ビクトリア内部
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「じゃあ、まずはこっちから見ましょう」
霞が先導して赤葉達を案内する。
「こっち側は俺もあまり知らないな、行ったことないし。」
龍牙が呟くと霞は振り返り
「それは貴方が渡した後お茶も飲まずにすぐに帰っちゃうからでしょう?...と、着いたわ」
赤葉は思っていたよりも随分速く着いた気がしているが、気にしない事にした。
「ここは何の部屋ですか?」
「ここはね、一言で言うと研究班の部屋。色々な物を作ってもらってるの」
と、言うやいなや霞が扉をくぐると、油や機械の臭いが鼻につく。また、それと同時に複数の音も聞こえた。中に入った霞は、近くにいた女性に話しかけた
「どう?神無、研究は」
「あ、総統!お疲れ様です、研究は順調に進んでいますので、順次報告します!」
そこに居たのはなんと185㎝の龍牙を越える長身の女性がいた。神無と呼ばれた女性は短く切った髪を溶かし、霞に礼をした。
「いったい何を研究してるんだ?兵器か何かか?」
龍牙が問うと、女性は眼を光らせて
「貴方は龍牙さんですね?気になっちゃいます?気になっちゃいます?気になりますよね!」
(めんどくさいな、こいつ)
「説明しましょう!これはなんと、遠隔操作でハッキング、運搬、なんでもござれのドローンです!」
そう言って指差した先には直径1メートルほどの大きめの飛行型のドローンがあった。
龍牙はじっと観察してから
「確かに凄そうだが、こんな時代だ、そこらの店にもこういったものありそうだけど?」
「甘いですね!これはスーパードローン!ステルス機能を備えていて、どんなシステムにも入り込み!100キロまでの物を持ち上げ!そしてそのまま時速90㎞で運搬する!さらに特殊大容量バッテリーで連続10時間駆動!何処の店にも売っていない!これ以上ないほど完璧です!」
女性の熱い熱意に龍牙は
「お、おう...それは凄いな...」
終始押されぎみだった。
「じ、じゃあ次に行きましょう」
霞も引きぎみに次の部屋へ案内する。
「凄い熱意だったな...」
「私もあそこまで熱心にしてるとは思わなかったわ...」
「総統がそれでいいのか」
「だって、あまり他の子達の事見る余裕ないし...っと、着いたわ。ここが医療班」
医療班と書かれた扉をくぐると、そこには多くの診察台や、薬品などの医療道具があった。
「うわぁ...これはすげぇな、見たことない薬まであるぞ?」
「当たり前よ?だってここにあるほとんどの薬はこっちで作っているんだから」
「改めて考えるとお前の組織やばいな」
龍牙と霞の会話が室内に響いていると
「おや霞さん、いらっしゃいませ。隣にいるのは龍牙さんと...」
「あら司、隣にいるのは龍牙さんとその娘さんの赤葉さんよ」
司と呼ばれた男は龍牙より頭一つ低い、白衣を羽織った所謂「医者」と想像しやすい格好をしていた。司は眼鏡をかけ直しながら
「娘さんでしたか。こんにちは、赤葉さん、私は三島 司です、三島に聞き覚えは?」
「こ、こんにちは...三島に聞き覚え?」
そう言われ記憶を探りだす赤葉、数ある記憶からたった一つを見つけるのは容易ではな
「あ!もしかして凛ちゃんの...ってえええ!?」
「ご名答、いつも娘がお世話になっております」
まるでイタズラに引っかけたかのように司は笑う。
「え、でも凜ちゃんは...あ..そうか、お父さんの事聞いたことないや」
軽い混乱を起こした赤葉に
「いや、隠すつもりはありませんでした。申し訳ない、もしかして何故凜の父である私がビクトリアにいるとお思いで?」
「い、いや...はい、ちょっと気になります」
司は笑顔を崩さず、両手を大きく広げ語った
「私は昔医者でした、何科かと言われたら外科医と答えてました...これでも腕に自信はあるんですよ?ただ、今のご時世魔法を使えばなんだってできる...治療さえも」
司はそこで一呼吸置き、落ち込んだ様子になった。
「私はクビになりました、私の仕事場、なかなか黒いですよ?雇用の条件は治癒魔法があれば待遇がよくなる、体内からの病気は治せないのに...それに私は嫌われていた。それで途方に暮れていたところを霞さんが見つけてくれました。妻にはこの事は話しているんですが、娘には言ってません」
赤葉はその話を聞いてから
「あの...いいんですか?私達にその事を話して」
司はより顔を楽しませ
「ええ、構いませんよ。貴方達は娘がお世話になっている、それだけで感謝しなくてはなりません」
不安が消えた赤葉の横で、龍牙は一つの机の上に置かれていたカルテを覗き暫し考えた後ひとつの質問をした
「勝手にカルテを診させて貰ったが...司、お前の異能って何なんだ?周囲にそれといった検査施設や道具は無いのに、診察結果が正確、そう..."正確すぎる"」
そう言われ赤葉は周囲を見渡してみる。なるほど、確かに医療用の道具はあると思ったが、よく見るとドラマでもよく見るようなメスなど幾つか足りない気がする。
「ああ、龍牙さんとは初対面でした。こうして人と話すの最高に楽しいので...それで私の異能はですね」
そう言うと司の周囲に突然様々な医療器具が現れた。
赤葉が驚愕していると、自信気に司は語る。
「私の異能は"治療に完璧な状況を作り出す"といった能力です」
その説明を受けた赤葉と龍牙の頭に浮かんだことは
(???)
大量の疑問符だった。
「なあ、よくわからないんだが」
司は苦笑いをしながら
「まあ、そうでしょうね、私も説明がしにくいので。見て貰った方が速いです」
そう言いながら手を振ると、今度は小さなカメラのようなものを生み出した。
「これは?」
「どうぞ、簡単に言うと、細菌の視覚化をするカメラです、それで周りを見てください」
カメラを起動しながら龍牙が周りを写すが
「...何も見えないぞ?」
「では廊下の方を」
言われるままに廊下を写すと、小さな点が至るところに浮いている。
「これが細菌か?.........ああ!なるほど」
「龍牙、どういう事?」
赤葉が龍牙に尋ねる
「要するに司は自分の周囲を無菌室のようにすることが出来るんだ、そうだろう?」
「ご明察、よくわかりましたね!」
クイズに正解したかのように笑顔で答えた。司はそのまま補足をする
「もう少し詳しく言うと、対象の状態を診察して、周囲を無菌にする、更に治療に必要な設備、道具、薬品を生み出せます」
「本当に医者向きの異能だな、っていうか異能か?」
「ええ、しかしこの力は医療技術が無いと持ち腐れ、あくまでも『治療に必要な状況を生み出す事が出来る。』医療知識がないと全くの無意味になります、そういうところでは、私は恵まれているのかもしれませんね」
「羨ましい限りだよ、明確な目的がある力は」
龍牙は暫し眼を伏せ、考えこんだ。その様子に気付いた赤葉は心配そうな顔をする
(龍牙...?)
するといきなり顔を上げた龍牙は笑顔になり
「まあいいや、俺達は次に行こうか、赤葉も行くぞ?」
「あ...うん」
「赤葉さん、私の娘と、これからも仲良くしてやってください」
「任せてください、あの子とはたくさん遊びたいので」
「それは嬉しいですね、よろしくお願いします」
「ねぇ、三人共?私の事忘れてな...」
霞が愚痴を吐こうとした瞬間、
アジトを大きな揺れが襲った。