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爆弾魔な傭兵、同時召喚された最強チート共を片っ端から消し飛ばす  作者: 結城 からく
第4章 二人の召喚者と迷宮の都市

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第124話 爆弾魔は少年の能力に晒される

 ハンドルを強く握って姿勢を維持し、激しい揺れに耐える。

 一瞬、車体が傾いた気がした。

 サスペンションを貫いた衝撃が、座席越しに伝わってくる。


 少年が殴ったことにより、車内にはガラス片が散らばっていた。

 積んだ荷物には影響ないものの、これは掃除が大変だ。

 車体後部は大きく陥没している。

 走行には問題ないが、修理には手間がかかりそうだった。


「ははは、こいつはひでぇな」


「ごめんなさい、搭載した防御機能が作動していないみたい。不具合が起きているようだわ」


「気にするな。そういう時もある」


 申し訳なさそうなアリスをフォローする。

 彼女に非はない。

 向こうが何かをしているのは確実だ。

 爆弾の挙動がおかしかった時点で察している。

 諸々の不調にアリスの責任はなく、少年をぶちのめす他あるまい。


 ゴーレムカーがボンネット付近からアームを展開し、前方の壁を掴んでは引いて車両の減速を防ぐ。

 合わせて俺は運転席のレバーを動かして、なぜか機能しない後輪の代わりに前輪を駆動させた。


 二重の対策により、落ちたスピードが復活してくる。

 こちらの機能はまだ生きているらしい。

 複数のゴーレムで構成されていなければ、為す術もなく停車を強いられていただろう。

 ハイテクな車両で良かった。


 少年はゴーレムカーにしがみ付いていた。

 装甲を掴んで辿り、運転席へ近付こうとしている。

 ハンドルを左右に切っても、振り落とせる気配ではなかった。


「ははは、強引なヒッチハイクだ。いや、これはもうカージャックか?」


 俺は喉を鳴らして笑う。

 強引すぎる手段だ。

 俺達を逃がさないという強い意志が窺える。


「ジャック・アーロン!」


「呼んだかい?」


「よくも僕達を殺そうとしたな……ッ! エウレア代表になったと知った時は驚いたが、まんまと会いに来てくれてよかったよっ!」


 少年は激昂しながら拳を叩き込む。

 後部座席の扉が変形した。

 連結部が歪み、放っておくと外れそうな状態になる。


「そうかそうか」


 俺は相槌を打ちながら、ナイフを投擲した。

 少年は腕を掲げる。

 ナイフは彼の肘辺りに当たって弾かれた。

 しっかりと投げたのに刺さらない。

 角度も悪くなかったのだが、不可解だ。


「お前といいゾンビ女といい、どうして愛車を傷付けるんだ?」


「まさか、アヤメさんを見たのか! どこで会った!?」


 少年は俺の言葉に強く反応する。

 手を止めた彼は、必死の形相で尋ねてきた。

 俺はニヤニヤと笑みを洩らす。


「おや、親しい間柄か。ひょっとしてガールフレンドかい?」


「ち、違う! 短期間だけど一緒に行動していただけで――」


「隙ありだ」


 動揺する少年を見て、俺は拳銃を連射する。

 少年は脇腹や足腰に弾を食らった。

 血を飛ばしながら仰け反る。

 俺は苦悶する少年を嘲ってみせた。


「サイコキラーに恋するもんじゃないぜ? 火傷どころじゃ済まなくなる」


「く、くそ……」


 少年は悪態を吐く。

 彼はあちこちから出血していた。

 被弾しているというのに死なないのは、高レベル故の生命力によるものか。

 弾丸は貫通できなかったようだ。


「さすがジャックさんね。とても真似できないわ」


「そんなことを言わずに、いつか試してみるといい。これが意外と癖になるんだ」


 アリスと会話をしつつ、俺は少年の動きを観察する。

 傷付いているが、致命傷ではなさそうだ。

 行動に大きな支障はないように見える。

 彼はじりじりと接近を再開していた。


 ゴーレムカーの後輪はまだ復帰しない。

 俺は弾切れの銃のリロードを行う。


「野郎、しつこいな。なかなかタフだ」


「え……」


 不意にアリスが声を発する。

 深刻な表情だ。

 彼女がここまでのリアクションを見せるのは初めてかもしれない。

 さすがに気になった俺は彼女に尋ねる。


「どうした?」


「魔術が、使えない。そもそも魔力を感じられない……車両全体が機能不全に陥っているわ」


「妙だな。何かされたみたいだ」


 俺は隠すことなく舌打ちする。

 ゴーレムカーのアームと前輪も停止していた。

 エンジン自体も機能しておらず、またもや減速し始めている。


 異常事態が深刻化していた。

 車両全体どころか、アリスの技能が封じられるとは予想外である。

 少年が何らかの能力を発動しているのは間違いなかった。

 早く止めなければ、状況がどんどん悪化してしまう。


「ここは任せてくれ。俺が何とかしよう」


「ええ、お願いするわ」


 悔しそうなアリスは素直に応じる。


 リロードを完了させた俺は、銃口を少年に向けた。

 そして、すぐそばまで迫る少年に告げる。


「ヘイ、ボーイ。悪質なイタズラは感心しねぇなァ?」


「だ、黙れ……」


「それはこっちのセリフだ。二度と口を開けないようにしてやるよ」

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