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平尾司②

あの子、少しだけ母さんに似てる…。

大学の食堂で初めて加奈を見たときの印象だった。


「良かったら、メアド交換しませんか?」

気付いたら、加奈に声を掛けていた。

加奈は警戒したような顔をして一歩、後ろに下がった。

ここで逃がすまいと強引にメールアドレスをルーズリーフに書いて、強引に渡した。

連絡は来ないかも知れないと思いつつ、その日の夜にメールが来た。


[村上加奈]

理工学部応用化学科2年の村上加奈です。

何で私に声を掛けたんですか?

___________________

[平尾司]

声を掛けたいと思ったから‼

これからヨロシク(^-^ゞ

____________________


司は少しずつ加奈に近付いていった。

大人しそうな加奈の人柄と幼く見える加奈の容姿から、加奈は男性経験がないだろうと司は思っていた。


加奈と司が初めて大学の外でデートしたある日のこと。司は何を話したら良いのかわからず、話題に困った。メールでは会話が出来ていたが、緊張して言葉が出なかった。

「私、友達の誕生日プレゼントを探してるから一緒に付き合ってくれない?」

加奈が司をリードして、ぐいぐいと引っ張って行ってくれたので助かった。

司は過去に5人ほど女の子と付き合っていたが、いつも相手から告白されて何も考えずに付き合っていたので、自分が好きな女の子とどんな話をしたらいいかわからなかった。

加奈は少し男慣れしている様子なのが微妙にショックだった。


この子は何人の男を知っているのだろう。

加奈に対する興味が強くなっていった。


二人はデートを重ねるうちに、親密になっていった。

「司君は好きな子いるの?」

「加奈と付き合いたいと思ってる」

「ありがとう。司君、大好き」

12月1日に付き合い始めた。


その次の年の2月、熊田茜が司のアルバイト先にやってきた。

「熊田です。ご指導よろしくお願いします」

純粋そうな茜に司は一目惚れした。しかし、司には加奈がいる。母に似た加奈を手放したくはなかったので、このときはまだ茜に手を出さなかった。


加奈は断れない性格ゆえに、色んな男と付き合ったと言うことが司は少しずつ見えてきた。自分も同じようなことをしてきたが、苛立ちともどかしさをすべて加奈にぶつけていた。


「お母さん…」

司は加奈を抱いたとき、間違えてそう呼んでしまったことがあった。

加奈はそのとき、表情を変えず司を抱き締めた。そんな加奈を司は愛しく思い、加奈を大切にしなければと思い始めた。

茜への思いを封印しよう…そう決めた。


大学4年生になった冬のことだった。

「妊娠したみたい」

加奈が陽性反応を示した妊娠検査判定薬を渡した。

このとき、司は激しく動揺した。

加奈は俺だけの加奈だろ?子供なんて出来たら…。

黙り込む司に加奈は言った。

「嫌なら、私一人で育てるから。父親になれないなら別れて」

加奈を失う?そんなの嫌だ。しかし、子供なんて邪魔だ。


そんな司の様子を察して加奈は、司をその場に残して帰宅した。



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