凛は疑問を持つ
漢数字と数字が混ざっていますが、気にしないで下さい。
(報告):桜田商店をショッピングモールからデパートに変更しました。
「龍牙さんって凄く頭良さそうでしたね」
赤葉の補習に一緒に行っていた凛は、翌日学校で美枝に聞いた。
「確かにそんな感じはしますけどね?でも私より赤葉ちゃんに聞いた方が早いですよ?」
「それはそうですけど...本人の前で聞けませんよ、お父さんって何の仕事してるんですか?って...」
「あ、仕事が知りたかったんですね」
そう言って美枝は多少納得したかのような顔をする。
「でも赤葉に聞いた方が手っ取り早いのは事実!ぱぱっと聞いちゃいましょう!」
「ええ!?ちょっと美枝さん!?」
驚いて呼び止める凜を尻目に、美枝は赤葉に呼び掛ける。
「赤葉ちゃん!」
「うわっ!?ど、どうしたの?美枝」
「そういえば私、貴女のお父さん方の職業を聞いたことないなーって思ったので、聞くことにしました!」
「ああ、そんなこと?私は構わないけど...」
美枝の頼みに、赤葉は意外と簡単に教えてくれる。
「ごめんなさい、赤葉さんにこんなこと聞いて...」
「いいのよ、凜ちゃん。...と言いたいんだけど、実は私、龍牙所か全員の仕事を知らないのよね」
すると美枝は驚いたように
「え!?赤葉ちゃん自分のお父さんの職業も知らないんですか!?」
心底驚いた表情を見せる美枝、それに対し赤葉はため息を一つついてから
「そう、私も聞いたことないのよ、単に聞く気がなかったのと、聞いてもはぐらかされたからね」
「じゃあささっと赤葉のお家に行って!『突撃!隣の⚪️ご飯!』みたいなことをしに行きましょう!」
美枝は高いテンションで赤葉を引きずったまま蘇とに出ようとするが
「美枝さん!まだ三時限目ですよ!?」
凜に止められ、その日の美枝は気分が悪く、授業態度はあまりよくなかったそうだ。
放課後、改めて赤葉宅にやって来た二人、その見栄には何度みても感心する。
「やっぱり大きいですね...」
「やっぱり3人も働いている人がいると違うんですかね!」
美枝も凜も口を閉じる気配がない。その二人を呼び掛け、赤葉は中に入るよう招く。
中に入ると、そこには龍牙ではなく仁がいた。
「お帰り、赤葉...あれ、二人とも、また来たの?歓迎するよ」
仁は笑顔で迎え入れてくれた。仁は自分の手にバットを持ち、磨いていた。
「仁さんは野球が好きなんですか?」
「うん、僕が野球をやってたからね、時々こうして手入れをしないといけないんだ。」
その時、赤葉達が入ってきた扉から、二つの人影が見える。
「だから俺は俺は思うのだよ、電子タバコが有害物質を出さないなら普通のタバコも大丈夫って」
「...おい龍牙、さすがにその持論は無理があるぞ...」
「二人とも、お帰り。ちょっと二人がまた遊びに来てくれたよ」
龍牙と恵輔が戻って来た、龍牙は昨日と特に変わらないが、恵輔の方はスーツの上にコートを着込んでいた。二人が戻って来たところで仁が二人が来たことを教える。
「ん?今日は何を聞きに来たんだ?」
龍牙が首をかしげながら質問する。昨日と連続で来るということはまた同じような質問なのだろうと考えていたからである。凜は少しだけ思案し、質問する。
「ええと、龍牙さん達がどんな仕事をしているのかなぁ...って」
龍牙は思案したが、恵輔は察するのが早かった。
「なるほど、俺達は赤葉に仕事をしてるのを見せたことがないからな、赤葉が知らないなら俺達に聞くしかないわけだ。」
恵輔はそのまま納得したようで、何度もうなずいている。しかし龍牙の顔はあまり教えたいという顔では無いようだった。
「あー...マジで?あまり教えたくないんだけ「お前は実質無職だものな」ちょ...恵輔...」
龍牙言葉を遮るように恵輔が言うと、凛と美枝は気まずい感じになり、赤葉に至っては軽く絶句している。
「え...?龍牙、無職だったの...?」
信じられないといった表情を見せている赤葉に、さすがに可哀想と思ったのか仁がフォローをする。
「い、いや、龍牙は職業は持ってこそないけど、株を使って稼いでるらしいから...稼いでるよね?」
「仁?なんでお前まで疑っちゃうの?」
龍牙は裏切られたかのように仁を睨むそして観念したように
「はぁ...そうだよ。でもな、職業欄に書くことこそ出来ないが、俺の仕事は基本株の資産運用だからな!こう見えて稼ぎはダントツだからな!」
悔しさからか、軽く逆ギレする龍牙を赤葉ははいはいと無視しつつ恵輔達にもどんな仕事をしているか聞いていく。
「俺か?俺は親父から請け負った会社を経営していて、自慢ではないが人気はあるんだぞ」
