はじめまして
『こんにちはおきつねさま。さくらみかのんです。…きょうは、おきつねさまにおはなしがあってきました。おかあさんとおとうさんがきのう、じこにあってなくなりました。…それから、きのうはおやくそくまもらずにおやしろにはいって、ごめんなさい。それから、おうちにつれていってくれてありがとう。…きょうはこれだけはなしにきました。またきます。』
閉じていた目を開いて、母の教え通り二回の深さの違うお辞儀をして後ろを向いた。
「…桜美叶と桜美玄は死んだのか?」
歩き出そうとすると後ろから声を掛けられた。叶と玄は私の両親の名前だ。
ついさっきまで向いていた方向には誰もいなかったはずなのに、声は確かに後ろから聞こえた。
子供でも大人でもないような声。いくつかの声が重なってぶれているような感じ。
振り向いてみると、輝くような白い毛並みの大きな狐がお社の賽銭箱の後ろあたりにいた。母に聞いたお狐様の姿にそっくりだった。
「…うん、そうです。きのうのゆうがたじこで。…はじめまして、あなたはおきつねさま?」
狐は滑るように私の前まで来て座った。私が小さかったこともあるだろうけど、それを差し引いても大きかった。
「そうか…、死んでしまったか。…そうだな、私はここに祀られている神だ。」
お狐様はこころなし悲しそうな声と表情で言った。
「そうです。これからそうぎにいくの。…きのうのきつねも、おきつねさまね?おうちにとどけてくれてありがとうございました。」
「分かっていたのか?」
藤色の澄んだ瞳は真っ直ぐに私を見てくれていた。ともすれば、恐怖を感じそうな状況だけど、お狐様の空気が柔らかいからむしろ落ち着いて話が出来た。
「ううん、きのうはわからなかったです。みようとしてなかったから。でも、おばあちゃんがおきつねさまがっていってたから」
「そうか。…これから葬儀なのだろう?もう帰りなさい。」
お狐様は前足で鳥居を指し示して、帰るように促した。
お日様はてっぺんに近づいていて、そろそろ帰らないと祖母に怒られてしまいそうだ。
「うん。…おきつねさまさようなら。またきます。」
じりじりと日に焼かれて家に帰って、両親の葬儀に向かった。
やっとお狐様と神音が話せました。
新学期が始まってしまったので、これからの投稿は一週間に一度くらいになってしまうかもしれません。
なるべく投稿するようにはしますが、申し訳ないです。