守りたいもの
加奈は家族を守りたいと思ったからパートを増やして馬車馬のように働いた。
男が家事をして女が働く家庭を目指したら?
そんなアドバイスをしてくれた友人もいて、加奈はそれでもいいと思っていた。3人が幸せになれるならどんな形でも良かった。
このときの加奈にはもう、離婚や別居を決意する力は残っていなかった。
「もう、よくわからない…。」
加奈が力なく笑った。
そのとき、加奈の母は娘を引き留めることは出来なかった。
だが、事件は立て続けに起きた。
加奈は鬱状態になり、仕事はたびたび休み、部屋は掃除が行き届かず、かろうじて莉奈に食事をあげる程度しか動けなくなってしまった。
「あぁ、もう動けよ。何でボケッとしてるんだ‼お前が放心状態でこっちも気分が悪くなるだろーが‼」
司の怒鳴り声を目の前で聞いているはずなのに、遠くから聞こえてくるような感覚だった。
そして、司は続けて言った。
「俺、お前がそんなだから仕事を辞めて主夫になって莉奈を守るよ」
加奈が家事と育児放棄自分に暴力を奮うと、司は脚色した話を自分の職場と自分の両親に説明して、仕事を加奈に相談なく辞めたのだ。司いわく、妻である加奈が家事育児を放棄して暴力を奮うから子供を守るために、仕事を辞めて主夫になるということらしい。司は本気でそう思い込んでいた。
「そうなの…ふふっ」
加奈はもう、どうでも良かった。歌でも歌っていたい気分で、子供の頃に習っていたピアノの大好きだった曲を歌った。
「不愉快だからやめろ‼気持ち悪い」
司が怒鳴る。
「私はいい気分なのに…」
司が止めたにも関わらず加奈は狂ったように歌い続け、司が発狂した。
そのとき、加奈の携帯電話が鳴った。加奈が携帯電話を開くと、司の継母からのメールだった。
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[平尾 実里]
司から聞きました‼大丈夫ですか?ずっと心配していました‼
悩んでいることがあるなら、黙っていた方がこのままあなたが不利になります。私は司が言うことが事実とは思えないので、このまま我慢をしないで。
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心はとっくに壊れたはずなのに、涙が溢れた。




