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爆弾魔な傭兵、同時召喚された最強チート共を片っ端から消し飛ばす  作者: 結城 からく
第4章 二人の召喚者と迷宮の都市

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第123話 爆弾魔は追走劇を繰り広げる

 少年は悠然とこちらへ歩いてくる。

 俺を見ても怖がらず、それどころか堂々とした態度だ。

 トラックを投げ付けてきたのはあいつだろう。

 手段は不明だが、妥当なところを挙げるなら魔術か怪力か。

 どちらでもおかしくない。


 近付いてくるということは、俺達に勝利する算段があるということだろう。

 向こうのやり方に合わせるのは危険だ。


 俺はアクセルを踏み込んでゴーレムカーを急発進させた。

 トラックに塞がれた道とは別のルートを使い、すぐさま少年から離れていく。


「彼が参謀なのかしら」


「おそらくな」


 少年が召喚者であることは間違いない。

 あの顔は憶えている。

 異世界召喚をやけに喜んでいたのが印象に残っていた。

 喜ぶだけあって、現在ではかなりの地位に就けたようである。

 彼の年齢を考えると大した出世だろう。


「それで、どこへ行けばいいんだ」


「このまま口頭で案内するわ」


「了解。任せたぜ相棒」


 頷いた俺は運転に集中する。

 遠慮ない猛スピードなので、事故を起こさないように気を付ける。

 どこかにぶつかって横転なんてしたら目も当てられない。


「そこを右よ」


 アリスのナビゲートに従って右折する。

 数秒後、サイドミラーに少年が映り込んだ。

 彼は全力疾走で追いかけてくる。

 人間の走りとは思えないほどの加速であった。

 スピード勝負で振り切るにはやや厳しそうだ。


「あの身体能力……ジャックさんほどではないけれど高レベルね。おそらくレベル100は超えているわ。魔力量は人並みだから、物理攻撃に特化しているみたい」


「つまり、怪力の持ち主ってわけか」


 先ほどのトラック攻撃も、力任せに投げてきたようだ。

 膂力に自信があるからこそ、近距離戦に持ち込みたいらしい。

 確かにそれだけで十分な脅威だ。

 真っ当な戦法と言える。


 運転の傍ら、俺は少年に向けて拳銃を撃った。

 少年は迫る弾丸に反応し、寸前で動いて躱してみせる。


「マジかよ。目視で弾丸を避けるなんて、どこのスーパーヒーローだ?」


「……ジャックさんもしてるでしょ?」


「そういえばそうだったな」


 アリスの指摘に笑う。

 俺の場合、元の世界でも似たような芸当が可能だった。

 銃口の向きや相手の視線等を参考に、被弾しない動きを取れる。

 この世界に来てレベル補正を受けられるようになってからは、それがさらに容易になっていた。

 まったく便利な法則である。


「もう少し試してみるか」


 俺は弾切れになるまで拳銃を連射した。

 何度か危ない挙動を見せつつも、少年はすべてを回避する。

 簡単なフェイントを織り交ぜてみたが、引っかかることもない。


(大した身体能力だが、召喚者固有のスキルではないな)


 ミハナのような不自然さは無かった。

 純粋な実力で避けている印象だ。

 本当はこのまま逃げ切るつもりだったが、ついでに能力の一端を暴いてやろう。

 リスクは伴うものの、再戦を考えると大きなチャンスだ。

 収穫もなしに撤退するよりはいい。


「これならどうだ?」


 俺は爆弾を放り投げる。

 放物線を描くそれが少年の眼前に来たところで、手元のスイッチを押した。

 しかし、なぜか起爆しない。


「ん? まさか故障か?」


 俺はスイッチを振って何度もボタンを押す。

 すると、遅れて爆発音が轟いた。

 爆弾は遥か後方で炸裂しており、少年は殺傷範囲から逃れている。


 俺はもう一度、爆弾を投げ落とした。

 スイッチを押すも、やはり同じ結果になる。

 どういうわけか、少年の近くでは起爆できないようだ。

 その間に少年は加速して距離を詰めてくる。


「ふむ」


 リロードを済ませた俺は、運転しながら再び拳銃を構える。

 サイドミラー越しに狙いを付けて発砲した。


 少年は短いステップで躱していく。

 何発か身体を掠めるも、少しも動じなかった。

 なかなかの胆力である。

 痛みに耐える精神力も持ち合わせているようだ。

 このまま突っ切るのが最善手だと理解し、それを全力で実行している。


 帝都跡で会った女もそうだが、戦いに慣れている。

 この世界に順応した証拠だろう。

 平和な国で育った者の甘さが見られない。


 この少年は、帝国での後継者争いに参加している。

 激化する内乱を制して、自軍をトップに押し上げたのである。

 参謀という立ち位置にいるほどだ。

 詳細は知らないものの、彼の貢献度はかなりのものだろう。


 エウレア代表であるネレアとコンタクトを図り、秘密裏にサポートを確保した点も見逃せない。

 異世界を生き抜くため、力を尽くして奔走していた。


「次を右に曲がって」


「了解」


 俺はゴーレムカーをドリフトさせながら曲がる。

 その際、僅かに減速した隙を突いて、少年がついに追い縋ってきた。

 手を伸ばされれば、車体に触れそうな距離である。

 この間合いは非常に不味い。

 そう思ってアクセルを踏み付けた俺は、異常に気付く。


(後輪が止まっている……?)


 ゴーレムカーが加速せず、だんだんと速度を落としていた。

 エンジンは機能しているというのに、アクセルを踏んでも反応しない。

 あちこちを弄っていると、後ろから物音がした。

 俺はバックミラーで様子を確認する。


 そこには、車体後部に掴まる少年の姿が映っていた。

 彼は握り締めた拳を掲げ、無造作に振り下ろす。

 装甲がひしゃげて、内側の窓ガラスが砕け散った。

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