【第5ステージ】遺された戦士。
こんばんは! 国枝くん最新話を更新します!
もし、もし楽しみにしていてくれた方が居たら、本当に、心から嬉しいです!!
それでは、それ行け! 国枝くん最新話、
『遺された戦士』をどうぞ!
俺と琢磨は向かいあい、それぞれのゲムコンに『SA・○A』のロムをセットする。
げっとぱわー
→いんざわーるど
世界がモノクロの群像劇を開いていく。
種族の選択だ。何故か、『モンスター』が選択できない。
仕方なく俺は『エスパーマン』を選ぶ。琢磨はエスパーマンを選ぼうとしたのに、『エスパーギャル』に決定された。
おそらく、『かみ』の選択だろう。
「ここが『SA・○A』の世界か」
ドットで出来た我が家を見上げる。その後方、黒い空に『それ』は白くどこまでも高く自身を主張していた。
「そろそろしごとのじかんじゃないの?」
庭に居た母さんがカクカクと口を動かす。その目は笑っていなかった。
「母さん、この世界を変えて、きっと帰ってくるよ!」
表情を変える事無く、母さんは同じ文句を繰り返す。
我が家へ背を向け俺達は旅立った。高い、塔の根元を目指して。
世界に電子音がかち鳴らされる。それは幻影として立ち塞がった。
モンスターだ!
「くっ! まだ武器が!」
琢磨が初期技である『ほのお』を繰り出す。
剣を持った侍が塵と成り果てる。ぴょこり、と肉が残り、その肉も一瞬で朽ちていった。
近場に在った回復の泉で魔法の使用回数と体力を回復しておく。可能な限り水を汲んで鞄へ積んだ。
「塔へ行こうぜ! 兄ちゃん早く!」
「ちょっと待ってくれ」
エイトテンの先にある電柱、その付け根に黒々とした裂け目を見つけた。バグの一種だろうか? 地面の下へと延びているようだ。
「地下エリア? そんなの『SA・○A』に在ったかな?」
「……無いな」
「わ、罠だよ兄ちゃん! 先へ行こう!」
俺もそう思った。こんなイレギュラーは要らない。『かみ』の創るものに、こんな不完全なモノは要らないように思える。
「助言しに来たぞ、おまいら」
「ゲーム爺さん!」
ゲーム爺さんが眼の前に立っていた。半ばモノクロになりつつも『エイトテン』の缶ビールをちびちびとヤッている。
「この階層にしか店は無いぞ。ライフは買えん」
「……」
「そしてこの世界には『チェーンソー』なんぞありゃせんぞ。モチのロンでな」
「ライフ1で! 残りタイムは?」
お爺さんは白い歯を見せて嗤った。
「モチのロンで24時間じゃ!」
「無理だ! 僕らを助けろ爺さん!」
「嫌なこっちゃ」
爺さんが琥珀色の帽子を振りながら去っていく。禿げた頭に帽子を納め、街の先へと消えていく。
「兄ちゃん! 急いで塔を昇ろう! 時間が無い!」
「琢磨、俺は地下に入ってみる。俺が帰ってくるまでに、キミは『この2つの技』を習得しておいてくれ」
メモを手渡し、俺はその割れ目に飛び込んだ。身体がグネる。痛みに耐え、俺は四肢を伸ばした。
「兄ちゃん!」
「任せておいてくれ! 琢磨」
頭上に琢磨のスカートの中が見えたが何も言うまい。歪む次元を抜け割れ目を降りていく。俺の所持魔法は『れいき』のみ。先程倒した敵から『ロングソード』だけを手に入れている。
そこは精気を失った世界だった。
「……だれもおれをみとめてくれない」
「だれかわたしをみとめて!」
揺れる人々の合間を抜け地下を目指した。
いたる所でヒトが、ゆらゆらと亡霊のように揺れている。
伸ばす手を振りきり階段を駆け下りた。
「……ぼくもなかまにいれて」
「まま、どこにいったの?」
その下の世界では、裸の子供達が彷徨っていた。
荷物に忍ばせていた『コッペパン』を在るだけ置いていく。
地下を目指した。
「こわいよ! たけしがじゅうをむけるんだ!」
「だれもしんじるものか! そのいえをよこせ!」
その下の世界。そこではマシンガンを乱射する男に、幾つもの命が奪われていた。男の子が銃でヒトを撃ち、クルクルと、同じ地形を回っている。
「じゅうをよこせ!」
「ころしてやる」
俺には救えなかった。
目を閉じ下の世界を目指した。
「……みずを、くだしゃい」
「こどもに、こどもにみずをわけてやってください」
その世界は燃えていた。黒い炎で満ちている。
俺は第一階層で手に入れた水をヒトに配った。分ける事が出来たのはやはり数人だけだった。
子供たちが水求め彷徨う世界を俺は無視して駆け抜ける。
一番下を目指した!
最深部には、
……何も残っていなかった。
いや! 何かが居る!
「げーむは、」
白い砂に埋もれたドット。そのドットの塊が、さらさらとその身を表していく。
「きけん、なんだって」
白く剥き出されたそれは、……人間の骨だった。
「……キミだね。俺を呼んでいたのは」
「おじちゃん、げーむはきけんだよ」
ドットから復元された骨は茶色い服の中から『ゲーム○ーイ』を取り出し、指の骨と共に取り落とした。
「そんな事は無いよ。キミ、俺と一緒にきてくれるかい?」
骨はカタカタと、再び『ゲーム○ーイ』を手にし、俺と『ゲーム○ーイ』を見比べる。
「ぼくなんかでいいの?」
「キミがイイ! 俺と一緒に行こう!」
手を伸ばす。俺はこの子を仲間に選んだ。
「こんな世界、糞くらえだ! 俺と一緒に『神様』を倒しに行こうよ!」
小さな、おそらく少年だった骨はボロボロになった琥珀色の服を正して、俺に少しだけ微笑んだ。
俺の後ろに服を纏った骸骨が並ぶ。
許すものか。絶対に、俺は絶対にこの世界をクリアする!
【がいこつせんし】が『まさし』の仲間になった。
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!
次回、おそらく最終回でまたお会いしましょう!