恵輔は嬉しそうに語るが、肝心の会社名を聞いていないのでピンとこない三人だった、とりあえず美枝は会社名も聞いておくことにした。
「凄いですね!恵輔さん!ところで会社名は何て言うのですか!」
「桜田商店と言って、所謂デパートの経営がメインになるな、後はコンビニと提携して商品開発をしていたりする」
それを聞いて赤葉は社長なんだー、程度の認識を持ったが凜はその名前をどこかで聞いていた。
「桜田商店...?あ!それって凄い有名な所じゃないですか!?え!?恵輔さん、社長なんですか!?」
「あぁ、だが部下と秘書が優秀でな、仕事整理が上手いのでな、俺は何時も定時で帰れるし、助かっている」
凜はなんだか凄い人と知り合ってしまったなと思いつつ、せっかくなので仁の職業も聞くことにした。
「仁さんは野球が好きらしいですし、やっぱり野球店とかですか?」
質問に恵輔が商店を開いていた為か、仁も何かしらの商店を開いているのだろうなと思ったが、その前に美枝がふと気づく。
「あれ?仁さんのこと、どこかで見たことがあ...あああああぁぁぁぁぁ!!!!!」
「わっ!?美、美枝さん?どうしたんですか!?」
突然叫びだした美枝に驚きを隠せない凜と赤葉は、仁が一体何をしていたのか、こんなに驚いているのだからもしや犯罪者だったりするのだろうかと、警戒するが
「仁さん!」
「は、はい!?」
「思い出しました!貴方は三年前に引退した元ホームラン王の桜木仁さんですよね!私の父が野球好きだったので覚えています!しかし私が忘れているとは!でも凄いですけど何故野球を引退したのですか!?あの頃は確かたった四年で本塁打を800本打ってホームラン王になったという神童として扱われていたのに!何故止めてしまわれたんですか!?」
一気に捲し立てる美枝に押されつつも、なんとか答える仁。
「う、うん。僕がホームラン王になった後、当時居た団との契約が切れてね、なんていうか、丁度いいかな、って思って、そのまま引退したんだ。」
「そんなあっさり!?」
「私は聞いたことないんだけど?その...ホームラン王とかになってたって」
赤葉が好きといえるのは歌と寿司位で、野球は彼女の好みに入っていない、そのため仁の事も録に知らなかったのだ。
「仁、じゃあ今は一体何の仕事をしているの?」
当然の疑問を口にする、仁は何故か恥ずかしそうに
「えっと...今はその野球の解説をしているんだ、ラジオとかで実況している人とその隣に解説がいるでしょ?それが僕」
野球を辞めても野球が好きなんだな、と美枝は嬉しそうに納得した。すると龍牙が頬を膨らませながら
「俺がやっているのは、株の資産運「それはもう聞いた」まあ聞いてろって、俺はそれで、基本的に赤葉の学費、この家の土地代、光熱費、水道代、ガス代、その他もろもろは俺が払っていて、俺が一番稼いでるんだ!」
てっきり三人で払っていると思っていたものが龍牙一人で賄っている、これは本当に初耳だった。
「龍牙は仕事をしたくないからということで株に手を出していたらしいが、ここまで稼いでるのははっきり言って相当学ばないとできるものではない。曲りなりにも社長をして多くの事を学んでいる俺がどうやって稼いでるかわからないというレベルだぞ?仕事をしたくないために常人以上の努力をしたという矛盾を感じるけどな」
恵輔が本気で褒めている、ということは嘘では無いだろうし努力も本物だろう。しかし普段のぐだっとしたやる気のなさからはとても信じにくい。
「まあ気にしない、とりあえず全員の仕事を説明したし、もう5時だ、そろそろ帰りなさい」
「ありがとうございました、色々教えてくれて。また何かあれば相談してもいいですか?」
「ありがとうございました!では私はこの自慢話を父に持ち帰ってきます!」
そう言って美枝は家を飛び出していった。
「ええと、では、さようなら」
「はい、さようなら、夜道に気を付けなさい」
龍牙達が凜を見送った後、龍牙は思い出したように
「あ、今日はあの日だ。恵輔、俺も今から出かける、飯はいらないよ」
「そうか、風邪引くなよ」
「まだ冬じゃないし、大丈夫だろ?」
そう言って龍牙は外に出ていった。
「龍牙はなにをしに行ったの?」
「簡単に言うと、龍牙はある所に仕事を依頼していてな、その給料を払いに行ったんだ」
「依頼?誰...?」
「そうだな、自称ではあるがあいつらは」
悪の組織だ。
所持資産は多い順で、龍牙、恵輔、仁となっています。全員確定で億稼げる実力を持っています。
後作者も忘れがちですがこの世界異世界と繋がってます。