平尾司③
結局、妊娠を双方の両親に説明し、プロポーズの言葉もなく、そのままの流れで結婚式を挙げた。
司は薬剤師の国家試験を受けず、そのまま退学した。
全てがどうでもよくなった。
妊娠を伝えたときの俺の対応が悪かったせいで加奈が俺を見る目が冷たくなった。加奈を失うのが怖くて、俺は加奈と結婚して一緒にいようと決めた。
「どうして私と結婚したの?」
「加奈がかわいいからだよ」
お母さんに似てるから…。
子供が出来れば加奈は俺と離れることができないだろう。加奈は子供のためなら何でもする女だ。だから、俺が何をしてもきっと大丈夫…。
子供を妊娠した加奈が悪い。俺を1番に優先させない加奈が俺に隙を与えたんだ。俺が今まで何をしても許されてきたのは、やっぱり親父や加奈に問題があったからだ。俺は正しい。
子供を産んでから加奈は口煩くなった。
「何で生活費を渡してくれないの?」
加奈は俺の気分を悪くさせる天才だ。
「俺だって、金ないんだから仕方ないだろ」
加奈の方がパート代で稼いでいるのに、俺から金を取ろうなんて最悪な女になった。俺が茜に癒しを求めても、仕方ない。加奈が俺を責めるから、家に居場所がないんだ。
母親なら子供が何をしても許す、それと同じだ。加奈は俺が何をしても許すはずだ。
加奈が俺と付き合う前に他の男と寝たんだから、俺だって他の女を抱いてもいいはずだ。




