「悪」の組織、ビクトリア
今回短いです。
「さて、正直聞くのは躊躇うけど、誰の差し金かしら?」
霞は龍牙によって拘束された五人に問いかける。
「誰の差し金、だと?」
「それはそうでしょう?だって異能使いを五人も集めるなんて、学校に稀にいる外国人留学生を一人一人探し当てるようなものよ?」
「なんだその例え」
「とにかく、貴方達は雇われたんじゃないの?」
霞は誰か自分達に恨みがある者の犯行ではないかと推測していた。悪の組織と名乗っている以上、色々方面から恨まれやすい。今回もそんなところだろうと思っていたが
「いいや、我々は元々友人同士でボランティア活動を日々行っているのだ」
「は?ボランティア?」
思わず龍牙が聞いてしまう。
「あぁ、募金活動にゴミ拾い、地域の祭り等の運営を手伝うのが我々の仕事だ!」
縛られたまま自慢気に言うレッドに、霞はいっそ感心してしまう。なおも話を続けようとするレッドを司が遮り
「まぁ、この際それはどうでもいいんですよ。聞きたいのはなんでこの基地がわかったんですか?ここは文字通り秘密、そう簡単に気づけませんよ?」
するとグリーンが眉をひそめ
「...なに言ってるんだ?デパートの掲示板に貼ってあったぞ?」
そう言ってグリーンが縛られたまま器用に胸ポケットから紙をだす。するとそこには
『君も悪の組織に入りませんか?誰でも歓迎!』
とでかでかと書かれている文字と、その下に書かれている住所が乗ったチラシだった。
「なんだ、これ?なんでこんな物が...」
ふと隣を見ると、明らかに大量の冷や汗をかき、口笛でクラシックを吹いていた霞がいた。それを龍牙はにこりと屈託のない笑顔で霞に近寄り、逃げようとした霞を一瞬でアイアンクローまで持ち込んだ。
「いだだだだだだだだだだ!!!!!ごめんなさい!!!つい出来心で!!!」
「それ以前に総統が秘密ばらしてどうするんだよぉぉぉぉぉぉ!!!!!?????」
叫びながらもアイアンクローを続ける龍牙、そして五分後には頭を抑えて悶絶しているバカがいた。
「ちょっと!今バカって書いて霞って読んだでしょ!」
「うるさい。なんで総統が敵に位置教えてるんだよ、なんで白昼堂々勧誘してんだよ。馬鹿なのか」
何時にもまして辛辣な龍牙と次はどこを潰されるか構えている霞を放っておき、司は次の質問に入る。
「では、貴方達は全員異能使いですか?」
「...あぁ、そうだ。俺が炎を自由に使える、ブルーが氷でグリーンは風、ピンクが治癒で、イエローが爆発兼雷だ」
「ちょっと待って、なんでイエローだけ兼業してんの?なんで爆発と雷のチョイスなの?芸術なのか?それがお前の芸術なのか?」
突っ込みがそろそろ持たなくなりそうな龍牙を司はスルーし、なおも続ける。
「そうですね、では最後の質問です。貴方は何故正義のヒーローを?」
「どうしてなったかって話か?...簡潔に言うと、俺は昔からヒーローってやつに憧れていてさ、俺も世界を救えそうだな、って思っていて、それで皆を集めて平和を守ろうとしているんだ。」
それを聞いて龍牙は
「へぇ、結構ちゃんとした理由があるのか」
「そうですね、話も聞いたことですし、ではピンク以外は解放しましょう」
「いや司?ちゃんと全員解放してあげて?もしかしてピンク嫌い?」
「いえ?ただ何のつもりで治癒魔法なんぞ持っていやがるのですかなと。」
「なんか口調変わってない!?治癒系の能力駄目だったのかよ!?」
「変わってないですよ、ただそんなもん持つぐらいなら医学知識をちったぁ身に付けやがれって話ですけどね?」
「怖っ!?どんだけ治癒魔法嫌いなんだよ...!?」
暴走しかけた司を龍牙が抑え、なんとか事態を収拾させたとき、復活した霞が
「もうとれそうな情報は取れたから、帰って良いわよ、他言無用だけど。」
そう言って五人を解放すると、「また来るからな!首洗えよ!」
と捨て台詞を残して帰っていった。
一段落着いたら龍牙が
「ふぅ、そういえば赤葉の案内だったな。すっかり忘れてた...」
「いいよ、私は楽しかったし。それに遅いからもう帰ろう?」
そう言われ時計を見るともう7時を回っていた。急いで帰ろうと出口に向かうと、受付の女性が
「待ってください、ロビーの修復をしてから帰ってもらいますよ。」
そう言って彼女は先程の戦闘でボロボロになったロビーを指差した。
龍牙は大きく息を吸い、
「あいつらぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
今年一番の悲鳴をあげた龍牙だった。
その後、連絡をして呼んだ恵輔と仁を入れた四人でロビーを一時間で直してから帰宅したのだった。