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爆弾魔な傭兵、同時召喚された最強チート共を片っ端から消し飛ばす  作者: 結城 からく
第3章 裏切り者と致死の凶弾

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第104話 爆弾魔は銃を突きつけられる

 ミハナは堂々と宣言した。

 自らの勝利を疑っていない様子である。


 俺は特に気を悪くしたりせず、親しげに応じることにした。


「大した自信じゃないか。根拠でもあるのかい」


「当たり前でしょ。もう契約も交わしたことだし教えてあげる」


 息を吐いたミハナは椅子に座った。

 手を組む彼女は、得意げに口を開く。


「私の召喚者としてのスキルは【未来観測 A+】――自分にまつわる無数の未来を観て、その一つをなぞって再現できる能力よ」


 ミハナがついに打ち明ける。

 それは俺達が想定していた能力とほとんど同じだった。

 諸々の検証結果は間違っていなかったようである。


「私は未来の出来事を自由に観測できる。これから何が起こるか分かるの」


「へぇ、そいつはたまげたな」


 俺は感心したように相槌を打つ。

 実際はそこまで驚きはなかったが、せっかく気持ち良く話しているのだ。

 水を差す真似は控えるべきだろう。


「未来は確定していて、一本の道で構成されている。それは誰にも変えることができない」


「例外が君ってことか」


「そうよ。私の【未来観測 A+】だけが未来を変更できる」


 ミハナは誇らしげに言う。

 実際、それは間違っていない。

 能力を知らない俺は、圧倒的に有利な立場にも関わらず敗北したのだから。

 異世界人のスキルを舐めてはいけない。

 どいつもこいつも、常識を覆す代物ばかりであった。


「今、アンタは頬を掻こうとした」


 ミハナが唐突に発言する。

 俺は動かしかけた手を止めた。

 やはり細かな仕草も正確に予知できるらしい。


「私に指摘されて、今度は腕を組もうとする」


「なるほど。よく分かったよ」


 俺は組みかけた腕を下ろして苦笑する。

 その精度は本物だ。

 彼女の口から直接聞いたことで、その信憑性は揺るぎないものとなった。


「私が本来とは異なる行動を起こすことで、起こり得るルートは無数に枝分かれする。私はその中から一つを選び、忠実に再現することができる。普通はありえないほど偶然の出来事……たとえ一パーセント未満でも、発生する確率があるのならその展開に進めるわ」


