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異質な地球と異世界で  作者: 鼓月 幸斗
第一部 桜の家
5/14

悪の組織は

赤葉、割りとせっかちですね。

桜葉 龍牙は夕暮れの町を歩く、町の光が彼を照らすが、彼自身は闇に溶けるように消えていく。

彼は今、一つの目的地へ向かう。

 「この場所、家から遠いから困るんだよ...なんだよ、徒歩20分って...」

 彼らしい愚痴を聞くのは、目の前の二人の男のみ。二人のスーツ姿にサングラスを着けた男達は、龍牙を一目見て

 「お疲れ様です」

 と声を掛ける。

 「おう、霞は居るか?」

 「ええ、総統もお待ちしております」

 「入れさせてくれ」

 「ええ、今開けましょう」

 男はそう言って扉のパスワードを入力し、ドアノブを回す。そして鍵の開いた扉を開き、

 「ありがとさん」

 そう言って龍牙は扉の奥へ進んでいく。

 その光景を娘、白雪 赤葉は緊張した顔で見ていた。

 「怪しい...もの凄く」

 彼女は恵輔から龍牙が謎の悪の組織に入っていると聞いて、いてもたってもいられずにここまで尾行してきた。恵輔は止めようとしたがそのまま

 「中でどんな非人道的な行為が...」

 血は繋がっていなくとも彼は立派な父親だ、いつも自分を助けてくれる。そんな彼が悪の組織等を自称するようなあからさまに危ない団体に肩入れしているとなれば、自分が助け出すしかない。そう意気込んで来たものの、目の前の男達を対処する自信はない。

 (...やるしかない)

 赤葉は自分に意識を向ける。今自分が出来ること、それは

「よし、じゃあロックする...」

「うわぁ!助けてくれぇ!」

 男が扉を閉める瞬間、突如茂みの奥から低い男の悲鳴が聞こえた。

 「...なんだ?」

 「悲鳴か!?だがこんなところで何故?」

 「そんなこと考えている場合か?」

 男達は暫し考えるが

 「...何があったかはわからないが報告だけしておこう、助けに行ってくる、お前は中で報告を」

 「了解した」

 そう言って一人は茂みの奥へ、もう一人は男を見送ってから扉の中へ入っていった。

 「......上手くいった...」

 赤葉は扉の中へ入っていった男の後ろに付いて行く形で中に入った。赤葉は昔から所謂【声真似】が得意だった、異能を持たない赤葉が誇れる数少ない特技だった。中で階段を降りると、かなり広い部屋があった。目の前の部屋はロビーだろうか、奥に複数の部屋と通路がある。男が中心に行くと緑髪で、ボブヘアーの女性が高級そうなスーツを身に纏い、座っていた。男が近づくと女性が

 「どうされました?交代までの時間は後30分はありますよ?」

 「なに、俺達が「彼」を見送った後に悲鳴が聞こえたんでな、俺達と関係の無い事と思ったが報告だけはしておこうと戻ったんだ」

 「その悲鳴がイタズラな気もしますけど、まあ、わかりました。とりあえず今日の報告書には書いておきますので、後20分は頑張って下さい...ところで、今扉を守っているのは誰ですか?」

 「あ。」

 「...まさかとは思いますけど、誰も守っていないと?」

 女性が眼を細めると男は焦りだして

 「いや待て!大丈夫だ、俺はこっちに戻ったが、あいつは悲鳴の方へ向かった!だからすぐに戻って...」

 「言い訳を並べる暇があるなら持ち場に戻りなさい、それとももう1時間守っていたいですか?」

 「す...すぐに戻る!!」

 女性の目が鋭くなる前に男は陸上選手もかくや凄まじい速度で扉の前に向かっていった。

 「まったく、持ち場を空けたままにして置くとは...で、貴女は侵入者ですか?それともお客様ですか?」

 その様子を隠れて見ていた赤葉は、その場を離れようとした瞬間にバレた、いや、最初から気づかれていた。

 「え、えーと...か、観光ですかね?」

 あからさまに目立つ忍び足で切り抜けようとしていた赤葉は、なんとも情けない姿勢で固まったまま答える。

 「観光ですか」

 「え、ええ」

 「一般人はおろか国の重鎮でさえこの場所を知るはずがないのに、観光ですか」

 「え、えっと...偶然知って」

 「偶然ですか、SNSにこの情報はありませんし、観光ガイドにもありません。それでも見つけるとは、凄い『偶然』ですね?」

 「そ、そうですね」

 女性はなおも鋭く光る目で赤葉を睨んでいた、万事休すかと思ったがふっと目の力を緩めて

 「...いいでしょう、観光ですね」

 「...あれ?」

 「ですが観光に来たのなら、私達の総統...上司と話して貰いましょう。いいですね?」

 「あ、はい」

 女性は左から真ん中の通路を指差して

 「あちらの奥に進んだら総統の待機室となってます、くれぐれも失礼のないようにしてください」

 「...わかりました」

 言われた通りに赤葉は通路の奥へと進んでいく

 (誤魔化せた...のかな?)

