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貴女の存在
愛する人間たちと同じように歳を重ねられなくなって、神と崇められるようになってからずっと感じてきた孤独感。それを癒してくれたのは貴女だった。
社の階段の隅で膝を抱えて泣いていた幼い頃の貴女。一人にしておくのも心配で、普通の狐に化けてそっと寄り添った。泣きつかれた貴女を送り届けた時に正体を言い当てられたのは誤算だったけど。
その日を境に貴女は毎日神社に来るようになった。私の姿を見ても怖がりもせず、『この前のお狐様ね。』と言ってお礼を言ってきた。
貴女と親しくなるのにそう時間かからなかった。でもある日、子供の世迷言だと吐き捨てるにはあまりに真剣な顔で『お狐様のお嫁さんにして。』と言われた。
今でもこれでよかったのか分からない。私は貴女から貰ってばかりで、奪ってばかりで、何も返せていないから。
でも、貴女が隣で幸せと、嬉しいと言ってくれるから手放せない。
だから、貴女から人としての生を奪う代わりに、貴女を誰よりも幸せにしようと思う。そうでないと、貴女の幼馴染やご両親に顔向けできない。
次からは主人公の過去になります