 そう言ってミハナは、青い缶からダミーの弾をつまんで投げる。

 弾はテーブルの上に落下し、斜めに立って静止した。

 ぴたりと倒れることなく立っている。


 ミハナは同じことをさらに五回も繰り返した。

 計六発の弾が斜めに傾いたままテーブルの上に並ぶ。

 ついでと言わんばかりに、彼女はコイントスを行った。

 回転する銅貨は、テーブルに垂直に立つ。


 そのすべてが綺麗に整列していた。

 見事な腕前というか、技術では説明のつかない領域だろう。

 これには俺も拍手を送る。


「すごいな。だから最初の決闘で勝てたのか」


「ええ、その通りよ。すべての処理が脳内で一瞬で行われるから、アンタみたいな奴との戦いにも対処できる。勝ち目が無かったのも当然でしょ?」


 接近戦でも攻撃を当てられなかったので、その辺りに関してもよく分かっている。

 だから様々な策を講じてミハナを拉致したのだ。

 未来を読む人間を罠にはめるのは、なかなかに面倒な作業であった。


 ミハナがテーブルを叩き、立てた弾と銅貨が一斉に倒れる。

 彼女は身を乗り出して俺を嘲笑う。


「アンタ達はたまたま私を捕まえられたけれど、その幸運もここまでだから。決闘の内容がロシアンルーレットと知って驚いたけれど、私にとってはすごく好都合ね」


 ミハナは銅貨と弾を鷲掴みにすると、それを空中に放り投げた。

 落下してきたそれらすべてが、テーブル上に先ほどと同じ並びで整列する。

 ただの一つも倒れていない。

 超常的なバランスを保っていた。

 それを当然のように披露したミハナは、愉悦を滲ませた顔を緩ませる。


「コイントスも、弾の選択もすべて思い通り。油断してこんな遊びを提案したのがアンタの敗因ね。死んで後悔しなさい」


 ミハナはこちらへの悪意を含ませながら言い切った。

 俺は不敵な笑みを崩さず、小さく肩をすくめる。


「三流の台詞だな。恐れ入るよ、本当に。ところで、少し話題は変わるんだが――」


「その前に煙草は吸わないでくれる? すごく臭うから」


「……分かったよ」


 俺は伸ばそうとした手を止める。

 本当に何から何まで予測してくる女だ。

 嘆息した俺は、喫煙を断念した。

 そして気になっていたことを質問する。


「帝都の爆破からはどうやって生き残った? 爆発する未来を知ったとしても、君の力では切り抜けられないはずだ」


「簡単な話よ。他の皆にそのことを伝えて、脱出に便乗させてもらうだけだから。生存ルートを掴むのはそこまで難しくなかったわ」


 ミハナはあっさりと白状した。

 確かにその方法なら脱出も可能だろう。

 あの場にいた召喚者は残らず生還している。

 誰かしらの助力を得られれば、彼女なら安全圏まで逃げることも難しくない。

 一分以内とは言え、都合のいい未来を常に選べる強みは大きい。


(他の連中が帝都爆破で生き延びれたのは、こいつが原因だったか……)


 彼女が忠告せずとも生還した者もいただろうが、全員が対処できたのは彼女の予知があったからだろう。

 余計な真似をしてくれたミハナに苛立ちを覚える。

 俺はその感情を抑え、涼しい顔をキープした。


「ほうほう、スマートなやり方じゃないか。ちなみに誰のどんな能力で脱出できたんだい」


「言うわけないでしょ。教えたところで碌なことにならないし。まあ、アンタはここで殺すけど」


 ミハナは冷たい口調で述べる。

 先ほどからやけに饒舌なのは、俺を絶望させるためだろう。

 自身の能力をカミングアウトすることで、敗北しないことを強調している。

 言葉選びも、こちらの気を削ぐものを意識している節があった。

 俺をただ殺すだけでは飽き足らないようだ。


「無駄話はここまでよ。ロシアンルーレット、始めましょう?」


「――ああ、いいぜ。やってやろうじゃないか」


 俺は嬉々として頷く。

 何にしろ、ミハナがやる気になっているのは望ましい。

 ゲームを拒まれてしまうのが一番のネックだった。

 それをクリアした今、懸念事項は存在しない。


 俺はさっそくコイントスを行った。

 落下してきた銅貨を手の甲でキャッチして、ほぼ同時にもう一方の手で覆い隠す。


「表か裏か選んでくれ」


「表よ」


 ミハナは即答した。

 一切の躊躇いがない。

 未来を観て確かめたのだろう。

 それを知らなければ、大した度胸だと褒め称えるところである。


「やれやれ、せっかちなお嬢さんだ」


 俺はゆっくりと手をどける。

 銅貨には女神の絵柄が描かれていた。

 つまりは表面である。


「おめでとう。予想は的中だ」


「こんなの当たり前だから。外さないわよ」


 ミハナはリボルバーを手に取りながら言う。

 そこに喜びは無い。

 どこまでも事務的な調子だった。


「六発を青い缶から、一発を赤い缶から装填してくれ」


「分かってる」


 ミハナはダミーの弾から装填していく。

 七発目に実弾を込めた。


「これでいい?」


「うん、問題ないな。次はシリンダーをよく回すんだ。不正が無いようにな」


 ミハナは俺の言葉に呆れた顔をする。

 彼女はこれ見よがしにため息を洩らした。


「不正って……私の能力の話、もう忘れたの?」


「いいから早く回してくれ」


 俺が促すと、ミハナは仕方なくシリンダーを回転させ始めた。

 心地よい音が鳴る。

 設計がしっかりしているから淀みが無いのだ。

 十秒ほど回転したところで声をかける。


「もう大丈夫だろう」


 ミハナは拳銃を振ってシリンダーを戻した。

 彼女はそれを手に震え、堪え切れずに大笑いする。


「あっはっはっはっは! 今、実弾が来るように調整したわ! もうアンタの死は決定ね! 残念でしたーっ!」


 涙を流すミハナは、リボルバーを俺に向ける。


 銃口を突き付けられた俺は、悠々と足を組み直した。

 みっともない姿は晒さない。

 自分の額をトントンと指で叩く。


「よく狙えよ? 外したらダサいからな」


「…………」


 ミハナは顔を歪める。

 俺が動揺していないことが不満なのだ。

 立ち上がった彼女は、銃口を俺の額に押し付ける。

 これならどれだけ下手でも外しようがない。

 リボルバーの引き金に指がかけられた。


 俺はちらりと横目でアリスとネレアを見る。

 彼女達は、ハラハラとした様子でこちらを見守っていた。

 意外にも心配されているようだ。


「遺言はある? 聞いてあげるわ」


「墓はベガスに建ててくれ」


「……最後までクソつまらない冗談を吐くのね。じゃ、さようなら」


 別れの言葉を告げたミハナは引き金を引く。

 銃声を伴って強い衝撃が走る。

 ゼロ距離で放たれた弾丸が、俺の額を捉えた。

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