赤色
翌朝、司はいつも通り、遅い朝を迎えた。
朝起きたら誰もいないのが司の日常。
テーブルに置いてある加奈が用意した朝食を食べて、いつもと同じ職場に向かった。いつもより、司は機嫌が良い。
その頃、莉奈はいつも通り、朝、加奈に連れてこられた保育園で過ごしていた。 莉奈は母である加奈よりも司の方が大好きだった。
きょうも パパと おはなし できなかった
ママは こわいから いやだ
加奈もいつも通り、仕事に行った。
身体が重い…。
でも、仕事を休むわけには行かなかった。
仕事の途中で吐き気がしてトイレで吐いた。
腹部に違和感を感じてその場で下着を降ろすと、血液がついていた。
生理か…。
腹部の激痛で、立ち上がることができず、加奈はその場でしばらくうずくまった。
トイレから出ると、同僚から『顔色が悪いから早く帰れ』と言われ、仕事にならなかったので、念のため病院に行くことにした。
「流産でしたね…。」
医者からの診断だった。
「は…?」
身に覚えがなかったので、間抜けな声を出してしまった。
しかし、医者からの言葉はこれだけでは終わらなかった。
「平尾さんの場合、排卵を促進したり、妊娠を維持するホルモンが極端に低下していますね。このままの状態が続くならば、今後自然妊娠は厳しいです。長期にわたるストレスが原因ですね…」
その時は、医者の言葉を理解出来なかった。
ただ、妊娠と流産の事実を同時に知った衝撃の方が加奈には大きかった。
どうやって家に帰り、どうやって保育園から莉奈を迎えに行ったのかわからない。司は家にそのまま2日帰ってこなかったが、加奈は司に何も言わなかった。言えなかった。




