩く者のそれではなかった。

 端的に述べると警戒心が感じられないのだ。

 かなり無防備な調子であった。


「…………」


 俺達は沈黙して来訪者を待ち構える。

 やがて人影が見えてくる。

 揺れる赤いマフラーに艶やかな黒髪。

 通路を抜けて現れたのは、帝都跡で再会した召喚者の女であった。

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