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守るべきもの
「泣くな‼鬱陶しい!!」
司がイヤホンを耳に入れてiPodを再生し始めた。
少し落ち着いてから加奈がつぶやいた。
「いつから…?」
「何が?」
「いつから、熊田茜さんのことが好きだったの?」
「あいつが店にバイトにはいったときから」
「それって今から何年前?」
「あいつが大学1年のときの冬のだったかな」
それは4年前だ。加奈と司が付き合い始めたのはその年の12月だった。
「何それ…。私と付き合い始めたのと同じ時期じゃない」
「あぁ、そうだ」
「給料やカードの明細を見せなかったのは、茜さんに使ってたのがバレるから?」
司がお金の出入りを隠していたのは、まだ家族を失いたくなかったからだと加奈は思いたかった。
「他人に、自分の給料なんて教えたくないからだ」
「じゃぁ、何で私と結婚したの?」
「わかんない」
冷水を浴びせられたような衝撃を受け、加奈は目が覚めた。
この人は適当な気持ちで私を抱いて、子供を作って結婚したんだ…。
私は家族3人を守りたいと考えていたけれど、この人にとって私は「家族」ではなかった。「他人」でしかなかったんだ…。
私が守りたかったものは、絵に描いた餅だった。私は理想を守ろうとしてただけだったんだ。
私が守るべきものは、この人じゃない。
莉奈だけだ…。
「もう、限界だわ。離婚しよ」
加奈ではなく、司がそう言った。