 一応は成功と考える事にした赤葉は、目の前に垂れ幕を見つけて思わず壁に背を預ける。

 (...声が...?)

 赤葉が身を低くして気づかれないように進むと

 「霞、久しぶりだな」

 「あら龍牙、いらっしゃい。お茶でも飲む?」

 (龍牙...に誰だろう...?)

 龍牙と会話しているのは誰だろうか、身長は180はある龍牙と同程度、腰まで伸びた長い金髪は、宝石のような美しささえ感じる。外国人かと思ったが、顔が日本人のような、アジア系の感じだ。軍帽を被り、軍人のように見える。

 「いや、今日は遅いし、また今度に」

 「そう、じゃあこれ」

 そう言って龍牙に渡した物は、紙の束だった。

 「遠慮なく、最近トラブルは?」

 「特にないわ、平和そのもの。戦闘班も暇をもて余してる」

 苦笑いして答える女性と龍牙を見ていた赤葉は

 (戦闘班?まさか犯罪!?)

 信じられないといった様子で赤葉は恵輔か仁に連絡をしようとする。どうすればいいか相談するためだ。しかし、この場で連絡をするのがいけなかった。

 「ん...?電子機器の反応?」

 (バレた...!?)

 「どうした?霞」

 「いえ、今周囲に電子機器を使っている反応が...」

 「誰かいるのか...って」

 何気なく龍牙が携帯を操作すると、赤葉の携帯に着信が入る。

 「赤葉じゃないか、まさか付いてきたのか?」

 「赤葉?...ああ、貴方達の娘さん?」

 「そ、...赤葉ー!よくわからないけど大丈夫だぞー!」

 龍牙が周囲に向かって声をあげる、それに赤葉も反応して

 「ほ、ほんとに?」

 「そこにいたか、大丈夫だって、なにが怖いのかわからないけど襲ったりしないよ」

 そこまで聞いて赤葉はようやく身を出す。赤葉の姿を見た霞は

 「あら、結構美人さん、羨ましいわね」

 「そ、そんなことないですよ」

 そう言いつつもどこか嬉しそうに話す赤葉、その会話の後に龍牙が

 「赤葉、この人は霞って名前、といってもライシア人だから別名っていうより愛称かな」

ライシア人、龍牙も話していた異世界の住人。もっと中世のイメージがあったが、服装はどうみても現代の軍服だし、というか思い切り日本語だ。

 霞は赤葉に向かって笑顔で

 「はじめまして、霞です。貴女の話も龍牙達からよく聞かされてるわ、よろしくね」

龍牙達、ということは恵輔達も関わっていたということか。彼は悪くないのだが、なんだか騙されたような、複雑な気持ちになる。

 「よろしくお願いします...あの、悪の組織って...」

 「それは私達の組織、正式名『ビクトリア』、私はこう見えて総統なの」

 「総統...なんで悪の...ビクトリアを創ったんですか?」

 霞は苦笑いしながら

 「悪の組織でいいわよ、元々そう決めてるし...なんで創ったかって言うとね、世界の統一を目指してるからなの」

 「と、統一?」

 「そう、統一。世界って貴女が思ってるよりずっと戦争が絶えないのよ、だからその戦争を止めて、平和に統一する。それが私達の目標であり最終地点」

 「す、凄いですけど、何故日本に?」

 当然の疑問だろう、到底無理かもしれないが、仮にも世界を統一するなら、もっと広い国に行けば良いのだ。ロシアやアメリカに行けばずっと大きな進展がある。しかし霞は

 「日本って、どの国と比べてもずっと平和なの、それにいい人も多いし。この国から始めれば、いいスタートを切れるはず。」

 霞はそう言って「『穴』が日本にあるのも理由だけどね」と付け加えた。平和統一、凄い目標だと感動さえ覚えていると龍牙が

 「俺がここにいる理由は、資金提供なんだよ。活動資金を渡す代わりに、株をメインとした色々な情報を貰う」

 「情報...?」

 「株ってのは情報が大事なんだよ、何処がどんな事件が起きた、どこの企業が新商品をだした、とか」

 「私達の組織はなんでも出来る、をモットーにしてるのよ」

 自信気に霞は胸を張る、それを聞いて赤葉は不安そうに

 「なんでもって...戦闘とかも...ですか?」

 「そうね...どうしても自衛が必要な時もあるのよ、基本的には非殺傷の兵器しか作る気はないけどね」

 非殺傷だからいいのかは置いておいて、確かに仕方ないとは思う、それよりも気になるのは

 「そうだ赤葉、せっかくだからこの場所を案内するか、いいよな?」

 「ええ、龍牙の家族なら大歓迎よ、ただ、私の部屋は恥ずかしいから教えないけど」

 霞は椅子から立ち、服装を整えると、赤葉の方を向いて

 「じゃあ、行きましょう」

【声真似】は特技であって決してスキルでは無いです、というかスキルが存在しないです。魔法や異能はあるけど。後赤葉の【声真似】はものすごく完成度が高いです。声優を選ばない()

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