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司の父

別居を始めてから2ヶ月が経った7月のある日、司の父から一斉送信で加奈、司にメールが届いた。

__________________

[平尾 淳]

いつまで、二人でいがみ合っているんだ。

お互いの両親を交えて、話し合いの場をつくろう。

御願いします。

__________________

[平尾 司]

俺は嫌だ。

絶対に話し合いなんか無理。

__________________



司はメールを送信して、話し合いから逃げた。

結局、再構築を望む加奈の両親と加奈、司の両親の5人でその日のうちに会うことになった。


行ってみれば、加奈に対する説教だった。


「世の中の夫婦はみんな血反吐を吐く思いで苦労をしているんだ。私達、夫婦もそうだ。苦労を乗り越えて今があるんだ。

お互いに歩み寄って欲しい。子供がいるなら尚更だ。お金がないなら援助する。完璧を求めず、少しずつお互いを見つめ直してみてはどうだろう?」

司の父がそう言った。


「お金を浪費して話し合いに応じてくれない人と一緒にはいられません。」


「その態度が良くないんだ。加奈さんのその態度で司は逃げたのだろう。司から聞いたが、子供の前で司を叩いたそうじゃないか。君は自分の事しか考えてないだろう。」


司を叩いたのは流産を告げたときのことだ。それについて、加奈は触れたくなかったので、その場で経緯を説明しなかった。


「浮気して浪費して、話し合いも拒否したご自分の息子よりも、我慢してきた嫁に責任を押し付けるつもりですか?」


「ほら、君は都合の悪いことは認めないよね?司はもう大人で、そんな彼を選んで結婚したのは君の責任だ…。自分にだって、悪い所があるからこうなったのだろう。莉奈はその被害者だ。」


「言ってる事が滅茶苦茶ですよ」


「自分の事を世界で1番可哀想だと思い込むのはやめなさい。母親なら子供のために、夫に歩み寄り教育するべきだ。お金ならいくらでもやる。辛い思いをしているのは君だけじゃない。みんな辛い思いを乗り越えて本当の夫婦になるんだから」



「まぁ、莉奈も司君を恋しがっているし一度戻ったらどうだ?」

加奈の父親が加奈を諭した。

莉奈を出されると、加奈は弱い。


話し合いは司が不在のまま、加奈と莉奈が自宅に戻り、司の父が金銭的援助することが決まってしまった。


司の父の言うことは全て正論だが、それは加奈が1番犠牲を強いられるものだ。

司の父は開業医で、お金はいくらでもある。だから、そのようなことが言えたのだろう。


誰も、加奈の話をまともに聞いてはくれなかった。

友人達も同じだった。

同世代で、結婚した友達がおらず、「生活費を渡さないから別居なんて加奈が我が儘だ」と言う友人もいた。

反論したり、愚痴を言うと「結婚したあなたの責任でしょ」と片付けられてしまうことが多かった。


司は自由でいても許されるのになんで、どうして私は酷いことされて我慢を強いられるんだろう。


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