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爆弾魔な傭兵、同時召喚された最強チート共を片っ端から消し飛ばす  作者: 結城 からく
第4章 二人の召喚者と迷宮の都市

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第127話 爆弾魔は地下迷宮に潜む

「……眠いな」


 俺は大欠伸を洩らす。

 目尻に滲んだ涙を拭い、なんとなしに辺りを見回す。


 そこは広い空間だった。

 地面も壁も天井も岩で構成されている。

 そばには湖があり、血みどろのゴーレムカーが畔に停まっていた。


 近くに座るアリスは、焚き火で魚を焼いている。

 湖で釣ったものだ。

 額には針のような角が生えており、分類上は魔物になるらしい。


 ここは迷宮の地下十階だ。

 参謀こと召喚者の少年を振り切った俺達は、都市内における最難度を誇る迷宮へ潜った。

 迷宮自体が天然の要塞となるためである。

 しばらくはここで生活して、少年の殺害方法を考えながら準備を進めることになった。

 破損したゴーレムカーの修理も並行して行うつもりだ。


 幸いにも迷宮では物資に困ることが無い。

 魔物や財宝が無尽蔵に自然発生してくれる。

 それらを活用するには知識と技能が必要だが、俺にはアリスがいる。

 何ら問題は無かった。


 俺は手頃な岩に腰かけて、銃のメンテナンスをする。

 この世界の銃は、内部構造の一部に魔術を採用していた。

 仕組みはやや難解だが、必要知識として習得している。

 元の世界で培った知識も役立っていた。


「ふむ……」


 入念にチェックしたが、故障は見当たらない。

 使用した弾に問題があったわけでもなかった。

 少年と戦っていたあの場面のみ、銃が不調になっていたのだ。


 ちなみにゴーレムカーも同様である。

 アリスに調べてもらったが、動作不良に陥るような故障はなかった。

 一時的に魔術が使えなくなった彼女も、現在は支障がない様子だった。


 あれは間違いなく少年の能力によるものだ。

 どれか一つなら不運な偶然で済むが、こうも重なると異常すぎる。

 間違いなく何らかの妨害が行われていた。


 では、一体何をされたのか。

 実を言うと、大まかには予想がついている。

 今回は推測が簡単にできる部類だ。

 ヒントもたくさんあった。

 油断はできないが、おそらく何とかできるだろう。


 ただ、一つだけ問題がある。

 能力についての予想が正しかった場合、迷宮での対決は不適切だった。

 ここは全体的に狭い。

 広い場所もあるのだが、少年との戦いを想定すると不十分と言える。

 街中で繰り広げたチェイスの時のように、逃げながらも一方的に攻撃される展開になってしまう。


 正面戦闘で打ち勝つのは非常に厳しい相手だ。

 やはり召喚者は、反則的なスキルを持っている。


 だから準備を整えたら再び地上へ向かう。

 そこから殺害を実行する予定だ。

 広いスペースで仕掛けられるのが望ましい。


 ここで厄介なのが、俺達の準備が終わるまでに少年が迷宮内まで追いかけてくるパターンだろうか。

 彼の力なら下層まで平然と降りて来られる。

 遭遇すると面倒では済まされない。


 ただ、その可能性は低いと思っている。

 まず迷宮探索にあたって、少年は大人数を動員できない。

 彼では部下を守り切れないからだ。


 アリスによると、この迷宮は難度が非常に高い。

 実際、このエリアに来るまでに遭遇した魔物はどいつも強力だった。

 罠も悪辣なものが多発する。

 犠牲者数を抑えるようにすると、少年は必然的に少人数か単独での探索をすることになる。

 この広大な迷宮において、それはあまりにも非効率的だろう。


 おまけにこちらにはアリスがついている。

 彼女は隠密効果のある魔術を行使することも可能なのだ。

 逃走生活を続けるのは容易い。


 二つ目の理由として、少年は俺達を警戒している。

 絶対の自信を持っていたのにも関わらず、彼は逃走を許してしまった。

 俺達はただの無力な獲物から、気を抜けない獲物にグレードアップしたわけである。


 少年は新勢力の参謀だ。

 権力闘争に加えて、周到な根回し等も行える人間だ。

 一時の感情に駆られて暴走するタイプではない。

 迂闊に追いかけてはいけないと判断すると思われる。


 そして少年は、自分の能力が無敵ではないと知っている。

 だからリスクを背負ってまで迷宮に潜り込むことをしない。

 彼だって慢心によって殺されたくはないだろう。


 おそらくは地上で俺達を迎え撃つ準備を始めるはずだ。

 俺達は迷宮に逃げ込んだわけだが、ここから脱出するには必ず地上の都市に向かう必要がある。

 少年はそこで攻撃すればいいのだから。

 彼の立場で考えれば、わざわざ危険な迷宮に潜る手間も省ける。


 俺の見立てが正しいのなら、少年とは奇遇にも決戦を望むタイミングが一致する。

 もちろん今の考えには推論が多く含まれている。

 最悪のパターンが起きても対処できるようにするつもりだ。


「ジャックさん、できたわ」


 アリスの声で我に返る。

 見れば魚が焼き上がっていた。

 俺はメンテナンスを終えた銃を置いて立ち上がる。


「おお、いい匂いだな」


「塩で食べると美味しいわ」


 アリスから手渡された焼き魚を受け取った。

 そして、食欲の赴くままに食らい付く。


 ひとまずの方針は定まった。

 まずは腹ごしらえとしよう。

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