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名探偵・藤崎誠シリーズ

マイナス24M 名探偵藤崎誠

作者: さきら天悟

「・・・日本人は変じゃないですか?」

立ち上がった女は壇に立つ男に言った。

鋭い目だった。

しかも、その目は青い。


男は顔をしかめ、視線を落とした。

手元の資料のページをめくる。

「確かに、少し短いですね」

と答え、また視線を女に合わせた。



「官房長官、少しというレベルではありません。

半分と言ってもいいレベルです」

女は右手に持ったペンを振りながら反論した。


「マイナス24Minute」

日本語を英語に同時通訳していたが、男は英語で答えた。

男は政府与党の太田衆議院議員で、官房長官を拝命していた。

定例の外国人記者会見、最後のフランス人女性記者の質問だった。


「日本人は美食と言われながら、食事にかける時間が短すぎます。

外国人がレストランに入って、

オーダーする時間が5分、食事を終える時間がおよそ58分ですが」

女性記者は鼻で息を吸った。

「日本人はオーダーの時間1分30秒、食事時間34分です。

東京のレストランはミシュランの星を世界でもっとも獲得し、

美味しいはずですが、変じゃないですか」


太田はうつむく。

そして、顔を上げ、女性記者に微笑んだ。

「それが日本のレストランの美味しさのヒミツです」


彼女はハッとした。

追い詰めたと思った男の表情は晴れやかだった。

満席の会場の他の記者らはザワついた。


「24分短いことで、客の回転率が上がります。

だから、お店は食材に原価をかけても、利益を確保できるのです」


会場では、感嘆のため息をつき、頷く人が目立った。


太田はニヤリとした。

いや、顔に出さず、心で。

藤崎が書いたシナリオ通りだった。

藤崎誠、自称名探偵で、太田の官僚時代の同期だった。

太田は、事前に渡された質問書の答えを藤崎に相談していた。



フランス人女性記者は、自国のレストランが一番美味しいことを主張したかったが、

思惑が外されてしまった。



「しかし、彼女の言う通りです」


太田は女性記者に微笑みかけた。


「日本人は変です。

レストランでは食事を味わうもだと思っています。

あなたが思っていることは、日本人が食事を楽しんでいないという指摘でしょう」



笑みを浮かべた女性記者は大きく頷いた。


「でも、これは日本人の性分なのでしばらく変わらないでしょう。

将来、フランスのように食事を楽しめるなるといいですね。

その時、原価が下がって美味しくなくなるかもしれまでんが。

それまで外国人の方は、最高の日本のレストランで

味わい、楽しんでください」


会場は拍手で埋め尽くされた。



太田は会場を後にし、車に乗り込んだ。

上着の内ポケットから、スマホを取り出した。


「藤崎、ありがとう。

お前のシナリオ通りだった。

特に、最後に相手の女性記者を立てるのは、いい演出だった」

データは『Cool Japan』からの引用です。

毎週見ています。

けっこうネタを見つけられます。

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